世界樹の迷宮・その6(博識について)

メディック♀ ルーノの日記

 アルケミストのウィバさんは錬金術を駆使して魔物たちを薙ぎ倒す、いわばパーティの切り札的存在です。
 ですが、そんなウィバさんがその知識と技術を遺憾なく発揮して見せるのは、戦闘よりむしろその後なのです。

 「うわ、この毒吹きアゲハ、ケシズミよりひでぇや。」
 「大丈夫だ、複眼が残ってる。コレクターに高く売れるよ。」

 「ウーズの中からなんか出てきた。なんだこれ?」
 「これはウーズが取り込んだ冒険者の鎧や盾の成れの果てだ。不純物はウーズが消化したから純度が高い。」

 「かみつき草の花びらなんかちぎってどうすんだ?」
 「水に漬けると色素が染み出して黄色の染料ができる。かみつき草の染物は色落ちしにくいから長持ちするんだ。」

 こんな調子でまさにその知識は博覧強記。
 迷宮を一回りする頃には魔物たちから入手した素材でバックパックは満杯になってしまいます。
 冒険者にとって魔物の残す素材は装備の材料となると同時に大事な収入源でもあります。
 私達パーティは戦闘だけでなく財政面でもウィバさんに助けられているのです。


 ……ですが、そんなウィバさん、実はちょっと困った性格の持ち主なのです。


 「あーあ、疲れたー! 今日はパーっと派手に飲んで明日の為に英気を養おうぜ!」
 「ダメだ。いくらかかると思ってるんだ。回復の泉の水をたらふく飲ませてやるから行くぞ。」

 「む、新しい鎧が売り出されたな。更に激しくなるであろう魔物たちの攻勢から身を守る為にも必要だと思うがどうか?」
 「鎧を買い換えたって焼け石に水だ。気合で耐えてくれ。」

 「いいリュートが売ってるんですよ。ぜひとも欲しいんですが……」
 「バードはそんなにTPいらない!」

 ……とまぁ、こんな感じでケチ……もとい倹約家のウィバさん。
 ウィバさんの一番の犠牲者は実はバードのリーダーで、武器はともかく防具は初めて冒険に出るときに買ったサンダルだけ。
 それも実はアリスのお下がりだったりします。
 ウィバさんのおかげで普通に冒険する分にはお金には不自由しない私達のパーティ。
 でもお金よりもっと大切なものってあるんじゃないでしょうか……?


 「リーダー、次はぜひとも「安らぎの子守歌」を覚えましょうよ! TPが回復できれば宿代要りませんよ!」
 「ああ、うん、そうね……」


 ……手遅れにならないうちにウィバさんがそれに気づいてくれることを私は願ってます。




 「博識」は、アイテム入手率を格段に上げるスキルで、アルケミストとメディックが習得することができます。
 この「博識」、あるとないとでは結構な差があって、「博識」LV10のアルケミストを休養させたあと、余りにもアイテムが出なくて愕然とした覚えがあります。敵3体倒してアイテムなしってナニ? みたいな。

 博識はボスクラスのモンスターの落とすレアアイテムの入手率にも影響しているようで、第1階層のボスと戦ったとき、私のアルケミストは毒スキルと博識専門だったのですが、一回でコロッとレアアイテムを入手する事ができ、それがレアだということさえ気づかなかったことがあります。
 あと第2階層のボスからレアアイテムを取ろうとしたとき、何度戦っても全然出てこないので、博識アルケミストを新たに作って投入したらあっさり一発で入手できたこともあります。探索時は正味の話、時間さえかければ素材は集まるので、ボス戦のような特殊なドロップを持つ相手と戦う際にこそ「博識」は価値を持つんじゃないかなと思います。

 特にこのゲームの場合、装備による戦力の増強が著しいので、一つ装備を更新するだけでググッと戦闘が楽になることがあります。そのためにも素材の入手を促進する「博識」の存在は、装備の整わない序盤では特に選択肢の一つとしてアリじゃないかなと。

 まぁ、メディックは基本的にスキルを振る箇所が多いので、基本的にその役目はアルケミストが担当することになるでしょうか。アルケミストならどれか属性一つに通じていれば、それだけでかなりの戦力となるので各職業の中でもスキルポイントには余裕のあるほうです。活躍の幅を広げる為にも一家に一台博識アルケミスト。どうでしょうか。