▼セブンスドラゴンは海外で売れるのか?

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 今更の話ではあるんですが、金曜日の更新では、ナカザワフミア監督の手によるセブンスドラゴンのショートストーリーが公開されました。監督は多才だなぁ、凄いなぁ、と思いつつ、リンク先を見てみると、まさか7竜が世界的な人気を博した上に続編の発売まで決定していたなんて! さすがにこの展開は予想外だったのでビックリしました。
 まぁ、話の焦点はスコットランドで暮らす少女の日常にあって、7竜はその添え物ではあります。7竜をポケモンとでも読み替えると、情景に現実味を感じられるんですけど。
 ただ、ポケモンは日本だけでも500万本売れているソフトですからねー。対して7竜は目標15万本ということもあって、まぁ、規模的には比較になりませんよね。


 7竜は世界で売れるのか、という疑問については自分もちょっと考えたことがあります。結論としては、まぁ、売れないだろうなぁという場所に落ち着いたんですけども。
 有名な話ではありますが、日本のRPGの代表格であるドラゴンクエストは、世界じゃ全然人気がないんですよね。なぜ、世界でドラクエが受け入れられないのか、その理由については後で所見を述べたいと思いますが、7竜がRPGの王道を踏襲する作品である以上、世界の反応としてはドラクエに対するそれとさほど変わらないと思うんですね。


 日本のRPGはなぜ世界的には不人気なのか。その理由については、年初ですかね、ネット上で議論が盛り上がったことがありまして、自分がなるほどなぁと思ったのは、「日本人は抽象化されたゲームを好み、外国人は具象化されたゲームを好む」という論説でした。
 城のアイコンに自キャラを重ねるとマップが城内に切り替わるとか、平原を歩いてると突然モンスターが現れて戦闘画面に切り替わるとか、これはゲームだけに許されたお約束なんです。自分達は普段からゲームに親しんでいるので、こうしたお約束を当たり前のものとして受け取ってはいますが、これって実は傍目から見ると凄く違和感のある光景なんですね。
 当時のゲーム少年なら誰でも母親から「なんでこの人たちカルガモの親子みたいにゾロゾロ連れ立って歩いてるの?」とか「なんでこの人たち真っ直ぐにしか歩けないの?」とか「なんで町に10人しか人がいないの? 過疎村なの?」とか茶々を入れられて、「RPGってそういうものなんだよ!」なんて、反論にもならない反論をした記憶があると思いますが、外国人の日本式RPGの受け取り方って、これに凄く近い部分があるんですね。とにかく、これは変だ、これは現実的じゃない、とそういう否定から入るワケです。
 ドラクエウィザードリィウルティマ(と場合によってマイトアンドマジック)を始祖とするゲームだということは、もう言わずと知れた事実ではありますが、日本人がウィザードリィウルティマの複合モデルを楽しむ一方で、海外ではウィズは廃れて消えて、ウルティマはより自由度の高いゲームへと姿を変えていきました。
 ウィズもウルティマも時代の制約から仕方なくあの形に落ち着いただけで、外国人にとって理想的なゲームデザインは今も昔も具象化の追求にあるんですね。世界初のRPGであるローグなんて、最初からシームレスな戦闘システムを実装していたくらいです。
 なので、日本式のRPGってのは彼らの目からすると驚くほど古典的で、なおかつ不自然なゲームなんです。古典的だろうが不自然だろうが面白ければそれでいいじゃない、と反論したくなるのがゲーム好きの意見ではあるんですが、ゲームに浸る前にまず生理的な違和感に襲われると、もうそこでゲームを楽しむどころじゃなくなってしまうんですね。まぁ、これは日本人から見た洋ゲーのとっつき悪さに関しても同じようなことが言えます。
 日本のRPGのお約束は、言ってみれば、歌舞伎の黒子のようなものとも言えます。「舞台に黒尽くめの人がいるけど、あれはいないものとして扱ってね」と言われて、すぐに飲み込めるかどうかっていうね。まぁ、日本人はその手のお約束は「あ、そういうものなのか」と素直に受け入れてしまうんですけども。
 また、外国人が学問的なシミュレートを施した箱庭空間を好むのに対して、日本人が平面状のシンボル配置型のマップを好む差異は、油絵と水墨画の対比にも似ています。何も色付けされていない空間はただの手抜きなのか、それとも宇宙の表現なのか。素養によって見方は大きく異なります。


 まぁ、日本の抽象化を好む風潮は江戸時代から数えても何百年と続いてるので、そうした文化的土壌の上に成り立った日本式のRPGが海外でも同様に好評を得られるかと言えば、なかなか難しいと思うんですね。ただ、ポケモンが世界で大いに受け入れられていることを思えば、日本式のRPGが全く世界には受け入れられないということはなく、齟齬を埋める為の方程式の解は確実に存在すると自分は考えています。
 一番マズいのは海外市場に阿って日本式のRPGの長所まで殺してしまうことで、ゲーム市場のグローバル化が進みつつある中でも、まず地歩を固めることが肝心なんじゃないかなと自分は思います。その点、7竜は足場をコンクリートで塗り固めてますからね。世界市場において日本の市場規模が約2割と考えれば、商機を日本に絞ったこのゲームは今時贅沢なゲームではあるんですよ。


 さてまぁ、素人予想はこの辺にして、本題に戻りましょうか。ナカザワフミア監督の描く未来予想図は現実離れした奔放さを感じる一方で、商品の成功への期待を篭めた言葉にありがちな厚かましさがまるでなくて、「そうなったらいいねー」と夢を共有できるのが面白いところです。
 これがセガの偉い人の発言だったら完全に死亡フラグですし、宇田さんだったら「また宇田さんは……」と呆れるところです。小玉さんや新納さんは、まぁ、普通はそんなことは言い出さないでしょう。
 監督は自分の立ち位置を「新納さん達が水戸黄門御一行なら、僕は弥七みたいなポジションなのかも知れない。」と語っていましたが、ユーザとメーカーの間の絶妙な立ち位置にある人から発せられた言葉だからこそ味があるんですね。勿論、これまでの監督のコラムから窺える人柄も多分に影響していますが。
 正直な話、ムービー製作に携わった人が公式ページでコラムを書くこと事態、異例の形式だと自分は思うんですが、監督にとって今回の仕事は特別傾注するような動機があったのか、それとも監督にとってこのスタンスは仕事に対するごくごく当然の間合いの取り方なのか、その辺りがちょっと気にはなるんですよね。いずれにしても監督の作品に対する思い入れは、変な言い方をすれば、親近感や安心感を覚えるところで、まぁ、何かとゲームに関して懐疑的な見方をしてしまうスレたゲーム好きにとっては、監督の感性が酷く新鮮に感じられます。と、同時にそれは作品への期待感へも繋がっていますね。
 まぁ、早いもので7竜発売まであと31日、約一月になってしまいました。世界的にどうなるかはわかりませんが、さしあたっては国内でいい結果が出るといいなぁと思っています。



 以下、拍手コメントへの返信です。


>市場を編集しときまいた の方

 うわぁ、どうもありがとうございまいた! そう言えば紹介動画なのにリンクないとか片手落ちじゃないか、と今になって気づいたりもして。自分の作った動画が切欠で誰かがソフトを購入するのかも、なんて考えるとなんだか変に興奮します。ありがとうございました!
 「竜退治の騎士になる方法」は、これ読んでみたいですねー。ファンタジー系の資料か何かかと思ったら児童書なんですね。児童書いいなぁ。かぎばあさんとかまた読みたいよ。



 タグもそう言えば全然つけてなくて、ゲームタグをつけたかどうかも記憶がおぼろげなんですが、ご覧頂いた方に色々とタグを付けて頂いたようでありがたい限りです。そうかぁ、7竜はセガのゲームなんだよなぁ。
 自分としては印象的には全然セガと結びつかなくて困惑してもいます。セガのゲームかって言うとそうでもなくて、イメエポのゲームかって言うとそれも違って、自分の中では新納さんのゲームとしか言いようがないんですよね。まぁ、その辺はそのうち慣れるのかなと思いますが。


 あと、「癒し系のウダ」は吹きました。うまいなー、そう纏めるのかーっていう。でも、宇田さんは確かに癒し系ですよ! 自分の中ではね!