レベル99でビックリ

 今までのあらすじ。なんと世界樹2は引退を繰り返すことでレベル99まで上げられるのだ!


 今度のシレンはレベル継続性ってことで騒いでたシレンファンを見て、大袈裟だなぁと思ってたけど、なんか人のことを笑えなくなった感じ。
 シレンなんかは「どうせクリア後にレベルリセットのダンジョンとかあるだろうからいいじゃん」とか自分は思うんだけど、そういう問題じゃなくて、そもそもレベル継続性は導入のメリットが薄いという話らしい。まぁ、もっと深い理由があるのかもしれないけど、外野からはあんまよくわからないです。
 逆に世界樹を知らない人にとっては、最高レベル70がレベル99になったところで、なんで驚く必要があるのかさっぱりわからないだろうなと思う。「適宜バランスを取ればいいじゃん」で確かに済んでしまう話ではあるから。


 なぜ自分が今回の仕様変更に対して最初に拒否感を抱いたかと言えば、それは世界樹の迷宮に根付く思想が曲げられてしまったと感じたからだと思う。
 世界樹の思想と言うのは、要するに「限られたりソースの使いどころを考えて効率性を追求しましょう」ってこと。これはダンジョンの歩き方もそうだし、キャラの成長方針にも言える。世界樹の迷宮は『節約』を美徳とするRPGだというメッセージを少なくとも自分は受け取っていたんだよね。
 それが方向転換したってのは、例えばガス代やら電気代やらを節約して浮いた額を主婦がダンナに自慢したら、「そんなに家計が苦しいのか。じゃあ、小遣いから生活費に1万円回すよ」みたいに返された感じというか(そんなダンナおらんわというツッコミはともかくとして)。いや、確かに使えるお金は増えるけど、そーゆーのとはなんか違うよな、みたいな。節約を努力していたのをまず褒めて欲しいよな、みたいな。そんな感じ。


 でも、その辺が世界樹がマゾいと言われる由縁なのかもしれないなぁ。難易度の高さにゾクゾクするんじゃなくて、切り詰めていくことにゾクゾクするというか。なんでもかんでもパワープレイでいけばいいっていうゲームとはその辺のアプローチが違ってたんじゃないかなと。


 で、自分は今回の仕様変更に「世界樹の『節約の美徳』が失われてしまう」と一瞬汗をかいたんだけど、冷静に考えてみれば、自分の考える世界樹らしさなんてのは勝手な思い込みに過ぎないんじゃないかと思ったりもした。
 というのは、前述のシレンとの状況比較を通して、「○○○らしい○○○」「○○○は○○○じゃなきゃならない」という言説は、ある意味では凄く原理主義的な響きを纏っているようで危険にも思えたから。


 守旧が常に成功を確約するものではないことは、例えば衰退していった幾つものブランドがその証明を果たしているけれど、まぁ、ユーザは続編に前作のテイストを色濃く望むのが常ではある。最近ではDQ9の大幅な仕様変更なんてのは、そんなユーザの声が最も強く出たパターンの一つだよね。
 一つの仕様を採択するということは、背反するもう一つの仕様を捨てることでもある。それを意識しなければならないと思う。もしかしたら捨てられたそっちの仕様を取り入れた方が、ゲームとしては面白くなっていた可能性は確かにあるワケだから。


 前作の開発状況を顧みれば、世界樹のレベル回りの仕様は最後まで固まらなかった部分だったと記憶している。新納さんは開発中のインタビューで「ステータスをカンストさせることができますよ」と言っていたし、説明書にある誤記「戦闘不能になったキャラクターはペナルティとして経験値が減少します」という記述はそうした名残の一つだ(さぁ、説明書の29ページを開きたまえ)。
 最終的に世界樹は『リソース管理』を主眼としたRPGを貫き通し、手を加えられる範囲でバランスを整えられた。だけどそれは付随する様々な制約の中で、止むなく切られた仕様が重なった結果なんだと思う。ベストではなくベター。背反する二つの仕様のうち、一つの可能性を選んだってこと。


 翻された言説にユーザは混乱して、自分を宥めるために「これが世界樹の文法なんだ」と強く自分を説得したりもした。結果的にそれがゲームの美点となったことで心理的な充足も得たけれど。


 だけど、今回の仕様変更はそうした心理的イニエーションをある種否定する選択なだけに、前作を肯定するユーザほど混乱を来たしているように思う。まぁ、自分もその一人ではある。


 でも忘れちゃいけないのは、世界樹はあくまで実験作だったということだ。最高のスタッフ、潤沢な予算、抜群の前評判で世に送り出された超大作ではなく、ぽっと出のディレクターと仲間達、切り詰められた予算、知名度ゼロの厳しい環境で、周囲の理解を得てようやくゴーサインの出たゲームだったんだから。
 だから前作の仕様は永遠不変の真理ではないし、世界樹が実験を続けるのは、言ってしまえば至極当然のことなんじゃないかと思う。その結果、ユーザに受け入れられる部分もあるだろうし、否定される部分もあるだろう。その選別を経て、世界樹は次に進もうとしている。今はまだそれが許される立場にあるんだから。
 小森さんは、世界樹2を「前作のブラッシュアップ版だ」と言っていた。それは前作の欠点を改良するだけではなく、様々な事情により捨てざるを得なかったもう一つの可能性を拾い上げるという意味でもあったんだと思う。
 自分達の目からすると突然噴火したように見える火山も、その内にはずっとマグマを溜め込んでいたのと同じなのかなと。ビックリしているのは外面を見てた人々だけなんだよね。


 でもまぁ、思い返してみるに、世界樹2の公開された仕様なんてのは、その殆どが前作と異なる方向性をとっていて、触感としては別物になってんじゃないかと思うほど。ある意味では、自分なんかは小森さんの最初の言葉に幻惑されてたのかもしれない。だから誰もレベル上限について質問しなかったんじゃないかな、とか。
 なのでレベル回りの仕様を色々仮定してみようかなとも思ったけど、やめた。まぁ、前作の延長線上で色々と想像はできるんだけど、どこまで行っても空想にしかならないし。
 そうだ、小森さんの好きなゲームとか、考えてみたらよく知らないぞ。予測がつかないのはそのせいでもあったりして。


 てなワケで今回の仕様変更に関して自分が驚いた理由について、自己分析的に書き留めてみた。まぁ、不安にならないと言えば嘘になるけど、どんなゲームも発売前は不安になるもので、その中でも一層不安を感じるのは大きな期待感の裏返しなのかなと。
 実を言えば、自分は前作での新納さんの挑戦状に「よっしゃぁ、やってやらぁ!」と意気込んだ人種なので、むしろこの仕様は肯定的に受け取っていいハズなんだけどね。それが今になって全く正反対のことを考えてるなんて、まぁ、なんと言うか調子がよすぎるというか。
 まぁ、色々と固定観念に縛られてしまうと視野も応じて狭くなってしまうということで。もっと気楽に発売を待ち望んだ方がいいのかもしれないなぁ。


 あと、ボリュームが前作と比較して同等以上ってのは、これは明らかな小森イズムを感じるね。新納さんは前作は長すぎたって言ってたし。まぁ、その辺もちょっと意識しとこうかな。



 https://www.atlusnet.jp/inquiry/input/meikyu


 質問受付フォーム復活。やっぱりあれじゃなかったのかい!
 それなのにメッセージ送った26人の勇気ある方々グッジョブ! やっぱり前回の内容で危機感を煽られたのだろうか。
 自分も負けずにチェイスメッセージしますよ。ちょうどいいタイミングなのでレベルのこととか聞けたらいいなぁ。