世界樹の迷宮・その2(アリアドネの糸について)

 バード♂ エバンスの日記

 「ようやく集まりましたね、リーダー。」

 うず高く積まれた毛皮を前にして、疲労が滲んだ皆の顔が喜びに綻ぶ。
 金鹿の酒場のミストレスから受け取った依頼は決して楽なものではなかった。
 敵は強く、私たちは何度も危機に直面した。
 予期せぬ襲撃を受け、仲間が倒れることもあった。
 涙を呑んで町への撤退を決めたことはもはや数え切れない。
 しかし、そんな労苦の日々もこれでひとまず終了と言うワケだ。

 「ありがとう。みんなの協力のおかげだよ。」

 私は仲間に香気を湛えたカップを手渡し、それぞれに労いの言葉をかける。
 武器を取ることのできない私にできるのは、歌で皆を勇気付けること、そしておいしい紅茶を淹れることだけだ。
 戦い疲れた仲間たちにとって、それが僅かながらの癒しになることを祈って。



 束の間の休息を味わい、私達は荷物を纏める。

 「さぁ、早く報告に向かいましょう。」

 促された私は鞄を開けて、そしてようやく気づく。


 「……糸買うの忘れてた。」




 「アリアドネの糸」は複雑怪奇な迷宮から一瞬にして脱出できる便利なアイテムです。ドラクエで言うところのリレミトと同じ効果ですが、こと強敵揃い&複雑な迷宮なこのゲームではその有り難味は一入です。危険回避の意味でも冒険に出る際には必ず携帯しておきましょう。
 迷宮の底で余力を使い果たし、さて帰ろうと思ったときに気づくこの恐怖。大抵の場合、帰ろっかなーと思うタイミングは満身創痍なので、糸がない場合、これからダンジョンを泣きながら逃げまくる羽目になります。
 糸を買い忘れるパターンで多いのは「ロード後に糸買えばいいやー」とセーブ終了してロードした後にそのまま突っ込んじゃう場合。町は冒険の終点であると同時に次の冒険の始点でもあることを忘れてはいけません。
 忘れっぽい人は手書きマップのメモ機能を使うのも有効みたいですね。
 自分はそれすら面倒くさがってやってないのが救いがないと言うか。まぁ、気をつけましょうということで。

 バードは序盤ではスキルの効果を実感できずお荷物になる場合が多いみたいです。後半は尖ったスキルが役に立ちそうな気配があるので逆転の目があるやも。初期職業の中では使いこなすのが難しい中級者向け職業といった感じでしょうか。
 私は弓を持たせて簡易アーチャーとして使ってたのですが、深層での敵の強化ぶりに一時使用を断念。今は我がギルド、ティークラブの片隅で無聊を託つ日々を過ごしております。再登板の目は……ちょっと遠いかなぁ。