▼今更ウィッシュルーム感想

 2010年の自分の元旦はウィッシュルームと共に始まりましたが、同作はそのまま今年の初クリアゲームになりました。最初は地味な話だなぁと思っていたのが、経過を追うに従ってグイグイと惹き込まれ、終盤に差し掛かる頃にはのめり込みすぎて、いつの間にか2009年が終わってましたね。
 まぁ、全編に渡って静かに展開し、解決も明快ではなく、余韻の残る終わり方に味のあるシナリオなので、ミステリにエンターティメントを望む人にとってはやや淡白に思える物語ではあると思います。
 ただ、80年代アメリカのドライな空気感が心地よくて、自分の感性には凄くフィットしたゲームでした。雰囲気ゲーと言えば雰囲気ゲーなんですけどね。劇中では殺人事件は起きず、過去にあった事件の謎を紐解く形式で、分かり易いサスペンスがあるワケでもなく。ホテルダスクに偶然居合わせた人々の抱えた秘密がピースになって、過去の事件のパズルが組み上がる形というか、登場人物の意外な繋がりが徐々に明らかになっていくところに展開のあるゲームです。人間ドラマが主眼のミクロなお話ですね。
 テキストはよかったですね。読みやすくて雰囲気があって。でも、画面上の家具を調べたときのメッセージがシンプルすぎるのはちょっと寂しいかなという感じ。色々タッチして楽しいソフトならなおよかったですね。


 触ってみてまず驚いたのがキャラがよく動くこと。アクションが豊富でADVなのに見た目に華があるんですよ。
 クロッキー風の描画を重ねてキャラに動きを持たせるのも面白い工夫ですね。舞台の雰囲気にもマッチしていますし、軽快さがあります。
 ADVなのにとにかく動きまくりな登場人物に最初は目を奪われました。ADVの人物表示ってリアルもアニメも割と人を選ぶ傾向があるんですけど、この表現はうまーくバランスを取っているなぁと感じます。
 あと、表情が生きてて凄くいいんですよね。おっさんいいよおっさん。


 タッチペンを使ったギミックは初回は面白いですが、2回目以降は面倒な感が。凝った操作は面倒くささと表裏一体でもあって、浪費されやすいのが難しいところですね。
 縦持ちでタッチペンと十字キーを操作するのはやや不安定。DSiLLだと凄くプレイしづらいソフトなんじゃないかなと思います。
 自分は右手でDSを持って、タッチが必要な時は親指で画面をタッチしてました。ボタン類は画面下部に集中してるので大体はこれで行けます。


 中古で買ったので満足ではあるんですが、ADVなのでやはりボリュームが……というところはあるでしょうか。大きな分岐のある作りではないですし、お遊びの要素も少なめ。二週目で若干テキストが変わるようですが。


 元々ウィッシュルームは、人殺しのないミステリというコンセプトがあったらしいですが、この辺が妙に任天堂ぽいなぁと思ったりして。まぁ、やろうと思えば劇中で人死にがあってもいいんでしょうけど、極力避ける方向に努めると言うか。殺人以外の事件は面白くならないから取り扱わないと言い切っている逆転裁判とは真逆のスタンスで興味深いです。
 個人的には殺人事件を軸にしたミステリの方が緊張感があって好きなんですが、じんわりと郷愁を覚える人間ドラマも味があっていいですね。