▼3DSのARゲームズでボードゲーム「パンデミック」を紹介する


 3DSが発売されてからこの方、一つは何かしら記事を書こうと思っていたんですが、犬がかわいすぎてすっかり忘れていたワケです。あと、ARゲームズも面白くて。
 AR(拡張現実)って言葉はあんまり馴染みのない単語ではありますけども、カメラを通して見える画像に色々と映像効果をつける、みたいな感じでしょうかね。実際にその場にはないものが映し出されるんです。なんかこの説明だと心霊写真みたいにも思えますが。


 で、このARを見て誰もが考えるのが「飛び出すカードゲームとか面白そう!」ってことなんですよね。以前PS3でそれを実現したアイオブジャッジメントってゲームがありましたけど、あれはカメラどうしてたんだろ……?
 さておいて、実際にAR機能をプラスしたカードゲームが出たら面白そうですが、その前に自分で試してみちゃえ、と思ったのが今回の発端です。そうすればARの利点と欠点もよくわかるかなと。
 で、今回題材として選んだのはボードゲーム、「パンデミック」です。アメリカのZ-Man Gamesという会社が発売したゲームで、様々なボードゲーム賞を受賞した超面白いボードゲームなんですが、ボードゲームには珍しい協力型のシステムが非常に特徴的です。コンピューターゲームの世界でも近年は協力型のマルチプレイが非常に流行っていますけども、ボードゲームでも同じようなトレンドが見えるってのは面白いところですね。


 パンデミックについて色々解説すると、もうそれだけで延々長くなってしまうので、代わりにウィキペディアの解説ページを紹介しておきます。


 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF


 さてまぁ、このパンデミック。説明書のコピーを借りるとこんな感じのゲームです。


 君たちは、4種類の命にかかわる病原体に立ち向かう、高度な技術を持った医療研究チームの一員だ。君たちのチームは、病原体の感染の拡大を食いとめ、治療薬を開発するために、世界を飛び回ることになる。病原体が世界全体を覆う前に、これを撲滅すべく、個々の能力を生かして、チーム内で力を合わせなければならない。病原体が拡散(アウトブレイク)し、疫病が加速度的に広がるまで残された時間はわずか。君たちは、時間内に治療法を発見できるだろうか? 人類の命運は君たちの手に委ねられている!


 3行で言うと。
 1.病原体の爆発的感染で人類は滅亡するんだよ!
 2.な、なんだってー! なにか手はないのかキバヤシ!?
 3.よし、薬を作ろう!
 ということです。


 ウィルスが世界中に広がる前に


 4つのワクチンを作って世界を救おう!


 なんかARカードを使ってみたくてやってみました、って感じですけど。わかりづらいだけですね、これ。3Dだともうちょっとわかりやすく見えるんですよ!(言い訳)
 で、そうなると、「どうやってワクチンを作るの?」という話に派生するワケですが、これは「同じ色のカードを5枚集める」ことでワクチンを作ることができます。



 ボード上の各都市は大雑把に4つの地域(色)に分かれてまして、カードの入手は「現地の感染情報を手に入れる」みたいな意味なんだと思います。で、複数の感染情報を集めることで有効なワクチンを作ることができると。演繹的な発想ですね。
 一方で世界を死滅させる病原体は手札の補充と同時にガンガン拡大していきます。なのでこのゲームは病原体と製薬のマッチレースの様相を呈するワケです。


 さてまぁ、概要はこの辺で留めて、細かい説明についてはプレイリポートに挟んでいきたいと思います。
 ということで、ここからは世界を救う4人の医療研究メンバーとその能力を紹介します。メンバーはそれぞれ異なる能力を有していて、MMOの役割分担のようにそれぞれの長所を活かして目標達成に貢献するワケですね。


 まずは一人目。ドクターマリオ。科学者です。能力は「同一の色のカード4枚で、治療薬を発見できる」というもの。治療薬の作成には同色のカードが5枚必要ですが、マリオだけはカード4枚で治療薬が作れるワケですね。サッカーで言えば、ラストパスを貰ってシュートを決めるストライカー的な存在です。


 そして二人目はたぬきち。作戦エキスパートです。能力は「1アクションを消費することで、手札を出さずに、自分が現在いる年に調査基地を1つ設置できる」というもの。
 アクション、手札、調査基地と、ゲームで重要な単語が幾つか出てきました。調査基地は治療薬を作るために必要な拠点であり、同時に移動の中枢となる重要な施設です。本来、調査基地の設置には手札が必要なのですが、作戦エキスパートだけは手札を消費することなく調査基地を設置することができるんですね。


 三人目はフォックス・マクラウド。通信指令員です。能力は「自分のターンに、仲間のプレイヤーのコマを自分のコマと同じ要領で移動する」「1アクションを消費して、いずれかのコマ1つを、プレイヤーコマがある別の場所へ移動する」というもの。
 通信指令員は移動のエキスパートで、パンデミックの中でも屈指の強カードです。行動の際には取り得る選択肢が非常に広いだけに仲間プレイヤーとの相談が不可欠ですね。


 最後はサムス・アラン。衛生兵、いわゆるメディックですね。能力は「感染者の治療時に、その都市にある病原体コマのうち1色すべてを取り除く」「自分がいる都市にある治療薬が発見されている病原体すべてを、アクションを消費せず即座に取り除く」の二つ。
 衛生兵は病原体を排除するプロです。基本的にこのゲームは病原体の感染速度が除去速度を上回るので、その役割は病原体の撲滅というよりは感染の遅滞と言った方が正しいのですが、上手く病原体の撲滅に成功すれば後の展開が非常にラクになります。と言っても、1つの病原体を撲滅したところで残り3つを抑え切れないようでは本末転倒なので、衛生兵はピンポイントに危険都市を浄化して回るのが主な役割になるでしょうか。


 ちなみにパンデミックに収録されている役割カードはもう1枚あるんですが、このゲームは2〜4人用のゲームなので今回は登場しません。残り1枚は研究員というカードの受け渡しに特化したメンバーで、これまた強力なカードです。


 さて、メンツの紹介が終わったところでそれぞれカードを2枚引きます。ここで同じ色のカードを引けるとのちのち展開がラクになるんですが……


 お、マリオがソウルと上海、2枚の赤カードを引いていますね。フォックスも1枚シドニーの赤カードを引いているので、カードの受け渡しでかなりスピーディに赤の治療薬の完成が目指せそうです。


 サムスはスペシャルイベントと書かれたカードを引いていますね。これは特別な能力を持ったカードで、他のカードのように治療薬の材料としては数えられないのですが、それぞれ強力な固有の能力を持っています。いつでも使えるのが特徴なので、ピンチに直面した時に使うのが望ましいでしょう。
 ちなみにこの「空輸」というカードはプレイヤーのコマを好きな場所に移動させることができます。単純な能力ではありますが、それだけにどんな局面でも無駄にならない使い勝手のいいカードですね。


 さて、初期の手札が決まったら次に山札を準備します。山札は難易度によって作り方がちょっと変わってきます。
 難易度? そう、このゲームはプレイヤーが任意に難易度を設定することができるんですね。コンピューターゲームで言うところのイージー、ノーマル、ハードのようなモード選択です。
 難易度の調節はものすごく簡単で、山札に仕込むエピデミックカードの枚数で決まります。エピデミックカードは一言で言えばヤバいイベントカードです。


 エピデミック? 聞きなれない単語が出てきましたが、これはマニュアルによれば「一定の地域にある種の感染症や伝染病が予想値を越えて発症する、またはこれまで流行がなかった地域で発症する予期せぬ状況のこと」です。似たような言葉でゲームのタイトルでもあるパンデミックとはどう違うかというと、パンデミックは「感染爆発、汎発性流行、ある種の感染症や伝染病が世界的に流行すること。エピデミックが同時期に世界の複数の地域で発生すること」とあります。
 以前流行った新型インフルエンザで言えば、メキシコで爆発的に流行したのがエピデミック、それが世界各国に感染拡大したのがパンデミックと表現できる……のかなと思います。辞書的な正しさではないかもしれませんが。
 で、話を難易度に戻しますと、山札に仕込むエピデミックカードの枚数で難易度は調整できます。4枚〜6枚の範囲で選択できて、エピデミックカードが多いほど高難度ということですね。
 今回は一番簡単な4枚のエピデミックカードでプレイします。ちなみにルールを全く知らないプレイヤーが4枚のカードでプレイした場合、勝率は50%ほどなんだそうです。


 さてまぁ、最初に触れたようにパンデミックは協力型のゲームなんですが、捉えようによっては病原体との対戦ゲームとも言えます。本来パンデミックにはTRPGGMのような存在はいないんですが、便宜上「敵」の存在が明確だと話を進めやすいので、ここではガノンドロフを病原体の親玉的存在として扱ってゲームを進めたいと思います。このリプレイでガノンドロフが担当する処理は通常はプレイヤーが行うものです。


 まずはエピデミックカードを4枚並べ、その上にプレイヤーカードを乗せていきます。いわゆる4枚切りってヤツですね。


 で、山札が4つできました。4つの山にはエピデミックカードがそれぞれ1枚含まれているワケですが、これを混ぜないようにしてそれぞれシャッフルします。こうすることで定期的にエピデミックが発生するように調整しているワケですね。これ、チートとかでなく、公式なルールです。エピデミックカードの出現が偏るとプレイにムラが出すぎてしまうんですね。


 最後に山札を一つに纏めて完成。山札は治療薬の材料となるプレイヤーカードと狂乱を巻き起こすエピデミックカードが混ざっているワケです。エピデミックカードがどのような被害をもたらすかは、まぁ、実際にプレイを進めながら紹介していきたいと思います。


 さて、次に世界に病原体をばらまきます。このゲームでは病原体はブロック状の4色のコマで表現されています。


 どこに病原体を配置するかはボード上部に積まれた感染カードで決めます。良くシャッフルした感染カードを上からめくると……


 ソウルが出ました。



 ドカーン! はい、ソウルは3つの病原体に冒されてしまいました。
 めくられた感染カードの場所に病原体を積んでいきます。最初のセットアップでは、まず3枚のカードをめくりそれぞれの都市に3つの病原体を置きます。


 次いで中東のテヘランとアフリカのハルツームのカードが出ました。


 それぞれ3つの病原体を置きます。病原体のタワーですね。


 次にもう一度3枚カードをめくります。ここで出た3つの都市には2つの病原体を置きます。


 さらにもう3枚。ここで出た都市には1つ病原体を置きます。


 最終的な配置はこんな感じになりました。ちょっと遠目で分かりにくいかもしれませんが。


 中東、アジアが特に病原体が集まっていてヤバい感じですね。


 ということでセットアップは終了。ここからプレイヤーの手番が始まります。プレイヤーの初期位置はアメリカのアトランタアトランタにはドラマで良く出てくるアメリカ疾病予防管理センターがあるんだそうです。


 さて、このゲーム、スタートプレイヤーの指定にはこう書かれています。「プレイヤーの中で、一番最近病気にかかった人が先手プレイヤーとなります」……なるほど、ボードゲームらしいユーモア精神にあふれたルールですが、この連中の中で最近病気にかかったのって一体誰よ!?
 ……まぁ、よくわからなかったので最近マリオルイージRPG3でメタコロ病の撲滅に一役買ったマリオから順番に進めていきたいと思います。
 さて、プレイヤーは自分の手番に4回アクションを行うことができます。アクションの主な内訳は、「各種移動」、「調査基地の設置」、「治療薬の発見」、「感染者の治療」、「知識の共有」の5種類がありますが、治療薬の材料となるカードを交換する「知識の共有」をするために「各種移動」を繰り返すのが基本になるでしょうか。



 ↑手元でアクションを確認できるカードもあります。
 ちなみにこのゲーム、カードを受け渡すには結構な縛りがあります。
 例えばワシントンのカードを誰かに渡したい場合、カードを渡す側と貰う側の両方がワシントンにいなければならないという…… 現地の生の情報は現地でしか渡せないということなんでしょうね。
 なので、プレイヤーはかなり頻繁に移動を繰り返すことになります。移動はパンデミックの基本にして奥義ですね。


 さて、初期の手札を思い出して貰うと、まずは赤の治療薬が一番簡単に作れそうです。フォックスの持つシドニーのカードをマリオに渡したいので、まずは貰う側のマリオはシドニーに移動することにします。





 アトランタからシカゴ、ロサンゼルスを経てシドニーへ。都市間の移動1回につき1アクションを消費します。都合3アクションでシドニーへの移動を完了しましたが、これ以上やることがないので4回目のアクションはパスで終了します。
 アクションを使い切ったら今度はプレイヤーカードを2枚補充します。マリオがめくったカードは……


 げ、まさかの初手エピデミック!? まぁ、確率としてあるにはあるんですが、これはのっけから厳しい展開です……


 ということで、エピデミックカードの効果を紹介します。エピデミックカードには3つの効果がありまして、それぞれ1.感染率の上昇、2.感染、3.度合いの増加となっています。ここからはこれらの効果を順々に処理していきたいと思います。


 まずは「感染率の上昇」。感染カードの下にある感染率表にあるマーカーを一つ右にずらします。感染率表の数字が何を意味しているかと言えば、これはターンごとにめくる感染カード(ガノンが今乗ってるヤツですね)の枚数を示します。初期は毎ターン2枚の感染カードをめくるのですが、感染率が3になると毎ターン3枚の感染カードをめくることになります。


 次に「感染」。感染カードの山札の一番下から一枚引いて、この都市に3つの病原体を置きます。山札の一番下からカードを引くということはこれまで全く病原体に冒されていなかった都市が突如として被害に遭うということで、これはエピデミックを上手く表現したシステムだなーと初めて見た時感心したものです。まぁ、感心して済むだけならいいんですが、これはこれで発症都市の予測が全くつかないので恐ろしいことこの上ありません。


 ということでエピデミックが発生したのはモスクワ!


 中央アジアに黒いタワーが乱立しています。これはヤバい……


 さて、最後に「度合いの増加」。字面だけ眺めてもイマイチ意味の通らない言葉なんですが、まぁ、手順を追えば意味はわかると思います。


 まず、今めくったモスクワのカードを感染カードの捨札置き場の上に置きます。


 で、捨札を全部纏めてシャッフルします。



 最後に捨札を山札の「上」に置きます。……つまり、一回感染した都市は漏れなくもう一回引きます(感染が広がる)よ、という意味なんですね。この仕様を考えたデザイナーはドSに違いないですよ!


 さて、これでエピデミックカードの効果は終わりです。悲惨なイベントでしたね……
 だけどガノンドロフのターンはまだまだ続くぜ! ここからは通常の進行として感染カードを2枚引きます。セットアップでは1〜3個の病原体を都市に置きましたが、通常の進行では都市に置く病原体は1個になります。
 運が悪いとエピデミックカードで引いたばかりのカードをさらに引くこともあります。この間、抵抗する術はほぼ皆無。恐ろしすぎる悪夢の連続……


 ところがどっこいガノンドロフが引いたのはサンフランシスコとヨハネスブルグ。幸いにしてどちらも病原体の少ない都市だったのでこれ以上の感染拡大は避けられました……


 すっかり忘れてましたが、補充の終わったマリオの手札はこんな状態です。エピデミックカードを引くと単純に手札が1枚しか補充されないのが痛いところでもありますね。


 エピデミックカードをまさかの初手に引いたので、いまいちエピデミックの怖さが伝わりにくかったかもしれません。エピデミックの恐ろしさは、もう一つの重要なルール、アウトブレイクを引き起こす可能性がムチャクチャ高まるせいなんですが、アウトブレイクについてはまた改めて説明したいと思います。
 まぁ、セットアップで引いた感染カードが早々に山札に戻った以上、アウトブレイクもすぐに説明することになりそうですが……