▼年に一度のアイレムデー

 私事もあったので後回しになってしまいましたが、昨日は年に一度のアイレムの日でした。自分は怪人エビルタイガーになって全国各地にダークネギやらダークシシャモやらを突き立てまくってきましたよ!
 というか、見た目に反して割と真っ当な作りのADV風コンテンツだったのが面白かったです。毎年思うんですけど、テキストのセンスが抜群にいいんですよね。ストーリーの展開も実にスピーディかつダイナミックで、無駄に作り込んでいるエンディングムービーまで一直線で楽しめました。以前のようなサイト上に隠された要素を探し回る、みたいな作りと違って手軽に纏められていたのが個人的にはありがたかったです。
 今回のネタは、今時の考え方ならFLASHで作るのが普通だと思うんですよね。そこをわざわざ手作業感の溢れるHTMLで組むのがいかにもアイレムらしくていいなーと思いました。そして何よりも狙い済ましたモデリングのチープさにマッチしているのが堪らんです。変な笑いが自然と漏れてきましたよ。
 まぁ、単純に予算配分の問題なのかもしれませんけども。今年はPS3HOMEでも何かやってたみたいですしね。


 ただ、インパクト的には特筆するものではなかったな、というのも実感としてありますね。これは単純にネタの恒例化や、アイレム以外にも多くのメーカーがネタを仕込むようになったことで、相対的にインパクトが薄れたせいもあるんでしょうけども。
 あと、地味に重要な変化として、企業とWEBとの関わりがここ2,3年で急激に変化してきたことも見逃せません。もっと端的に言えば、悪ノリする企業が増えた、という意味です。具体的に言えばスクエニとかセガとかアクワイヤとか…… まぁ、いちいち挙げようとすると枚挙に暇がないですね。
 情報発信の手段が多様化したことで、企業の目線だけではなく、ユーザーの目線での広報活動が増えてきたことが昨今の広報活動のトレンドとしてあるのではないかなと自分は思います。言わばエイプリルフールが常態化したような状況が続いているというか(実感の沸かない人は「連携失敗」でググってみるといいと思うよ!)。
 ユーザとの窓口になる公的なスペースで企業自らが音頭をとってドンチャン騒ぎに興じるスタイルは、今ではそれほど突飛な提案ではなくなってきているんですね。周囲が確固として企業の体面を固持する中で一人率先してエンターティメント性を発揮したからこそ、以前のアイレムはオンリーワンでいられたワケですが、今は年がら年中、新作情報の発信にユーザ目線のコンテンツが供給されるために、受け手の感覚も自ずと麻痺している状況ではあります。
 そうなると送り手側もインパクトを求めてさらなる悪ノリに走らざるを得ないワケですが、インパクト至上の拡大路線が破綻するのは、忘年会の隠し芸一つを例にとってみても明らかです。いつかどこかで賢い子供が王様の見えない服を指摘してしまうのです。
 そして、多分、その辺りに一番執留意しているのは先駆者であるアイレムだと自分は思うんですよね。以前、TGSなどで配られた小冊子にアイレムのエイプリルフールネタについての話が掲載されていたのですが、アイレム自身もその問題を理解しているようです。ちょっと本文を書き出してみます。

 抱える問題


 年々少しずつですが盛り上がりを見せております当社のエイプリルフールへの取り組みですが、現実には幾つか抱えている問題点があります。


 一つはコンテンツのボリュームアップにより製作コストが増加傾向にあることです。また、コンテンツのボリュームアップによってはサーバーや通信インフラに対しての投資も必要になります。その他にも、他の開発業務との兼ね合いが避けがたい問題として立ち塞がります。コンテンツの内容・質についても、いわゆる「ウソ」っぽくなくなってきたことなど問題に上がっています。これは、前述の「エンディングがあるコンテンツ」などとの表現からもわかるとおり、Webサイトを使ってウソ情報を発表するというよりも、一つのストーリーを見てもらうという形になっています。ボリュームがあり、見ている人がある程度見たい順番にコンテンツを閲覧できるWebサイトという性質だからこそ、「どこまで見れば終わり」なのかがわかり易い構成を意識しています。そのため「一瞬本当かと思った!」という驚きは薄く、「今年はこれできたか!」という感想になってしまっています。この点については社内でも賛否両論ありますので、今後の課題だと思っています。
 それでも、エイプリルフールは当社の姿勢『おもしろさ優先主義(=おもしろいと思ったら実行する)』を示す上では欠くことのできない活動です。たった一日のために数ヶ月準備を行う姿勢も含めて、「アイレムらしさ(おもしろいと思うことの実現に労を惜しまない)」の醸成に活用しています。社内においても、複数の部署にまたがって、一つのものを作り上げる数少ないプロジェクトでもありますので、これからも続けていきたいと考えています。


 (筆者:九条一馬 テレビゲームのちょっといいおはなし5より抜粋)

 とまぁ、こんな話を聞くと、今回の構成もなるほど納得がいきますね。アイレムのエイプリルフールの取り組みは、歴史も含めて物凄くおもしろい読み物なので、全文を紹介したい気分ですらあったりします。多分、SECAのサイトでそのうち公開されるとは思うんですけどね。