▼帰りのバスでのできごと

 連休中は所用があって遠くに出かけていたんですが、行き帰りの道中にはポケモンをちょこちょこプレイしていました。で、帰りのバスで通信機能をオンにしておいたらすれ違い通信が成立したんですね。バスで。下道じゃなくて高速道路で。ビックリしましたねー。
 すれ違い通信は何件か成立したんですが、その中の一つに全く途切れない通信が一件。いつまでも「近くにいます」と表示されるんですね。どうも、車内にポケモンプレイヤーがいるっぽい…… 取り合えず見える範囲にそれっぽい人は見当たらず、なんだかソワソワしてしまいます。
 普段の通勤時やらのすれ違い通信は瞬間的に文字通りすれ違うだけでお互いの情報を交換して終わり、という形ですが、顔も知らないプレイヤー同士がこうして同じ時間、空間を共有する機会は自分にとっては珍しいことです。こんな機会はなかなかないぞ、ということで、以前から気になっていたハイリンクを試してみました。
 ハイリンクにアクセスしてから世界の壁へ。橋の上で立ち止まらないと世界が繋がらないんですね。何事も初めてづくしなので戸惑いまくりです。
 クエストを受領してからも「地図にタッチして冒険者の傍に飛ぶ」の意味がわからず無駄に森をさまよったり、そうこうしているうちに制限時間が迫ってきてアタフタしたり。
 幸いにして2回ほどクエストを達成することができたんですが、こうなると向こうからはどんな風に見えているのかなーとか気になったり。見ず知らずの他人からいきなり話しかけられたら嬉しさより怖さが先立つよなー、とも思うんですが。
 まぁ、通信を切られるようなこともなかったので、少なくとも迷惑には思われていないのかな、と思っているんですが。


 あと、ワイヤレスプレイではハイリンクを介した交流だけでなく、下画面に通信相手の行動ログが表示されるんですよね。「〇〇はピカチュウと遭遇した」とか「〇〇はピカチュウを捕まえた」とか。以前のバージョンの日記に書かれるような内容です。
 自分はその時、モンメンの孵化作業をしていたので、向こうさんにとってはこちらのログはなんともつまらない内容に見えただろうなぁと思うんですが、一方で単調な孵化作業に従事している身としては、相手の行動ログを読むのは暇潰しになって結構楽しいんですよね。なんというか自動投稿式のTwitterみたいな感じです。
 「○○はモグリューと遭遇した!」「○○は逃げ出した!」「○○はドテッコツと遭遇した!」「○○は逃げ出した!」というログが延々続くので、一体向こうは何をやっているんだろうか、と想像したり。想像するにしても現在位置も手持ちのポケモンもわからないので、行動から推測するしかないんですが。
 「ジュエル掘りの最中にバッタリモグリューに遭遇しているかなあ?」とか、「ドテッコツとも遭遇するのはスプレーが切れたタイミングなのかも?」とか、見えない相手のプレイを色々と想像するんですよね。「〇〇はそらをとぶを使った」……どこに行ったんだろう? 「○○は買い物をしている」 ……やっぱりスプレーが切れたのかな?
 で、そんなログがしばらく続いてからのこと。ふとしたキッカケで自分は「彼」の目的がわかったんですね。……「○○はクマシュンと遭遇した!」
 そうか、彼はネジ山でクマシュンを探していたんだ! あいつ、なかなかエンカウントしないもんなぁ……
 自分の話になるんですが、クマシュンは自分がネジ山で一番最初にエンカウントしたポケモンだったんですよね。山ほど湧いてくるポケモンの類だと思って倒してみたら以降全然出会わなくなって困ったんですけども。
 その後も探しても探しても見つからないので、結局クマシュンは通信交換でゲットしたんですが、そんな経緯もあって自分にとっては印象深いポケモンの一つです。「氷の天敵、鋼殺しの氷格闘来た!」と思ったら、普通に純粋氷で泣けたのもまた印象的でしたが……
 そんなワケで、下画面に「○○はクマシュンを捕まえた!」とログが表示された時には、思わず「おめでとう!」という気持ちになりました。残念ながらポケモンには「ありがとう」のメッセージを送る機能はあっても「おめでとう」のメッセージを送る機能はないので、自分の気持ちは彼には伝わらなかったと思いますが。


 ワイヤレスプレイでは行動のログが適宜表示されるものの、ログが全然残らない作りになっているので、凄く賑やかでもあり、刹那的でもあるんですよね。ヒウンタウンの雑踏のセリフワラワラってワイヤレスプレイの雰囲気そのままです。
 ログを蓄積させたり、読み返しが可能だったりすると、コミュニケーションって高度になる一方で重く深くなってしまうので、見も知らぬ他人同士がコミュニケーションを取るキッカケとしてはこの軽さが適していると思います。もっと密度の豊かなコミュニケーションを望む人は実際面と向かい合って喋れば済むワケですし。
 なんとなく偶然に居合わせた人達が、なんとなくお互いの行動を気にかけて、なんとなく心の中で応援するのって、なんかいいよね、と自分は感じたんですよね。直接口に出してしまうと、それは同時に束縛にもなって、どうしても重くなってしまいますし、口に出すのもそれはそれで勇気がいります。
 薄くても軽くても、人と人との繋がりがささやかな幸せに結びつく。そういう自己主張しすぎない優しい距離感がゲームの厚みを下支えしてくれるんだなぁと自分は感じたんですね。