▼ブレイザードライブを遊んでいます

 ブレイザードライブが届きましたんで、早速遊んでいます。電源入れてのっけからムービーが始まったり、背景の説明が続いたりで、「あー、やっぱなんかアニメアニメしたゲームなんだなぁ」と、気勢を削がれていたんですが、いざゲーム部分が始まるとテンポは良好ですし、テキストも予想外に練られていて「あ、ただのアニメゲーじゃないぞ」という予感が窺えてきましたね。


 まぁ、チュートリアルがカットできずに冗長だったり、マップの作りが美観重視で機能性がイマイチだったりと、色々気になる部分もあります。一枚絵やらムービーやら物量は大量に用意されているのですが、見せ方のセンスが乏しくて、どうにも躍動感が感じられない点も首を捻ってしまいます。
 開発は、セガの「サクラ大戦」「戦場のヴァルキュリア」チームが担当しているとのことなんですが(ゲーム中にも「銭湯のヴァルキュリア」という小ネタがある)、そのせいか、全体的に据置機のノウハウをそのまま携帯機に流用した雰囲気で、携帯機に最適化された作りではないですね。どうも力押しというか、泥臭いです。スマートさがないというか。
 このゲームは、戦闘やイベント用に多量のグラフィックやムービーが用意されているんですが、その全てをDSの狭い画面になんとか押し込もうとしているようで、「素材を用意したからには全部使い切らなければ勿体ない!」という思想ありきでレイアウトされてるように見えるんですよね。で、それは据置機の発想だなと自分は思うんです。
 携帯機の発想としては、DSのあの小さな画面に映えるような形で素材をシェイプして、短時間で楽しめるように見せ方のテンポを速めて回転効率を上げる、もっと贅肉を削ぎ落とす考え方が真っ先に必要だと思うんです。暗転を繰り返して一枚絵をその都度表示するのではなく、一部分をシームレスにカットインさせて躍動感とテンポを確保するというか。
 なので、ぶっちゃけてしまうと、自分はこの方向性は腑に落ちません。日本製の軽自動車が好みなのに、外国製の大型車に乗っているような気分というか。どうも落ち着かないんですよね。


 ただ、実際にプレイを進めてみると、それほどテンポは悪くないんです。良好と呼ぶにはメニュー表示時の待ち時間がやや長く感じるので、卒がない、という表現をここではしましょうか。
 映像面に力を入れたゲームはとかく操作性が蔑ろにされがちです。そこが自分としては不健全に思えるので、つい口煩く言ってしまう癖があるんですが、このゲームに関しては映像面に力を注ぎながら、なおかつ快適性も十分に確保しています。そういう意味では、本作はハイレベルに諸要素を纏め上げた良質なゲームではあるんですね。
 いや、これは密かな驚きというか、これが開発の手腕なのかな、と思わされます。一歩間違えると本当に見た目だけのゲームになってしまいかねないところを、楽しくプレイさせてくれる土壌を備えている辺り、セガの底力を感じますね。
 慣れが必要な部分は多少ありますが、ゲームが面白いおかげで多少の欠点は気にならなくなります。減点法で計ると色々と粗の見えてくるゲームではありますが、加点法で計ると光る要素を幾つも備えたいいゲームですね。


 じゃあ、このゲームの面白い点は何かというと、それはTCGRPGの長所を巧みにミックスした点にあると自分は考えています。言わばTCG風戦闘のRPGというバランス比でしょうか。
 TCGRPG的な成長要素を盛り込んでいるおかげで、TCGにつきものの競技性、公平性をカジュアルに崩しているのが本作の特徴です。ザコ戦はサクサクと進めて爽快感がありますし、ボス戦は不利なシチュエーションを打開する緊張感に満ちています。


 そして、TCG風のRPGの楽しさの最たるものは、自分の知らないカードを相手が出してくる、その瞬間の驚きにあると自分は思っています。
 「えっ、そんなカードがあるの!?」と画面に見入ってしまうあの一瞬は、世界が広がるような興奮をゲームはプレイヤーに味わわせてくれます。TCGの面白さの源泉である収集・構築・対戦の諸要素を支えるのは、収録カードの魅力と幅広さです。
 そして、これはTCGの基本的なルール「相手が使えるカードは自分も使うことができる」という取り決めがあるからこそ生まれる感動です。他のゲームで例えて言えば、草むらから見たことのないポケモンが突如飛び出してきた時のあの興奮に似ていると言えば、わかって貰える方も多いでしょうかね。
 そして、このゲームはそんな「欲しくなるカード」の見せ方が実に巧みなんですね。基本的にこのゲームは、自キャラと仲間キャラ、敵キャラが2人の2vs2の対戦がメインなんですが、仲間が使うカードはどれも強力で自分のデッキに組み込みたくなりますし、敵は敵で見たことのないカードを惜しげもなくドンドン使ってくるんです。
 で、そういう強力なカードは、ゲームを進めないと手に入れられません。なので、躍起になってゲームを進めてしまうんです。誘導の仕方が実に自然で、ついつい先を見たくなる。新しいカードが欲しくて、手が休められなくなるんですね。


 戦闘自体も展開はスピーディで、同時に適度な逆転性も備えています。戦闘は大体4,5ターン程度で決着がつくシンプルさで、なおかつターンごとにインフレ的にダメージが増加していくので、起承転結がハッキリしています。この辺はTCGの魅力であるテンポのよさ、逆転性を上手く取り込んでいるなという印象があります。


 TCGのシステムとしては同じセガドラえもんDSもそうだったんですが、ポケモンカードの派生系的なシステムですね。
 ポケモンカードはバトルの駒となるモンスターカードを場に出して、エネルギーカードをくっつけて強化する → 技を繰り出す → 相手に勝つ、という流れなんですが、本作も似たような感じでモンスターカードの代わりに武器(アームズミスティッカー)があって、そこにエネルギーカード(ブーストミスティッカー)をくっつける → 攻撃する → 相手に勝つ、というのが基本的な流れになっています。
 このゲームはとかくオリジナルの固有名詞が多いので、ゲーム内用語の理解から入る必要があるのが敷居を感じる理由なのかな、とは思いますが、ルール自体は割とベーシックで、単語さえ理解できてしまえば、あとは迷わずにプレイすることができます。独自のルールもありますが、基本的には「武器を強化して相手に打ち勝つ」ゲームです。


 とまぁ、そんな感じで、TCG部分のゲームデザインは凄く魅力的なんですが、それを取り巻く環境はやや野暮ったさが残るという、ちょっとチグハグなゲームではありますね。まぁ、それがメディアミックスありきの企画として世に送り出されたゲームの宿命なのかもしれませんが。
 ゲーム自体は時間泥棒な性格が凄く強くて、カードを入れ替えて、敵と戦って回り方を試して、ついでに手に入れたお金でカードを買って、経験値でスキルを伸ばして、デッキを組みなおして、と遊んでいると、いつの間にか日付が変わってたりします。昨日届いてから、もうプレイ時間が10時間とか経過してるんですよね。色々おかしいです。
 「TOKYO XII区」に代表される各種表記は物凄いオサレ臭を発していて、一見すると全身がむず痒くなるような雰囲気なのかと思いきや、テキストはその辺をネタにして笑いを取ってる感じでむしろ好感が持てます。主人公がスライムみたいなマスコットキャラを引っ張りまくって「大胸筋が鍛えられた気がした!」とか、ハッチャけすぎですよ。
 あと、主人公の先輩、ヤイバさんが面白すぎます。見た目がクールな実力者っていう、いかにもクッサいキャラなんですが、いらん場所で無駄に英語使いすぎで吹きます。必殺ムービーの「アイキャンフラーイ! エンドオブザワールド!」とか、カッコよさげな単語を取りあえず並べてみました感が凄すぎますわ。
 あと、「今朝の朝食は?」「Bread…(パン)」とか地味に笑えてしまうのがなんとも。注訳が入ってるのは対象年齢的な配慮なのかもしれないんですが、いちいち注訳が必要なカッコつけに走るのがもう自分には堪りません。


 そんな感じで、最初は不安も色々とあったんですが、今は凄く気楽に楽しめているゲームです。確かに独特の雰囲気で人を選ぶゲームだとは思うんですが、TCGならではの魅力を備えつつ、数学的な固さはRPG要素で和らげるというバランスに、本作独自の魅力が詰まっていて面白いゲームですよ。