世界樹2のシナリオについて思ったこと
世界樹のシナリオについてちょっと思ったことをば。25Fクリア前提のネタバレです。
世界樹の迷宮と言うゲームは、そもそも自分の想像力を働かせて楽しむツールであると自分は考えています。それを開発側も推奨しています。
なので、シナリオの良し悪しを考える前に、まず何を尺度として用いればいいんだろうか、と言う疑問が浮かんでくるんですね。世界樹における「いいシナリオ」ってなんなんだろう、と。
でまぁ、世界樹がユーザに想像力で遊ぶことを勧めるゲームであるならば、世界樹にとっての「いいシナリオ」とは、ユーザの疑問を掻き立てるシナリオのことなんじゃないかなーと思いました。湧き出た謎に対して、ユーザが想像を及ぼす余地のあるシナリオというか。
まぁ、それは前作で言えば、「モリビトってなんなの?」とか「レンとツスクルはなぜヴィズルに協力してたの?」とか「ヴィズルは冒険者をどうしたかったの?」とか「世界樹の迷宮って結局なんなの?」とか、自然と湧き出てくるそうした疑問のことです。それに対する明確な回答はゲーム内には存在しませんし。
今作も例えば、世界樹が迷宮である理由や、さらに言えば世界樹がなぜ存在しているのか、といった根本的な謎もあるんですが、まぁ、発売前からの予想がそのままその通りっぽいので、ちょっと謎としての魅力が薄いんですよね。
かと言って、人物回りの謎に関してはどうかと言えばそれも同様で、オーバーロードは過去も理念もゲーム内で十分語られています。シヴェタの民は出生も明らかですし、行く末も平凡そうです。NPC冒険者は割と想像の余地が残っているのですが、ゲーム内での役割がそもそも限定的なので、結果的に想像を遊ばせる範囲も限定されてしまうような気がします。
そういう意味で、世界樹2に欠けていたものは、「明確な謎の提示」なのではないかと自分は思いました。
世界樹はシナリオの希薄なゲームではありますが、シナリオを否定したゲームではありません。ユーザの意欲を刺激するために明確な目的を与えることはゲームとして必要不可欠で、世界樹にとってのそれは「すべては 世界樹の先で 明らかになる」というCMのコピーどおり、世界樹に纏わる謎の解明にあったと自分は考えます。
「謎」の「提示」と「解決」こそが世界樹のシナリオの一番の骨格だと思うのです。
ただ、だからと言って前作が上善だったのかと言えば、それは違うんですけどね。前作は前作で、明確な謎の提示には成功したけれど、解決は放りっぱなしだったように思います。まぁ、それは開発者も自ら認めていますしね(笑)
今作は謎の解決には気が配られていますが、提示がイマイチ像を結んでいないと言うか。そもそも何を疑問に思えばいいんだろうかと右往左往している状態のように思えます。
回りの人たちとは、よく「前作の方が妄想できたよねー」なんてやりとりをするんですが、それも全ては謎が提示されてないので想像の余地がないというか。行間を読むにも文字が足りない、という状況だったりします。
もちろん、その辺りを力尽くでなんとかする方法もあるにはあるんですが、それはあんまりスマートじゃないなーと思ってもいます。自分的には、ゲーム内に鏤められた情報から仮定を組み立てるのが楽しいのであって、ゲーム外の情報を用いるのであれば、それは世界樹でなくても構わないってことになってしまうんですよね。
世界樹2のシナリオには「謎」がなかった。それが自分には一番惜しいと思える点でした。
巷でよく言われる、ラスボスに威厳がない、みたいな話は、あんまり気にならないんですよね。自分、ヘタレ好きなので。
前作のラスボスも正直あんまり魅力的じゃなかったと思うんですよ。もう、言ってることとやってることが無茶苦茶なので(笑)
でも、その無茶苦茶を何とか合理的に解釈しようとして、そこで初めてユーザは彼に魅力を見出したと思うんですね。ヴィズルさんはイジられキャラなんです。
それと同じで、上帝さんにしても、今はイマイチ空回りしている人ではあるんですが、前作と同様にユーザの妄想によって、その魅力は磨かれていくのだと思います。
と言うか、上帝さんが貶されれば貶されるほど、自分の中で上帝さんがいいキャラに見えてきます。「いや、そんなことはないよ。きっと何か事情があるんだよ」的なね。矛盾の中に妄想の下地が生まれてくるんです。だからもっと詰って! 罵って!
……ええと、まぁ、自分が言いたいのは、世界樹2のシナリオについて疑問なところや不満なところはドンドン声に出して欲しいってことなんですよね。不満ってのはそれだけだと非建設的なんですが、でもなぜそれが起きたのかまで考えを巡らせてみると、これはなかなか有意義な思考実験ができるんです。
で、結果的に疑問を合理的に解釈できて、それで世界の違う一面が見えてきたら凄く面白いじゃないですか。なので色々なところでボソッと不満が述べられているのを見ると、自分はしめしめと内心思いながら、心のネタ帳に書き留めたりするんです。頂いたコメントなんかも色々と参考にしてます。ごっつぁんです。
そういうのを、まぁ、最終的に自分的な解釈として纏められたら最高だなぁ、なんて、思ってますけど、まぁ、うん、その前にクリアしなきゃですわね……
とまぁ、そんな感じで、世界樹2のシナリオの魅力はまだまだ磨かれていないだけじゃないかなぁと自分は思うんですね。
25Fまでイマイチ感を覚えていたのは確かなんですが、26F以降の聖杯関連のイベントで、クアナーンさんと上帝さんの株がグッと上がりました。神を失ったシヴェタの民はこれからどうするのか、何を企図して上帝さんはクアナーンさんに後始末を頼んだのか、とか色々と妄想が広がりますね。
ゲームの構造的にも、前作の第6層が探索と戦闘を楽しむだけのエクストラダンジョンだったのに比べると、今回はテキストやイベントも織り込まれていて、オマケというよりは幾分か凝った作りになってますしね。なにより、ラスボスがいなくなった後の世界を描いているのが非常に新鮮でした。これって前作にはまったくなかった部分ですしね。
ひょっとしたら、その辺りの経緯とか、世界樹の生まれた理由とか、その辺の答えはゲーム内では語られないのかもしれません。まぁ、ゲームをクリアした方は、その辺ももう把握しているのでしょうが。
とは言え、素材は用意されました。どれだけ美味しい料理に仕上げるかは、もうこちらの問題なのかなと思うんですね。
答えが出ようが出まいが思考実験を繰り返す。それはもう、自分の中で決まったことなので、これからは自分なりの世界樹的世界観を表現していけたらなぁ、と今は思ってます。