▼世界樹3体験会 ディスカッションレポ

 世界樹3の先行体験会では試遊終了後に30分間のディスカッションの時間が設けられました。質問事項と回答について単純に箇条書きで書き出すこともできるんですけども、それだと細かいニュアンスが伝わりにくいですし、ちょっと味気ないかなとも思うので、現場の雰囲気の再現を重視して今回は長々と書き連ねてみました。
 基本的な形式としては手を上げた人が質問したことに開発者の方が答えるという形で、会場がコンパクトなためにマイクの往復も必要なく、結果的にスムーズな質疑応答が重ねられたと感じています。試遊の最中でのやりとりで参加者と開発者の方の距離感も縮まっていたので、質問しやすい環境だったのもよかったかなと。
 自分はゲームバランスに関わる部分を中心に色々と質問させて頂きましたが、全体的には世界樹2のピーキーな部分をしっかりと踏まえた上で改良を図っていることが伝わってきて、まずは安堵しています。今作に望むものの意識としてはユーザーとの乖離は少ないんじゃないでしょうかね。


 なお、この場には自分だけではなく、体験会の参加者が複数名同席していまして、質問は全て同一の発言者によるものではありません。質問者によって、進度や感想、ゲーム経験はまちまちですので、それぞれ発言内容に食い違いがある場合もあります。

 また、メーカーの方の発言も完全にはオフィシャルなものではありません。ひょっとしたら勘違いや言葉の綾、リップサービスが含まれていることもあるかも知れませんので、ご了承ください。



―― 発売延期の理由を教えてください。
広報 まぁ、ホームページに書かせて頂いた通りのことです。
―― 自社開発になったからですか?
小森 バグが直りきらなかったりとか、調整しきれなかったからと言う理由ではないです。延期をしたのは開発スタッフの事情ではなく、会社の方の事情で延期することになったよという話です。
―― 開発会社が変わったのはなぜですか?
小森 ご存じの方もいると思うんですけど、今まではランカースさんに開発をお願いしてました。(ランカーさんには)「真・女神転生 ストレンジジャーニー」の開発もお願いしてまして、世界樹1,2で非常に優秀なプログラマーの方がいたんですけども、そのままストレンジジャーニーの開発に移られてですね、3を開発するときに世界樹を作って下さる方に頼めなかったんですよ。で、どうしようとなった時に、ちょうどラインが終わって「次に何をしようか」っていうスタッフにやって貰うことになったんです。ストレンジジャーニーの終わりを待ってしまうと、開発を始めるのが非常に最近になってしまうので……というのが内製の理由です。


―― 前作も前前作も結構バグがあったと思うんですけども……
小森 非常に申し訳ないことだと思っています。常に作る度に開発費用だとかデバックの人数だとかは手厚くして、そういった製品が出ないように努力はさせて貰っています。すみません。
―― 今回は?
小森 大丈夫だと思います。


―― 今回、マルチプレイを導入した理由は?
小森 世界樹の売り上げ的にどこまでのことができるかはわからないんですが、テーブルトーク(TRPG)を凄く意識して作っているゲームでもあるんで、少しでもそういう印象が…… まぁ、弟と俺で二人でやるよとか、(大航海クエストを)やられた方はわかったと思うんですけど、AIと擬似的に人と遊んでいる気分で楽しんで貰えればいいなと思ったので、そう制作しました。


―― 今回、敢えて海を出した理由はなんですか?
小森 これは単純に新鮮さが欲しくてですねー。世界樹2の時、もう人によっては「要はダンジョンに潜るんでしょ?」という声もあって。「まぁ、3DダンジョンRPGなんだから当然です」とは言えるんですが、それを何度も繰り返すとゲームを遊ぶ前に「世界樹って要はやること一緒だよね」と思われるのが怖かったんです。なので、「今度はなんと海に出れるんだよ!」と言ってしまえば、何をするのかわからなくても「え、世界樹で海って何をするの?」と興味を惹いて貰えるかなと思ったのが理由です。実際、やられたらわかると思うんですけど、やってることとしてはダンジョン内とそんなに変わらず、イベントポイントを探してイベントを起こして帰ってくると言う流れになっています。


―― 海でしか手に入らないアイテムや装備はあるんでしょうか?
小森 正確に言いますと「アモロ杉」とかがそうなんですけど、海で手に入れるアイテムは(航海終了時に精算するので)海だけで完結しているんですよ。なので、それがダンジョン側に影響することはないんです。ただ、唯一の例外が大航海クエストで倒したボスのドロップアイテムで、例えば先程サエーナ鳥を倒して貰ったと思うんですけど、それを商店に売って頂くとあの段階ではちょっと強い武器が売りに出されるんですよ。なのでうまく大航海クエストをクリアしていくと、タイミングタイミングでいい武器を買える可能性が出てきます。ただ、それがなくてもゲーム(本編)には支障がないです。
―― 地下に潜るだけで完全に完結して、海は海で遊べます。連動はしている、と言う形ですか?
小森 はい、そうです。あと、大航海クエストのボスを倒すとリミットスキルが手に入るんですよ。なので、それだけはダンジョンに持っていって有利に進めることができます。


―― アナザーカラーは浮いたような色が多いような気がするんですが、最初から入れる予定だったんですか?
小森 仕様の話としては、最初の段階から入れたいとは自分は話していました。
―― 日向さんもそういう形で?
日向 まぁ、そうですね。
横路 職業にイメージがあっても、イメージが似てたら勿体無いのでちょっと色を変えられるって感じじゃないかな。


―― サブクラスの導入でスキル選択の幅が広がると思うんですが、一方でクラスが没個性化する恐れを抱いてもいます。そこはうまく差別化を図っているんでしょうか?
小森 世界樹を遊んで頂いているとわかるかと思うんですけども、実はスキルポイントがかなり縛りになっていますので、どんなにサブクラスを取ったところで自在にはスキルを取れないんですよ。なので、プレイヤーが例えば「ウォリアーにどうしても回復をさせたいからサブにモンクをつけてヒーリングを取らせた」というところまではできるんですけど、それでも「攻撃する戦士がヒーリングを覚えられたよ」くらいの展開になるんですよ。自在にスキルポイントを振れなくてですね、ホントに「この職業に追加でこれをできるようにした」くらいに落ち着くように設計はしてありますね。サブの方ばかりドンドンドンドン充実させると「お前、ウォリアーなのに攻撃できないよね」みたいなキャラになるので(笑) そういった意味での完全な没個性化はしないようにしてますよ。
―― 今回のLVの上限は? 99ですか?
小森 99です。
―― 前回と同じ感じで。
小森 そうです。
―― レベル補正とかってありますか?
小森 レベル補正は……2と同じやり方でやっているのでなかったハズなんですけども(後日確認して貰ったところ、レベル補正はないそうです)。
―― 戦闘の計算式とかは弄っていますか?
小森 完全に一新しちゃったんで。
―― ああ、じゃあ新鮮な感じで……
小森 ちょっと攻撃が当たりにくいと言うことは多分ないと思います(笑)
―― 武器の速度補正とかはあるんですか?
小森 あります。
―― あるんですか!
小森 つけ方は2とは違うんですが、ルールの概念としては2と同じです。
―― じゃあ、早い武器と遅い武器とがあると。
小森 はい。まぁ、ちょっと2が極端すぎるときもあったので、そこら辺はちょっと調整はしています。


―― TRPG世界樹の迷宮が出版されるとのことですが、アトラスはどの程度監修しているんでしょうか?
小森 ゲームのシステム部分は完全にお願いしていまして、世界観であったり、テキスト的、イラスト的な内容など世界樹らしいかどうかという意味での監修はさせて貰っています。
―― 結構ゲームとは違った感じになっているんですか?
小森 そうですね。テーブルトークの向こうのルールに従っていくつもシリーズを出されているので、どちらかと言うとそちらのシステムをメインにして世界樹ができるようになっているという形です。


―― サブクラスを取得した時の装備制限はどうなっているんですか?
小森 基本はメインの職業のルールに則ります。ただし、ゾディアックやバリスタ(などの盾を装備できないクラス)がファランクスの盾マスタリーをサブでつけます。そうすると盾が装備できるようになり、防御力が上げることができます。そして盾を装備すれば今度は盾を使うスキルも使えるようになります。ただ、やっぱりスキルポイントを消費するので(笑) ホントに結構自由になんでもできる風になっているんですが、実は結構決め打ちでどこを育ててどこを補うかを考えないと、漫然と使って、「あれ、強いのかな、サブクラス?」みたいな感じになっちゃう感じですね(笑)


―― 戦闘の全体的なバランスは世界樹1と世界樹2で防御的か攻撃的か違っていたと思うんですけど、今回はどちらかと言えば2っぽい感じですか?
小森 イメージで言うと2っぽいですね。ただ、個人的には2がかなり尖っていた気がしたので、ややそれを抑えるようにできないかっていう風にはお願いしましたけど。まぁ、結局最後は担当者の感性に任せているので(笑)
―― 今回は加藤さんじゃないですよね。違う方ですよね。
小森 そうですね。彼は(真・女神転生ストレンジ)ジャーニーの方に行ってましたので。
―― ちょっと違う雰囲気を楽しめるということですね。
小森 あ、世界樹らしさは意識して調整していますんで。はい。


―― 日向さんはキャラクターデザインという形で世界樹に関わっているんですけども、キャラクター造形だけでなくもっと深い関わりをしているのは、その辺りはやはり日向さんは特別な方と言うことなんでしょうか?
小森 (日向さんは)凄い3DダンジョンRPGが好きな方で、ウィザードリィが大好きだと公言している方なので(笑) フラットな意見と言うんですか、「こういうのって3Dダンジョンファンだったら喜ぶかな?」とか、意見は非常に参考にさせて頂いています。
―― パートナーと言う感じですね。
小森 そうですね(笑)
日向 ……これ、何の話なんですか?
―― (笑) 他のゲームではここまで深く関る方がいないような気がして……(笑)
日向 いると思うけどなぁ……
―― (笑)


―― 今回、世界樹3のキャラクターをデザインするにあたって気をつけた点や、前作からの変更点はありますか?
日向 そうですね。今作から入ってくる人にとっては今作がスタンダートな世界樹になるので、そこのところのバランスと言いますか、初めて世界樹3で世界樹に触る人にとって、こいつらが主人公で、もしかしたら分身かも知れないし、パートナーになるかもしれないということに気をつけました。まぁ、あとは1,2のキャラクターと3のキャラクターが並んで冒険しても全然違和感がないように、「俺のパーティはソードマンとウォリアーで、後ろにゾディアックがいてアルケミストがいて、で、レンジャーとか(ちょっと聞き取れず)が攻撃します」みたいなのを脳内で話を考えたりした時でも(絵的に)バランスよくなるように気をつけました。


―― 今回、ワイヤレス通信でのアイテム交換で戦力の底上げが簡単にできるようになりましたが、それは初心者にとって遊びやすくなるように、という意図からですか?
小森 元々考えたのは、単純に「どうしても手に入らないアイテムがあって、このゲーム解けねぇよ(コンプリートできない、の意?)」みたいなことになったりするゲームなので(笑) 本当にやりこんでいる人同士では手に入らないアイテムを交換できるようにしたいな、というのがありまして。で、初心者に強い武器をいきなり渡してゲームが簡単になるとかは、まぁ、ちょっと日本語的に正しいのかわからないですが、自己責任と言いますか、それで楽しい人はいいんじゃないかと。で、「いや、僕はそういう強いアイテムいきなり貰っても楽しくない」と思う人は当然断ってくださいというだけで、開発側から縛る必要はないかなと。受け取りたくない人はその辺りで自分でコールしてください。


―― アイテムの受け渡しに関しては制限があるわけではない?
小森 制限は基本的にないですね。キーアイテムだけ渡せないようになっています。


―― 一作目を遊んだときに回復役はメディックだったんですけども、三作目からモンクになったのはなにかあるんですか?(笑)
小森 なにかと言いますか(笑) まぁ、メディックがいて、2でメディックとドクトルっていうのがいて…… 世界樹ってちょっと建前上は世界観的に魔法使いがいないと言っちゃってるゲームなんですよ。まぁ、魔法じゃんとは思うんですけど(笑)
―― (笑)
小森 なので、(3作目の回復役は)何かな、と考えたときに、自分はそういうモンク的な気功術で回復するみたいなのが、メディックとも違うしドクトルとも違う雰囲気で出せるんじゃないかっていうので選んだと言うだけで。まぁ、日向氏に言ったら「え、モンクって格闘家ですよね?」って言われて(笑) それで二人のすれ違いを感じたという(笑)
―― (笑)
小森 一番最初はねー、あのー、人を一人は必ず殺していそうな青年のモンクが描かれていて……(笑)
日向 これしか出てこなかった……
―― (笑)
小森 「これはさすがにないでしょう」って言う話になって(笑)
―― それでモンクなんですけども、モンクの武器にナックルとかはあるんですか?
小森 ナックルはないです。本当に素手で拳マスタリーを上げていくことで威力が上昇する…… あとSTRですか。


―― 今回、すれ違い通信があるということですけど、ギルドカードの交換によるメリットはありますか?
小森 凄いぶっちゃけて言うとないです(笑) 世界樹1の時、すごい昔の話なんですけど、少人数で世界樹のファンの人たちが集まっているイベントみたいなのがあって、実は一回顔を出したことがあるんですよ。顔を出すと言うか、こっそり見に行ったことがあるんですけども(笑) 多人数でできるゲームじゃないのにお互いのパーティを見せ合ってですね、「こんなパーティでクリアしてるんだー」とかやってるのが印象的で。少しでもそういった機能があって今回のように一緒に遊んだり、お互いのギルドの情報を交換できるようなことがあれば、その特定数十人の方は喜んでくれるんじゃないかなと思ったので(笑) それで入れさせて貰った感じです。


―― 新しい航海の要素ですけども、遊ぶ前は「普通に森を歩くような形なのかな」だと思ったら実際はパズルゲームと言うかゲームブックと言うか、本編とは意外と違ってて新鮮で面白いなと感じました。
小森 ありがとうございます。まぁ、ダンジョンを潜るゲームなので、海でも完全に同じことをしちゃうと「いいよね、それダンジョンがあれば」と言う話になっちゃうので(笑) ちょっと違う方向で開発しました。


―― 他にアトラスさんの方から聞きたいこととかありますか?
小森 聞きたいような怖いような(笑)
日向 皆さんがどういうパーティ構成で潜り始めたのかお尋ねしてもよろしいでしょうか?
―― ウォリアー、パイレーツ、プリンセス、モンク、ゾディアックです。
―― 最初はプリンス、パイレーツ、ウォリアー、ゾディアック、バリスタです。途中で回復がいないことに気づいてパイレーツを外してモンクを入れました。
―― パイレーツ、モンク、ファーマー、バリスタ、ゾディアックです。なんでファーマーを入れたかというと誰も使わないと思ったから(笑)
―― ファランクス、ウォリアー、モンク、プリンセス、ゾディアックです。ウィザードリィの忍者のイメージがあってシノビを入れたかったんですがバランスを考えて。
―― バランスにはファーマーが必要でしょう。
―― (笑)
日向 ファーマーは役に立つと思うんですけどねぇ。
―― 日向さんは最初からファーマーを入れているんですか?
日向 僕、最初からファーマーですよ。採集全振りで前衛に立たせて。
―― 前衛ファーマーなんですか?(笑)
日向 ファーマー硬いんですよ。
―― えええええ!? そうなんですか!?
―― 僕は、ファランクス、モンク、シノビ、バリスタ、ゾディアックです。
―― プリンセス、ファランクス、パイレーツ、バリスタ、ウォリアーです。
―― ウォリアー、プリンセス、シノビ、モンク、ファーマーです。ファーマーを入れたのはレアアイテムが好きで最終的にレアアイテムが取れそうだと思ったからです。
―― プリンス、ウォリアー、ファランクス、モンク、バリスタです。
―― ファランクス、ウォリアー、モンク、プリンス、バリスタです。
小森 なんということでしょう。ビーストキングを使っている人が……(笑)
―― 僕はビーストキングとかパイレーツとか凄く使いたかったんですけども……(笑) まぁ、時間に制限があって……
小森 時間が限られていたので難しかったですね。


―― プレゼントキャンペーンで特別の冊子を作るとのことですが、あれは内容としては世界樹3を扱ったものなんですか? 1〜3でなく。
小森 はい、基本的に3の内容になる予定です。
―― 例えば応募がバーっと殺到したら印刷数を増やしたりとかはありますか?
小森 そうですね。会社の方が…… (広報の人を見て)
広報 会社の……(笑) えっと、臨機応変に(笑)
―― じゃあ、みんなで応募すれば増えるかも知れないと。……500冊ですか。
広報 最初は結構もっと少なかったんですけども(笑) みんなで話しあって結局500という数字になりました。
―― 頑張って応募します……!
小森 一個人としてはね、もう全員に配ればいいじゃんと思うんですけども(笑) なかなかそうもね……




 ディスカッションの内容については以上です。参加者のパーティ編成の下りにつきましては、長くなってしまうので多少割愛しましたが、全体的に拾えるところは拾ったつもりです。
 ディスカッションの常ではありますけども、終わってみれば色々と聞いてみればよかったなぁと思うこともあったりします。ちっちゃいことで言えば、「今回はレアドロップってありますか?(世界樹2は倒し方が重要だったからね)」とか。「鍛冶で付加した強化は後で初期化できますか?」とか。まぁ、その辺は公式サイトに質問メッセージでも送ってみればいいんですけど。
 もうひとつ反省をすれば、率直な「面白かった」という感想を言えてないなーということや、実利に傾きすぎて開発者の方のゲーム開発における心がけや意識が見えてくるような面白い質問を投げられなかったということで。今回は前回と違ってファンであるがゆえに逆に近視眼になりすぎていた感があるかなとも思います。ゲームを見て人を見ていなかったと言うか。でも、面白いのは人だと思うんです。ゲームを作るのは人ですから。
 まぁ、自分はただの1ファンですんで、素人にできることしかできないんですけども、もっと考える余地はあったのかなと。経験不足なのかなと思いますが、今後またこういう機会が貰えるものでもないので。次回頑張りますと言えるものでもなく、さてどう昇華したものかと頭を悩ませています。