株トレーダー瞬

 発表を見たときに、このゲームで株式を勉強して投資でもやってみるかなー、なんて思ってたのが昨年のこと。気づいたら発売を待たずに株を始めてました。
 まぁ、自分の場合、株で生計を立てたい、とか、一財産築きたい、とか、そういう理由から株を始めたのではなく、ゲーム好きが高じて、言ってみればファンアイテムを買う気持ち、ゲーム会社への応援と感謝を表す手段として株を始めたという経緯があります。まぁ、儲かったら儲かったでさらにゲームを買えば自分も嬉しいし、会社も嬉しい。Win-Winの関係になれるワケです。
 てなワケで自分はトレーダーというよりはゲーマーです。株式については取引を行う上で必要な知識はありますけども、ファンダメンタルとかテクニカルとかに代表されるタームについては素人も同然です。なので、そういう見地から見たこのゲームの感想をちょこちょこと述べさせてもらいます。


 基本的にはこのゲームは色々な場所を歩き回るADVパートと、実際に株取引を行うトレードパートの2つのパートがあります。同じカプコン逆転裁判が一本道のレールに従ってADVパートと法廷パートが交互に出現するのと比べると、こちらはADVパートの一部でトレードパートをプレイするという感じで、ADVよりはもっとゲームっぽいというか、ADV移動式のトレードゲームとでも言いましょうか、あんまり物語を読む、という感じでのゲームではないです。かなりゲームゲームしています。


 まだゲームは前半もいいところなんですが、ADVパートについてはあんまりビビッと来るところがないですね。逆転裁判のようなテキストでグッと引き込む感じはあんまりないです。つまらないと言うわけではないんですが、至極平坦とでも言いましょうか。起承転結があんまりハッキリしていないでダラダラ進む感じです。言い回しもちょっと変な部分があります。まぁ、意味合いは通じるんですが。
 あとはメッセージ速度が変更できないので、トロトロと進むメッセージが地味に不親切。全体的にテキパキとしたリズムで会話が進むのではなく、どこかウェットでレスポンスが遅れる感じがあるので、あんまりいい操作感ではないですね。
 オープニングは上画面で一枚絵表示、下画面にテキスト表示というメチャクチャ見づらい配置で始まったのでギョッとしたんですが、ADV本編はごく普通の配置でホッとしました。専門用語が出てくるとタッチで詳細を教えてくれるのはいいアシストですね。


 と言う感じでADVパートは正直不親切なんですが、ゲームのキモとなるトレードパートはかなりいいです。
 ADVのダラダラ具合と比べると進行が異常にスピーディで、めまぐるしく状況が変わっていく中で、いかに安く株を買い、いかに高く株を売るか。たったそれだけのことなんですけど、一瞬一瞬の判断が非常に重要で、のめりこむ楽しさがあります。
 実際の取引だと新興銘柄のデイのスピード感に近いでしょうか。とにかく考える余裕がないので半ば反射的に売り買いを行う感じです。
 で、そうやってうまく押し目を捉えたと思った株が底抜けしていくときの絶望感とか、抵抗線にぶち当たったときに思わず力が入る感じとか、天井を突き破ってどこまでも高値を目指していくときの浮遊感とか、実際にお金をかけているワケではないんですけどそれに近い感覚があって、開発者が表現したかったであろう株の楽しさがうまく再現されています。
 まぁ、さすがにリアルのような胃が重くなる感じとか背筋がチリチリする感覚まではないんですが。


 あと、株を題材にしていると言っても内容的にはかなりゲーム風にアレンジされてる部分も多いので、リアルな株式の空気に触れたい、と思っている人には適切かなと言われると、ちょっと微妙なところではあります。
 ゲーム的な要素の最たるものにトレーディングアーツという必殺技のようなものがあるんですが、このトレーディングアーツの中には株の値動きを操作できるものもあるので、単純に株を買ってトレーディングアーツを発動させて売るだけで、小幅ではありますが利益が出るようになっています。リアルではそんなムシのいい話はないので、このゲームでバンバンお金が稼げたからといって現実で同じように上手く行くかと言えば、そう簡単でもないのが悲しいところですね。リアルで使ってみてー!


 ただ、トレーディングアーツのおかげで現実離れしたケレン味のある儲け方が出来るのが面白いところでもあって、強い抵抗線をブチ抜くようにトレーディングアーツを使うと株価が上離れして、どこまで行っても抵抗線がないもんだから青天井で突き進んでいくとか、とんでもない暴騰が始まって笑えます。
 実際の株取引って結構地味なんですよね。一日中値が全然動かないとかザラにありますし、そんなのがゲームとして適切かというとやっぱり微妙なので。これくらいスピーディで乱高下が激しいと見てるだけでも面白いです。


 株のゲームというと、色々な指標を参考にして次の値動きがどちらに向かうか、時間を掛けてじっくり判断するターン制SLGのような思考型ゲームをまず思い浮かべるんですが、どちらかと言えばこのゲームは瞬間瞬間に適切な操作を行うアクションゲームに近い雰囲気があります。これはゲームの購買層やハードの特性から言っても正解だと思います。昔あった株式必勝学のような思考型ゲームも面白いっちゃ面白いんですけど、DSでやるゲームではないような気もしますし。




 あと、扱える銘柄なんですけど、主人公は最初から全ての銘柄を取引できるワケではなくて、メイガラダスというガチャポンのようなカードダスのような機械で、銘柄を集める必要があります。各銘柄にはレアリティなんかもあったりして、この辺、ちょっとしたコレクション要素があったりするのがポイントです。
 なんか知ってる銘柄が出てくるとそれだけで嬉しいですし、「任天堂を扱いたい!」とか思わせる点でこのシステムは好みです。
 ただ、カードがダブると無価値ってのはちょっと悲しすぎる。下取りしてもらえるとか交換できるとかの要素が欲しかったなぁ。


 銘柄は実際に上場されてる銘柄をモデルにしているんですが、その中にはゲーム銘柄もあります。で、ギャンオンラインという多分ガンホーがモデルになっている銘柄があるんですが、「値動きの非常に軽い人気株だが……」となんか含みを持たせる説明があって、開発者は何かガンホーに言いたいことでもあるんだろうか、となんか穿った見方をしてしまいます。任天堂の説明とか凄い気になるわぁ。


 とまぁ、つらつらと述べましたが、ゲームとしては実に面白いです。専門知識もあればあったで理解の助けにはなるでしょうけど、割と直感的にゲームの内容は理解できますし、株を知らないからといってゲームの進行に不利に働くことはないかと思います。どっちかというと株の知識のあるなしは、スパロボで既知のロボットを使う面白さとか、野球ゲーで好きな選手を活躍させる面白さとか、そういう感じの雰囲気作りの部分が大きいので、株を知らない人ほど意外な面白さを発見できるのではと思います。


 株をやってる方では北浜町って名前を見ただけで笑える人に特にオススメします。怒りを覚える人には不向きかなと! あと、なんかそれっぽいキャラも見えたような……