▼シムシティ クリエイターレビュー

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 今回紹介するのは、EAのWiiソフト、シムシティ クリエイターです。シムシティは近年ではDSで2作が発売されて好評を博しましたが、今回はプラットフォームをWiiに移し変えて、久々の据え置き機でのシムシティとなります。


 http://simcity.jp/wii/pc/index.html


 そんなWiiシムシティの一番の見所は、Wiiリモコンポインティングを活用した独自の操作体系を備えている点でしょうか。元々はPCで展開され、マウスでの操作が基本なゲームなので、Wiiリモコンとの相性の良さは折り紙付きですね。
 ちなみにシムシティ クリエイターはPC版の3000をベースに開発されているそうです。自分はシムシティは2000までしか遊んだことがないので、詳しい差異はよくわからないのですが、他機種のシムシティと特に異なる点は、


 1 地形は平面。地勢を活かした街作りはできない。
 2 ヘリや飛行機で都市を上空から眺めることができる。歩き回ることはできません。


 辺りでしょうか。シムシティはベースとなるタイトルは同じでも、細かい仕様が異なる場合があるので、購入の際には御注意ください。



 さて、シムシティ クリエイターの長所と短所を書き出してみると、以下のようになります。

欠点

× 道路をまっすぐ引くのが難しく、ストレスを覚える。リモコンのUIは不満。
△ 旧作との差別化が曖昧。Wiiならではのコンセプトを追求して欲しかった。
△ ぼくとシムのまちとの連携が上手く行っていない印象を受ける。情報閲覧に敷居があるのはどうか。



◎ テンポは軽快。手触りは良好。ロード時間も短い。


 まずゲームを始めてみて、真っ先に感じるのは軽快な操作性です。Wiiリモコンの追随にポインタもしっかり応えてくれますし、メニューの表示などもテキパキしていてさわり心地は実にいいです。
 ハードがWiiに変わったと言っても、中身は基本的にはシムシティですから、やはり大切なのはゲームプレイを妨げない快適な操作性です。ゲームが単純であればあるほど操作性の快適さは重要性が高くなりますが、その点では本作は及第点を満たしていると言っていいでしょう。
 ただし、街作成時に一部インターフェースに難のある部分があります。それについては後の項目で。


 ロードは起動時及びセーブデータ関連での操作でやや長めに、季節や昼夜の境目で1,2秒入りますが、普通にプレイしている場合には気にならないレベルです。
 ただし、街の開発を手伝ってくれる補佐官を任命する場面では、「ぼくとシムのまち」のキャラクターを表示する必要があるせいか、かなり長めに待たされることになります。これは少々残念なところ。「ぼくとシムのまち」との連携については、別項目で詳説します。



◎ 資金のやりくりに頭を悩ませる意外と骨太なバランス。


 シムシティの資金調達と言えば、誰もが思いつくのが、「年末だけ税率20%に上げて儲けまくり」とか、「街をほったらかして資金増やしまくり」と言った、割と大雑把な都市運営のやり方ですね。
 あとは、維持費用バグとかスタジアム建てまくりとかもありました。なんか懐かしいですね。


 さて、昔の話は置いといて、このシムシティ クリエイターは、収支計算が毎月行われるので、年末だけ税率をアップして後は知らん顔なんて真似はできません。おまけに発電所などの高額な建築物は、耐用年数が定められているため、完全な放置プレイは自分の首を絞める結果になります。
 よって、税率の変更は常に懐具合と支持率を天秤に掛けて行われます。悩みます。でも、それが市長の責務なのです。
 基本的に手持ちの資金は難易度で大幅に変わるので、「初級」「中級」でのゲームプレイではさほど金策に苦慮することはないのですが、「上級」ゲームプレイだとかなり厳しい都市運営を迫られます。「初級」でのゲームプレイでも、黒字経営を続けるには慣れが必要です。
 市民が必要とする様々な施設、例えば警察や消防や学校などは、建設と同時に維持費が発生し、都市の財政を大きく圧迫します。今作ではこれら施設の維持費が、旧作と比べて非常に高額です。
 当然ながら市民はこちらの懐事情なんて忖度してくれませんから、やれ図書館が欲しいだの、やれ道路が混雑しているだの、やれ公園が欲しいだの、好き勝手を言ってくれます。が、なんでもかんでも市民の言うなりに施設を作っていたら市は赤字で破産します。「消防署が欲しいだと? 知らん、火を出すな!」みたいな。


 じゃあ実際に出火したらどうするのかと言うと。


 出火元近くの建物を破壊しまくって延焼を食い止めるのです。なんか江戸時代の発想ですね。


 と言う感じで、第2の夕張市とならないためにも、市街に本当に必要な施設とそうでない施設を市長自ら選り分け、健全な運営を心がける必要があります。市政は現実主義! 昨今の地方政治の事情を反映してか、この辺は妙にシビアなゲームです。
 ですが、自分としては、このゲームバランス、結構気に入っています。資金が潤沢ではないので、爆発的に街を拡大する楽しさはなかなか味わえないのですが、市長としての役割や責任を以前のゲームよりも親身に感じられるので、面白いバランスに仕上がっていると思います。


 ちなみに、財政とか運営とか面倒な話は抜きにしてドカドカ都市建設を進めたいという方には、資金無限大で遊べるチートモードをオススメします。理論上の人口の限界を試すも良し、地元の街並みを再現するも良し、自由な街づくりが楽しめます。



○ 初心者でも気軽に遊べるような配慮が充実。


 今作では、街の開発の手順を懇切丁寧に教えてくれるチュートリアルが実装されているほか、「ぼくとシムのまち」で活躍したキャラクターが街の開発を代行したり、アドバイスをくれたりするなどの要素が備わっていて、以前の作品よりも格段にゲームの概要が把握しやすくなっています。
 旧作の経験者であれば至極当然なこと。例えば「地区に建物を建てるには、電気を通して道路を隣接させないといけない」「水道を通さないと高層ビルが建設されない」と言ったシムシティの基本的なルールも、初心者にはイマイチ理解しづらいルールだとも思うのです。なので、実際に建設の流れを教えてくれるシステムの存在は初めてのシムプレイヤーにも心強いのではないかと思います。
 自分も含めた旧作経験者には特に必要ない部分ではあるのですが、こういった細かい配慮がなされている点に自分は好感を持ちました。自分も2000ではなかった新ルール、例えばゴミの処理の方法などの理解はチュートリアルが参考になりました。


 ちなみにチュートリアルには災害モードの使い方の説明もあります。が、台詞が恐ろしく物騒です。


 隕石が落下して。


 大爆発。ちなみに原子力発電所は爆発が連鎖します。


 超笑顔です。このアナーキーさはシムシティならでは。



× 道路をまっすぐ引くのが難しく、ストレスを覚える。リモコンのUIは不満。


 シムシティ クリエイターの特色は、Wiiリモコンの操作にあることは前述の通りですが、実際には使い勝手が余りよくない部分が幾つかあります。
 その最たるものが真っ直ぐな道路を引きづらい点です。本作のウリの一つに、従来のシムシティでは難しかったウネウネ曲がる道路を引ける点が挙げられます。この機能のおかげで、本作はよりリアルで見た目のいい都市設計を再現できるようになったのですが、一方で旧来のようなマス目に沿った直線道路を引こうとすると、これが実に難しかったりするのです。
 碁盤目状の都市を作ろうとする際に、この仕様は大きなストレスとなります。道路を引く際には注意深くリモコンを操作しなければならず、また画面も拡大して操作する必要があるので、長い直線道路を引くのは困難です。また、見た目上は真っ直ぐ道路を引けているハズが、なぜか隣のマス目にまで道路が侵食していることもあり、昔ながらの区画がキッチリ詰まった街を作る際には要らぬストレスが溜まります。
 一応2ボタンを押すことで、一回設置した道路や区画を取り消すことができるんですが、元々の誤動作を防ぐ作りが欲しかったなとは思います。


 また、本作ではWiiリモコンのポインタを使って、オブジェクトの選択と画面のスクロールを行うのですが、画面の端にある建物を選択しようとすると意図しないスクロールが働いてしまったり、リモコンを構えた手を下ろすと高速スクロールが始まってしまったり、やや不親切な仕様になっています。
 こういった誤動作を避けるための方法として、十字キーの上を押すとスクロールがロックされる仕様にはなっているんですが、個人的にはオブジェクトの選択とスクロールは切り離して欲しかったなぁと思っています。「ポケモン牧場」や「ブームブロックス」などの、Bボタンを押している時はスクロール、それ以外の時はスクロールしない、という操作体系がこの手のポインタを使うゲームとしては扱いやすい形なんじゃないかなと思います。



△ 旧作との差別化が曖昧。Wiiならではのコンセプトを追求して欲しかった。


 道路にも関連してきますが、操作体系が一新されたとは言え、シムシティ クリエイターの各種ルールは旧来のものとほぼ同様です。従って、建物が建てるためには、区画を道路の傍4マス以内に設置しなければなりません。自由に道路が引けるようになったとは言え、マス目のルールが未だにゲームの中には生きています。
 結果的に区画の配置は、道路に沿って行わなければなりませんし、シムシティの制約上、区画はある程度密集させた方が有利なので、小島のできやすい自由道路は、精密な都市作りには不向きと言えます。自由な都市作りをコンセプトに据えるのであれば、例えばマス目の撤廃だとか、もっと大胆な改革が必要だったのではないかと思います。
 現状のままでは、自由な道路が引けるという本作の特徴も、とってつけたような変化にしか思えません。この辺りは、Wiiならではの変化を加えようという意識ばかりが先行して、ゲームの楽しさへ寄与するアイディアとして昇華しきれていない部分が窺えて残念です。



△ ぼくとシムのまちとの連携が上手く行っていない印象を受ける。情報閲覧に敷居があるのはどうか。


 前の項目でも多少触れたのですが、本作では町のアドバイザーとして「ぼくとシムのまち」のキャラクターを雇うことができます。それらのキャラクターは皆ライトな雰囲気があって、ともすると地味になりがちなシムシティの空間に華やかさを与えてくれるのですが、一方でキャラクターの表示には結構なロード時間が必要で、これがゲームのテンポを損なっている一面があります。
 まぁ、アドバイザーは必ずしも雇用しなければならないというものではなく、どちらかと言えば、初心者救済のための役割を果たすものなので、人によっては全く無縁のままにゲームを進めることもあるのですが、もう少しテンポ良く織り込めれば気軽にアドバイザーと交流できたのになぁ、という気はします。
 また、各アドバイザーは市長の手助けをしてくれる代わりに、固定費としての月給が設定されています。とは言え前述の通り、都市経営は慢性的な財政難に苛まれているため、アドバイザーの給料は貧困な予算をジワジワと圧迫します。
 まぁ、それで月給に見合うだけの働きをしてくれるなら問題ないのですが、正直な話、アドバイザーの助言は役に立たないモノが多いです。まぁ、セリフはヘンテコで面白いので賑やかしにはなるんですが。
 ただ、以前の作品では、都市の状態を知るための情報って無料で入手できていたんです。シムシティのDrライトだとか(これは任天堂のゲームなので比較対象としては微妙ですけど)、シムシティ2000の新聞だとか。
 ゲームに慣れてしまえば、都市の問題点は何か、不足しているものは何か、という課題は自ずと見えてくるものです。従って、こうしたアドバイスを必要とするのは、ゲームに不慣れな初心者プレイヤーだと思うのですが、そうした初心者にとって情報が安価で気軽に手に入らないのは、些か不親切な作りではないかなと自分は思います。
 本作は前述したように財政に関してかなりタイトな作りで、それが本作ならではの手応えを生み出しているのですが、一方で情報にまでコストの概念を加えてしまうと、却って敷居が高くなりすぎてしまうのではないかなと思います。ぼくとシムのまちのキャラを活用するのは非常にいいアイディアだと思うのですが、「ぼくシムキャラに何をさせたいのか?」という点に関して、もう一歩踏み込みが必要だったのではないかなと思います。



 最後に。


 さて、ここまで色々と述べてきましたが、シムシティの素性の良さは折り紙付きですし、多少操作には難がありますが、テンポは良く非常に面白いゲームです。自分は半端な完璧主義が祟って、街を作っては壊し、作っては壊ししていますが、理想の都市を夢見て、それを手軽に実現できるのがこのシリーズの最大のポイントなのだと思います。
 今回は据え置き機ということで建物が全て3Dで表示されているため、ビル街が林立すると非常に迫力があって見栄えがしますし、夜景や雪景色も綺麗で、手塩にかけた街を眺める楽しさは際立っています。ヒーロービルディングという、特殊な建物を建築することで、街の外観を欧州風や江戸風に一気に作り変えてしまう、という新要素も、プレイヤーの好みがより色濃く街に反映されるので面白い試みですね。ちなみに自分は欧州風が好きです。画像ではお伝えすることができないんですが、音楽もクラシックな感じになって雰囲気がいいんですよ。


 ヒーロービルディングで欧州風の町並みに。画面上部のコロシアムがヒーロービルディングです。


 効果範囲外はこんな感じでビルビルしいです。



 http://www.minpos.com/index.php?pg=new_review&get=97692


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