▼まさかのレイトン教授VS逆転裁判

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 逆転裁判ファンとしては、単純になるほどくんと真宵ちゃんの動く姿が見れる。しかも生みの親のタクシュウさんの筆致で! ……というのが単純に一番嬉しい点なんですよね。
 レイトン教授ファンにとってはどうなんでしょう。レイトン教授自体はなんだかんだで毎年安定してリリースされるシリーズなので、逆裁ファンほどの飢餓感は薄いと思うんですが。
 いずれにせよ、自分にとっては思いも掛けないところから待ち侘びていたモノが飛び出してきたという、その喜びでテンションが上がりっぱなしです。もう一度、青いスーツを着たなるほど君が法廷に立つ姿を見ることができるなんて夢にも思わなかったですよ。
 逆転裁判4という商品は、踏み越えるか、目を背けるか、いずれかの努力をプレイヤーに求めた商品でもありました。とは言え、自分は嫌いにはなれないんですが。
 今回の商品は、その重苦しい呪縛を軽やかに飛び越え、逆転裁判4のことはひとまず置いて考えてみよう、ということをプレイヤーに提案する試みなのかな、という気がしました。そして、ある意味ではそれが自分も含めたファンが最も心待ちにしていた決断だったのかもしれません。


 どちらか一方が、もう片方のブランドの価値に縋ろうとした時、コラボレーションは目には見えない「いびつさ」を纏います。対等のコラボレーションが成立することは極めて稀で、大抵の場合は均衡を欠いたクジラとコバンザメの関係になりがちです。少し前のモンハンとメタルギアのコラボでもそんな声が囁かれました。
 一見すると、レイトン教授逆転裁判もブランド価値においては不均衡があります。レイトン教授が100万本近くを売り上げたのに対して、逆転裁判は一番売れた4でも50万本程度ですしね。
 しかしながら、両者の「共生」にいびつさが感じられないのは(何も逆転裁判ファンの欲目ではなく)、コアな人気を持つ逆転裁判と、カジュアルな人気を持つレイトン教授とが、互いの領域を侵犯することなくそれぞれの弱点を補完する一対のブランドに見えるからではないでしょうか。ビジュアル的な面では一見無個性なレイトン教授がアクの強い逆転裁判キャラを受け止める緩衝材になっていることも大きいような気もします。


 さて、コラボレーションが成立する第一の条件は、協力する両者が共に利益を得ること。一致団結して互いの財産を投じた未来に希望が持てなければ、そもそも協力は成立しません。
 そして、もう一つ大事なことは、両者が停滞に直面していること。仮に将来に展望が開けているのであれば、誰の手も借りずに一人大海原を渡り、利益を独占することができるからです。
 ならば、そう、優れたコラボレーションとは、まさに「機」によって成立するものです。栄と枯、盛と衰の狭間でもがく似た者同士が寄り集まった時、思いがけない化学変化が生まれます。
 自分は、そういう意味で、このコラボを主導した日野さんを「凄まじい」と感じます。これだけ時節を読み、実利に結びつける力に優れた人は業界でも稀ではないでしょうか。
 DS世代で勝ち取ったレイトン教授というブランドさえも、日野さんにとっては既に斜陽のブランド。レベルファイブの名を押し上げた殊勲のブランドにも関わらず、ここまで冷酷に現実的に商品価値を算出できる日野晃博という人は凄まじいリアリストです。


 仮に、逆転裁判4が出る前の時期ではこの話は通らなかったでしょう。逆転検事2という変化球で延命策を図り続けている今でこそ、初めてカプコン側にも耳を傾ける余地の生まれる提案です。
 対するレベルファイブも、仮にレイトン新3部作が映画の成功と共に前シリーズと同様の売れ行きを示していたら、この話を持ち出すことはなかったでしょう。何も手を打たなければレイトン教授もまた緩やかなブランドの縮小が続くだけです。
 停滞が、変化を欲したのです。それを明敏に見抜き、実現化まで持っていった日野さんの手腕にはやはり唸らされるものがあります。


 そうそう、この発表、海外でも狂喜の声で受け入れられているそうです。逆転裁判は日本と同様、向こうでも熱狂的なファンこそいても裾野は限られている「知る人ぞ知る」商品なんですが、レイトン教授の人気が実は凄いんですよね。
 海外のレイトン教授は第2作目「〜悪魔の箱」までの発売を任天堂が担当していたため、非常に顔が広いキャラクターでもあるんです。例えば第1作目の「〜不思議な町」は日本国内では90万本程度のセールスですが、海外では300万本も売り上げたメガヒットタイトルでもあります。
 レベルファイブのリリースの遅さ、タクシュウさんの筆の遅さを考えると、世に出るまではしばらく時間のかかるタイトルではありそうです。ただ、間違いなく待つ価値あるタイトルであることも確かです。
 個人的にレベルファイブの余計なまでのサービス精神は、ボリューム不足になりがちなADVにこそ注ぐべき、と思っているので、この組み合わせは噛み合っているように感じます。同様の理由でイシイジロウさんのタイムトラベラーズも期待していますよ。