ノベライズ

 そう言えば世界樹の迷宮の小説が今月末に刊行するそうで。CDドラマといい、小説といい、ちゃくちゃくとマルチメディア展開(死語かなぁ)を果たしてますね。
 それにしても「超絶人気の大ヒットRPG」はなんか突っ込みたくなるけど呆れてしまうフレーズですね。まぁ、出版をエンブレが独占してるとこうなるという見本なんですかね。


 http://www.enterbrain.co.jp/jp/p_catalog/book/2007/978-4-7577-3855-3.html


 粗筋としては樹海の探索でメディックを失ったパーティがバードの主人公を仲間に誘う、みたいな感じなんですが、そもそもバードにメディックの代わりをやらせようとか何を世界樹発売前のユーザみたいなことを言ってるのかこのパーティは、と少々不安な思いに駆られます。つか新しいメディックを捕まえれ。
 あ、でもそこはむしろ役立たずのバードが先輩冒険者から「お前がメディックの穴を埋めるなんて土台無理な話なんだよ、PEッ!」みたいな扱いを受けて、でも私負けない頑張るだって未来のスターを目指すんだもの! というハウス名作劇場的展開を見せる話なのかもしれません。これは燃える!
 それにしてもメディックが抜けてバードが入るってこのパーティはそもそもどんな編成なんでしょうか。公式推奨のパソレメアがクサいですが、それならメディックを抜いた場合、バードを入れるという選択肢はなるほどアリなような気もします。
 パソレメアからメディックを抜いて何を入れるか。これは考えてみるとなかなか面白い問題かもしれません。自分なら攻撃力は足りてるんだからカスメを入れるかなぁ。


 樹海の探索でメディックを失ったパーティがブシドーをパーティに誘う話はどうだろう、と思いつきましたが『出オチ』という単語が天井から聞こえてきたので控えます。




 とか長々と引っ張った割には自分は多分買わないと思います、小説。世界樹自体は凄く好きなんですが、自分はサントラもアンソロもCDドラマも買ってないのです、実は。他のゲームでも大概そんな感じで、そういう習慣があまりピンとこなかったりします。
 なのでどうも自分は周辺商売のカスタマーとしては一番適性のないタイプと言いますか。言い換えるとスーパーで特売品だけ買って帰るタイプ…… って、ああ、まさにその通りだなぁとなんかヘコみました。ナゼに。




 でもまぁ、ゲームのノベライズが嫌いとかではないんですよ。昔はよく読んでたような気はします。
 確かあれは自分が小学生の頃だったと思うんですが、ファイアーエムブレム外伝の小説版があったんですよ。

 まぁ、FEと言えばご存知SRPGの草分け的存在ですが、当時の自分にとってはFEの「経験値が限られている面構成のシナリオ」「武器の使用回数設定」「死んだキャラは復活しない」てなシステムが物凄く難しく思えてなかなかプレイするには至らなかったんですよ。レベルが上がっても強くならない場合があるってのも衝撃的でしたしね。
 友達のプレイを見てもマルス一人レベルが異常に高くて後はデフォみたいな。ハーディンの出てくる面でマルスジェイガンしか残ってないとかそんな感じで。このゲームはどう進めるのが最善手なのか全然わからなかったんですね。役を知らないで麻雀をやるようなもんです。
 当時はまだまだ「ゲームはクリアできなくて当然」な空気の漂う頃で、ゲームをクリアすること自体がある種のステイタスになる時代でございました。ロックマン2をクリアしたアツシ君(苗字を失念……)は英雄的存在でしたね。


 そんな折に現れたのがFE外伝で、こっちはFEの世界設定を踏襲しつつも上記のような制限を緩やかに変更することで、よりRPGに近い難易度設定のSRPGとして誕生したワケであります。
 で、自分の初FEとなったのがこのFE外伝なんですが、SRPGRPGのさらに間の子のこのゲームで「あ、SRPGって楽しいものなんだな」ということを知った自分は、それで初めてFE本編の敷居を跨ぐことができたのです。SRPGの入門用ゲームとして外伝は本当に素晴らしいゲームでした。


 ……えーと、話が大幅に逸れました。ともあれFE外伝には小説版があったんです。FEは後の聖戦辺りでどばーっと書籍化が展開して、今では多ジャンルで人気のあるシリーズではありますが、その萌芽となったのがこの外伝だったのかもしれません。


 で、その内容はゲームのシナリオをそのままなぞった形のスタンダートなものなんですが、当時物凄くビックリしたのが回復魔法の扱いでした。
 普通、回復魔法と言えば、ちゃららら〜ん、ホイミー! ピヨピヨ〜ン、ありがとー! みたいな感じじゃないですか。痛いの痛いの飛んでいけーみたいな。ファンタジーなんですし。
 でもこの話は確か、回復魔法は自然治癒能力を高めることで細胞分裂をメチャクチャ促進させて体組織を回復させる。あとついでにムチャクチャ痛い(成長痛?)って感じの設定で、ちゃららら〜ん、ライブー! ピヨピヨ〜ン、グギャァァァ! みたいな、回復はするんだけど一種の拷問みたいな雰囲気でムゴい話でした。本当は怖い回復魔法みたいな。
 まぁ、これも当時のゲームはまだまだ映像表現が記号的で解釈の自由度が高かったのと、文章表現に落とした際の理屈付けが必要だったのと2つの理由があったからなんでしょうね。
 あ、でもFE外伝のアニメーションは当時としては結構凄かったんですよ。魔剣士(魔戦士だったかな?)のキビキビしすぎる動きとか、ゴールドナイトの槍ブン回しとか、今では「世の中のRPG全部にアニメカット機能を登載させればいいのに……」と思ってる自分も、当時は傭兵カッケー、パラディンカッケーと目を輝かせていたものでした。


 あともう一つ衝撃的だったのが、ゲームとは異なる独自のキャラ設定の創出でした。FE外伝には前述の回復魔法の使い手(言わば拷問吏)でシルクという僧侶がいるんですが、後書きによるとどうも作者が物凄くこのキャラを気に入ってたみたいなんですね。
 まぁ、確かにシルクはゲーム中でも数少ない回復魔法の使い手ということで貴重な存在でもありますし、当時のFEは仲間のHPを回復させて経験値を獲得するというシステムがまだなかった時代なので、成長には大変手間がかかったユニットでもあったのです。なのでこの作者の気持ちは自分もわからなくもありません。
 ところが作者のシルクに捧げた情熱は空恐ろしいもので、本来脇キャラであるハズのシルクと同じく脇キャラの村人クリフの恋愛ドラマが始まったかと思えば、死亡フラグが立ったクリフは道中で戦死してシルクは悲劇のヒロインに昇格。しかもエンディングではクリフの綴りKLIHSはSHILKの逆読みで実は2人は兄妹だったのですよ禁断LOVE、という驚愕のオチまで用意して、本来の女主人公であるセリカを食ってしまうほどの大活躍をさせてしまったのです。


 ……いや、改めて考えてみると物凄い天衣無縫ぶりですね。勿論これは小説独自の設定なんですが、任天堂も良く許可を出したものだなぁと思ったりもします。今のFEでこんなことやったらどうな…… あ、聖戦の系譜はそんなゲームでしたか。


 ともかくこの妄想マスタリーは正直凄まじいものがあります。お気に入りのキャラを活躍させるために、ゲームの中から情報の断片を拾い集めて驚愕の設定を構築するという。ここまでやったらもう誰も文句は言えないだろう的な迫力を感じます。畏敬すら覚えますね。
 なんか10年以上前に読んだ話にも関わらず今でもネタを鮮明に思い出せる辺り、自分でも当時受けた衝撃の度合いを窺えます。同時期に読んだハズの大航海時代とか内容をさっぱり思い出せませんし。
 あと、ある種、自分の妄想書きはこの話と手法的には同じなので、妄想の方向を定める道標として自分は大きな影響を受けたのかもしれません。まぁ、今の今まで思い出すことはなかったんですけど。或いは余りのショックで記憶を封印していたのかもしれません。




 えーと、ここからどう纏めればいいのか収集がつかなくなってしまったのですが、まぁ、この話からわかるのはやっぱり妄想は愛から生まれるものってことですね。見習いたいものです。
 それで世界樹ノベライズも妄想に溢れているといいですねってことで。