▼フロワロと世界観の齟齬についてちょっと考える

 うわー、朧村正売り切れてたー! マーベラスだからって油断してた……! ノーモア余らせてたマーベラスがっ!
 Amazonからも朧村正値引きしてますよメールが来てたので、割と動きは控えめなのかなぁと思ってたらどっこいでした。慌ててAmazon覗いたら見事に品切れでしたよと。マケプレ8800円とかなんですか。
 さて、買う前は「買っても色々あるから積んじゃうかなぁ」なんて思っていたんですが、買えないとわかると俄然遊びたくなるものです。冷静に考えてみると4月29日まで買うソフトがないことに気づいたりもしたので、まさに朧村正は絶好のタイミング! ……ではあったんですが、うーん、この出遅れは手痛い気がします。アンテナは常に高くしておかないとダメですね。

 ノーモアで思い出したんですけども、あのゲーム、ボス戦の前にヒロインから電話がかかってくるんですよね。で、リモコンのスピーカーから声が流れ出てくるんですけども、なかなか雰囲気があって面白かったんです。
 でも、そこで「ヘイ、こちらトラヴィス!」みたいな感じで主人公になりきってリモコンを耳に当てたりすると、声がガンガン響いて耳を痛めそうになるという。「シルヴィア声デカいよ!」みたいな。その辺、愉快な演出でした。
 はぁ、マベはWiiでいいゲームだしてるなぁ。朧村正遊びたいよ。


 滅亡寸前だからといって,おどろおどろしい感じにはしたくなかったんですよ。現実の地球もそうですが,結構危ないはずなのに,みんなのんきにしてるじゃないですか。そういう雰囲気も出していきたかったので,キャラクターは可愛くしました。

 はい。国の偉い人はヤバイヤバイと騒いでいるのですが,下々の人達は「まぁ,誰かが何とかしてくれるんじゃない?」みたいなことを言ってます。自分の生活に追われている人のほうが多い,というイメージですね。

 新納さんの7竜に関する世界観の話。この前4Gamerのインタビュー記事に掲載されたものなんですが、個人的に妙なひっかかりを覚えてずーっと違和感の正体について考えていました。
 確かに新納さんのいうことは一理あって、RPGでも現実でも「世界が滅亡するぞ!」なんて危機感は肌身に感じられないものだとは思います。魔王の侵略に脅えまくってるドラクエの住人とかあんまり想像できませんしね。現実で言えば、テポドンが日本に落下したら云々とか。
 ただ、7竜に関して言えば、人々が危機感なく日々を過ごしていることに個人的には物凄く違和感を覚えたんですよね。何でこの人たちはこんなに暢気なの、みたいな。それは個人的に世界観にインプレッションムービーのようなダークさを期待していたからなのかもしれませんが。
 で、この噛み合わなさ、矛盾してないんだけど整合性の取れないことへのモヤモヤについて色々と考えていたんですが、他のRPGと7竜で決定的に異なるのは、世界が危機的状況にあることが絵的にハッキリしているのが原因じゃないかな、と推論を得ました。まさに7竜の視覚的な特色であるフロワロの存在こそが、世界の危機を誰もが知る世界を構築しているんですね。ドラクエ3ゾーマに光を奪われたアレフガルドが恒常的な夜の世界になってしまったのと同じくらいわかりやすい演出です。
 で、例えばマザー。あれも地球侵略を狙う大ボスから地球を守るべく主人公達が頑張る物語です。地球に危機が迫っているのにマザー世界の住人は物凄いのどか…… のどかはちょっと違うかな、ウェットにならずドライなままで、日々の生活を満喫しています。
 でまぁ、それを見て、「緊張感がないなぁ、この人達は」とは思わないんですよ、自分は。何かが起きる予兆はあるにしても、巨大な悪意の存在に気づいている人は僅かなので、その反応は至極当然なんですね。それを知っているのは主人公だけで、だからこそ、プレイヤーは平穏な世界に対して愛おしさを覚えるんじゃないかなと自分は思うんです。
 全然7竜の話とは違いますけども、マザー3はそこのところ、最初から危機感ビシバシなところがシリーズの雰囲気としては異質ですよね。当時、マザー3は賛否が激しかったような記憶があるんですけども(リアルタイムでプレイしてないのでよくは知らない……)、ユーザと製作側の求める雰囲気に齟齬があって評価が分かれるのは、一つ類例なのかなと思ったりもしました。

 で、7竜に話を戻しまして、市政の人々は世界の変異について鈍感であると。それは確かに事実だと思います。ただ、その一方で、市政の人々は自分の損益には凄く敏感でもあると自分は思うんです。税負担がちょっと増えたとか、燃料代が値上がりしたとか、食品の偽装が見つかったとか、まぁ、これはどっちかというと日本人のメンタリティの特性じゃないかって話でもあんですけども、7竜世界の住人のメンタリティは、舞台独自の価値観に基づいているというよりは、まったく日本人のそれにしか見えないので、同軸線上で捉えてもなんら問題はないものと考えます。
 で、その上で世界の8割がフロワロに覆われるってとんでもないことですよ。消費税が10%上がるどころの話じゃないと。
 そんな事態を目の当たりにしていながら、まるで変化に乏しい住人の雰囲気が逆にリアリティを感じられないと自分は思いました。世界の異変の象徴であるフロワロはまさにそこかしこに咲き誇っているワケです。圧倒的な勢いで世界を席巻しつつあるらしいけど、目には見えない魔王の軍勢とは違って。
 なので、逆に言えば(もう時期的に言っても問題ないと思いますけども)、今までずっと平穏を保っていた世界が一瞬にしてフロワロに覆い尽くされるオープニングは、凄く心が震えました。なんか住人めっちゃ暢気だったけど、それは世界の変化を鮮烈に見せるためだったのか、と興奮しました。でも、実際はそうじゃなくて「あれ?」と首を傾げる結果になったんですけども。
 もし、グラフィックデザイン上、フロワロが世界に存在しなかったらあの空気でも問題なかったんじゃないかなとさえ自分は思います。徘徊するモンスターと戦うライトな空気のRPGなんて世の中にいくらでもありますしね。ただ、フロワロに覆われた美しくも妖しい世界を表現する、という点が企画の売りとしてまず存在したために、結果として7竜はフロワロに振り回された商品になってしまったのかなと、思ったりもします。
 世界をおぞましく綺麗にする、だけじゃダメなんですね。異形の世界に対する人々の心情の変化まで描けないと、結局それは用意されたグラフィックを無駄に垂れ流しているだけに過ぎないと。日本のゲームメーカーがHD機の描画力を持て余して従来の構造のゲームを作り続けているのと、ある意味では同軸の失敗を7竜はしているようにも思います。

 そういう話が好きなんです(笑)シナリオの人と話すときに,自分のシナリオ観を説明する際に良く使う例があるんですよ。石に剣が刺さっていて,その剣を抜いた人が魔王を倒せる,という設定の話です。ある村人がその剣を抜いて魔王を倒すんですよ。でも,それはたまたまその村人に剣を抜く“少しだけのやる気”があっただけ,ほかの村人は「俺はどうせ勇者じゃないから」「俺には無理」などと考えて,最初から抜こうとしなかっただけなんです。やってもいないのに「抜こうとしたが抜けなかった」とか。つまり僕の中では“やる人がやった”だけであって,勇者の血族や魔法なんて関係ないんですよ。「なんて夢のない人だ!」とか笑われたりします(笑)。

 これもまぁ、似たような話で、魔王を倒すのは勇者じゃなくても構わない、というのは凄く共感できるところなんですが、一方で納得が行かない部分も残るんです。モヤモヤしている部分は何かと言えば、やる気以上に住人にとっては自分の命や生活が重要なんじゃないかってことです。
 魔王と勇者という括り方をすると、現実の政治に対する無関心と同じで「きっと誰かがやってくれるよ」という話はなんか納得してしまう部分もあるんですが、現実で蜂に襲われたら棒切れでも何でも振り回すのと同じで、竜やらフロワロやらに生活が侵されているのに、何も手を打たず座して死を待つのみという姿勢は反応として不自然なんですよね。で、「無力だから仕方ない。抗っても無駄だ」みたいな絶望感を漂わせているならそれもわかるんですが、そうじゃなくてまさに「誰かがなんとかしてくれるだろう」みたいな楽観ぶりなので、本当にこの人達はどういう神経をしているんだろうか、と不思議に思えて仕方がないんですよね。
 ただ、新納さんのシナリオ観が世界樹なら破綻はないとは思うんですよね。迷宮が踏破されてもされなくても人々の生活には変化がないし、ラスボスが生きようが死ぬまいが、世界に危機が訪れるワケでもないと。
 世界樹の世界観では人々が安穏と暮らしているのは正しい反応なんです。その中で、少しばかりやる気になった無鉄砲な連中が誰も知らなかった迷宮の秘密を解き明かしてしまったという。これは構成として実に面白いと思います。
 逆に、例えば世界樹ウィザードリィのように悪の首魁によって世界に危機が迫っている、みたいなストーリーラインで始まっていたとしたら、もうちょっと空気を固くしないと不自然になったんだろうなと思います。世界樹は良くて7竜は悪かった、という短絡的な話ではなくて、世界観に合わせて雰囲気を構築することが大切だという話です。

 だからまぁ、新納さんが今後も自分のシナリオ観を大事にするのであれば、世界の破滅やら命運やらの大それた題材を採るのではなく、流れに呑まれて偶然その場所に立ってしまった的な、小さくて、でも実は大きかった事件を取り扱うのがいいんじゃないかなと思います。自分もそういうのは好きです。
 ただ、新納さんは「世界中が○○になる」というネタをまた使いたいとも言っています。これは自分も面白いなと思うんですけども、この手のネタはどうしても今そこにある危機が顕在化してしまうので、新納さんの求める世界観とは齟齬を生じさせるんじゃないかなぁと個人的には思います。
 なんでしょうね、PS0的な構造というか。ちょっとした事件を調べていたら実は…… 的な、関与した主人公及び周りの人間だけが世界の異変に慄くような、そんな規模のお話を取り扱うのがいいんじゃないかなと思います。まぁ、これ、ただの自分の好みを言ってるだけなんじゃあるまいかと思ったりもするんですが。
 あ、PSZじゃなくてPSOですよ。PSZはちょっとお話が英雄すぎた……気がします。



 以下、拍手コメントへの返信です。


>DS版RPGツクールと聞いて即座に「欲しい!発売されたら買ってしまう!」と思ってしまいました。〜 の方


 ツール系のソフトはDSと相性よさげなので、RPGツクールはまさにピッタリのソフトだと思うんですよね。エンブレ作ってくれないかなぁ。
 タッチペンでの素材作りは確かに現行ハードのどれよりも気軽に楽しめそうな部分ですよね。でも、自分は絵が描けないので専らデフォ素材を使うことになりそう…… 今作ってるものも、システムグラフィックとかどなたかにお願いしたい気分です。至極真面目に。


 個人的にはDS版RPGツクールの利点は、ユーザ層の厚さになるのではないかなと思います。遊ぶ側としても作る側としてもユーザの絶対数がそのまま盛り上がりに繋がるソフトなので、ハード選択としてはDSが面白いと思うんですよね。弱点はスペックかな。まぁ、ハード性能を考えるとPC最強になっちゃうんですが。
 あとはWi-Fiを通じた素材やソフトの共有もできたら魅力的……ですが、これはある意味、XBLAとツクールVXで既に完成している分野なのかも。あんまりその辺はよく知らないんですが。