世界樹の迷宮・その15(B18F)

ダークハンター♂ ジャドの日記

「ご苦労様。依頼人も喜んでくれると思うわ。」
「へへへ、オレ達にかかればどんな依頼も朝飯前ってね。」

 大工ギルドから依頼された建材が詰まった麻袋をカウンターの上に置くと、女主人は口紐を解いて中身を確かめる。
 やがて確認が終わると女主人はオレ達にカウンターにつくように促した。
 オレ達は並んで革張りの丸椅子に腰掛け、それぞれ酒を注文する。

「ごめんなさいね、わざわざ子供のお使いのようなことを頼んで。貴方達にとってはこんな依頼は難なくこなせるんでしょうけど、他のみんなは違うみたいでね。揃ってみんな今日は具合が悪いって言い出す始末なのよ。」

 普段はあれだけ剛毅なのにね、と女主人は笑う。

「でも随分時間がかかったわね。貴方達なら一昼夜で帰ってくると思っていたわ。」
「それは流石に買い被り過ぎかな。」

 実際の話、今回の依頼は報酬に見合わないほど面倒なシロモノだったのだ。
 従ってカウンターに杯が並べられ、酒が入り始めると自然と自慢交じりの苦労話が始まった。

「流砂に足を取られてはまともに歩けん。靴にも砂が入って不愉快だったな。」
「階段を下りれば、今度は壁と言う壁を調べて隠し扉を見つけなきゃならなかったしな。」
ダマスカス鋼片が揃わなくて何度戦ったかわかりませんよね。」
「リーダーが他の素材と一緒にシリカ商店に売ってしまった時は驚くやら呆れるやら……」
「まぁ、おかげで新しい武器が買えたじゃないですか。」
「報酬で貰えるんだから意味ないっつーの!」

 酔いが混じると次第にテンションも高くなり、冒険の苦労もいつしか笑い話に変わっていく。
 四肢に澱んだ疲れが一気に吹き飛ぶ瞬間だ。
 オレ達は盛大に呑み、そして食べ、依頼の達成を大いに楽しんだ。
 しかし、いつもなら一緒に喜んでくれるハズの女主人の顔色がどうも冴えない。

「どうしたの、具合でも悪い?」
「いえ、そうじゃないんだけど。……あのね。」

 女主人はちらちらと視線を左右に散らし、何事かを逡巡しているようだったが、やがて意を決して口を開いた。

「あの、水を注すようで申し訳ないんだけど、依頼した素材って全部『採掘』で入手できたのよね……」

 女主人の言葉にカウンター周辺は水を打ったように静まり返る。
 ……つまり、あれか。オレ達の苦労は全くムダだったってことで……

「知ってると思ったから、その、ごめんね……」

 オレの手からスルリと杯が滑り落ち、床にぶつかるとカラカラと虚ろな響きを立てた……





 金鹿の酒場では様々な種類の依頼(クエスト)を受けることができるのですが、その中で比較的多いのは敵やアイテムポイントで得られる素材を指定された数だけ持ってくる、というものです。
 問題なのは対象の素材が敵が持っていて、かつ、アイテムポイントでも入手できる場合です。この手の入手手段が重複している素材は、基本的にアイテムポイントで入手することを想定しているため、敵から入手しようとすると結構な時間がかかります。しかもアイテムポイントとの兼ね合いから敵から素材を入手する確率は控えめになっているため、せっかく集めた素材を間違えてシリカ商店に売ってしまうと後悔でのた打ち回る羽目になります。
 こんな失敗をしないよう、冒険の際にはアイテムポイントで何が入手できるか、前以て調べておきたいですね。

 あと、依頼についてですが、基本的には受けられる依頼はそのタイミングで攻略していったほうがゲームを深く楽しめるように思います。後でレベルが高くなったところで依頼を潰していくのは、報酬がチャチいこともあって割と作業感がありますので。
 まぁ、依頼をこなしすぎると今度はレベルが高くなりすぎるという話も聞くので、その辺は臨機応変に。基本的に依頼でしか手に入らないアイテムとかはなさそうなので気楽にやればいいんじゃないかと思います。
 自分の場合、割と依頼は飛ばしてたので、第3層辺りの依頼は結構残ってます。とりあえず今やってるブシ+カスメがその辺に行ったらレベル上げも兼ねて依頼を攻略していこうかなぁと。まだまだ先は長いなぁ。