社長が訊く バンブラDX編

 http://touch-ds.jp/mfs/st91/interview.html


 久しぶりなような気もする、社長が訊く。今回は6/26発売の大合奏バンドブラザーズDXについてのお話です。
 このゲームは、自分で「買おう!」と明確に思っていた商品なので、機能やら内容やらが明らかになると凄いワクワクするし、比例して発売日が待ち遠しくなるね。今回の話なんかは特に初出だと思われる機能の紹介も幾つかあったし、いやー、これは音ゲーの決定版かもしれないなぁという感がヒシヒシと沸いてきますね。
 てなワケで今日はこの記事で気になった箇所を抜き出しつつ、雑感を述べていこうかなと思います。今回も興味深い話で盛りだくさんですね。


>岩田 でも、そういったつくり方はダメだと言われるのが普通ですよね(笑)。
>クリエイティブな世界では、多数決型の合議制はうまく機能しないことが多く、
>1人のしっかりしたビジョンがあって、その旗振りの元で、スタッフが一丸となって、
>完成に向けて開発を進める方がうまくいくと言われているんですが、
>あえてその反対の道を歩んだのはどうしてなんですか?


 岩田社長と集団合議制というと、どうしてもこの話を思い出すなぁ。


 http://www.1101.com/nintendo/nin5/index.htm


 まぁ、今回の話は開発側の一般論を読者にわかりやすく説明しただけなんだとは思いますけどもね。ポケモンスナップの話は特殊例すぎるけれども、岩田社長の昔の関わりということで。


>岩田 ええ。それを見たときに「このゲームには何かがある」と感じていました。
>そのころ、ニンテンドーDSのソフト開発が始まろうとしていたんです。
>そして、ニンテンドーDSの「ワイヤレス通信」機能を使えば、
>1本のソフトがあればみんなで合奏できそうだ、ということがわかってきました。
>ゲームボーイアドバンスではどうしても解決できなかった問題が、
>ニンテンドーDSだと一気にクリアされたんですね。
>そこで、急遽、プロジェクトチームを再結成することにしたんです。


 自分は前作の大合奏バンドブラザーズが、DSのロンチタイトルってこともあって、どちらかと言えばこのゲームはDSの諸機能(マイクで鼻歌とかダウンロードプレイとか)を披露するために製作されたソフトだと思っていたんだけど、内実としてはまずコンセプトありきだったのね。
 よくまぁ、開発者は「ハードの技術向上でユーザは今までのハードでは実現不可能だったゲームを体験できるようになる!」的な謳い文句を口にするけども、本当の意味でハードの恩恵を受けたゲームってのは、こういうモノなんじゃないかな。描画速度が上がって絵がキレイになるとかじゃなくて、従来の音ゲーに多人数プレイと譜面のやり取りを可能にするための技術が登載されたことの方が、自分にはゲームの可能性が広がったように思えるんだよね。
 そういう意味ではバンブラは時代の落し子だったんだなぁと思ったりして。まぁ、プレイしている最中は全然そんなこと考えなかったんですけども(笑)


>北原 突然、開発室のドアがバーンと開いて・・・。
>
>北村 「岩田さんが乗り込んで来た!」って(笑)。
>しかも「作曲モードを入れてほしい」という話で・・・。


 社長、なにやってるんすかーっ!? 宮本さんの来襲を銀河皇帝に例える話は有名だけど、これも十分に怖いよ。
 バンブラをプレイしたことのない方に説明すると、作曲モードってのは、バンブラに3本の柱があるとすると、そのうちのデカい1本なんですよ。人によっては物凄いウェイトが高いというか、携帯機でDTMができるってことだけでバンブラ触ってる人もいるくらいです。
 勿論、携帯機ってことで色々と制約はあるんですけどもね。でもその辺は、今回のDXでは特に充実してるみたいですけどね。
 ともあれ、そんな大事な部分を開発期間が限られてる中に押し込もうとするんだから、まぁ、なんというか、言葉を失いますわね。


>北村 でも、岩田さんから
>「クラスのなかに作曲できる人が1人でもいれば、
>ほかのクラスメートはその曲をもらうだけでもうれしいはず」って
>説得されたんですよね。


 自分は北村さんと同じで楽譜読めない……というか、音階はわかるけど作曲なんか考えたこともない、くらいのアレです。貰ってきたエディット曲をちょこちょこっと弄るぐらいのことはしますが。
 それでも、岩田社長が言うように、他のユーザから頂いた曲を視聴したりプレイしたりってのは凄く楽しいんですよね。それがバンブラの独自性だとも思ってますし。
 なので、岩田社長がこの企画を捻じ込んだのは英断だったなぁと。捻じ込まなかったとしたら、バンブラは「よくできた音ゲー」で終わってしまったような気もするんですよね。自分は合奏する友人とかがいないので、特にそう思うのかもしれませんが。


>北村 そうこうしている間に、岩田さん自ら仕様書を書かれたんですよね。
>
>岩田 わたしが社長になってから、唯一書いた仕様書です。
>「ニンテンドーDSと同時発売できなかったら開発中止だ」と自ら宣言した以上、
>わたしにも大きな責任があると思ったので、つい手が出たんでしょうね。


 いや、これはビックリしました。まぁ、商品を納めるために納期を定めるってのは、社長として当然しなければならない責務ではあるんですが、自分にも責任を課して仕様書を書くってのは、フォローが行き届きすぎというか。
 一見突き放しているようでもあって、きちんと背中を支えてあげているってのは、理想ではあるけれども、それを実現できる人ってなかなかいないんじゃないかなぁと思いますよ。


>北村 実際に歌ったり、演奏している楽曲ではなく、
>ゲーム用の音源としてダウンロードしますので、
>作曲家と作詞家の方への著作権料のみが発生します。
>そこで、その著作権料100曲分までを
>ダウンロード実績に基づいて任天堂が支払うことにしました。
>このようにすることで、お客さんが自分の好きな曲を
>100曲まで手軽にダウンロードできる仕組みが実現できたんです。


 ダウンロード100曲制限は、まぁ、やっぱりJASRACとの取り決めでした。実際その辺りは下卑た推測ばかりしてたような気がするんですが、実際そうだったんだなぁと。
 まぁ、別にこの場でJASRACにどうこう言う腹はないです。そういう面倒くささを乗り越えてダウンロードを実装してくれた開発者の熱意に感謝したいなってのは凄くありますけどね。


>岩田 でも、ダウンロードしたあとで、
>「こんな曲はほしくなかったのに」ということはないのですか。
>
>北原 そこは「試聴」できるシステムを用意しましたので大丈夫です。
>まず自分の耳で聴いて、ほしいと思った楽曲だけを
>ダウンロードできるようになっています。
>しかも遊んでくれた人たちが「評価」できる仕組みがあって、
>どの曲がどのくらいの評価をされているのかを
>事前にチェックすることもできます。


 確かに視聴可能なら、あとはダウンロードするかしないかは自己判断ってことですよね。評価可能ってのもなんというか今っぽい作りと言えばそうで、今現在はどんな評価項目があるのかわからないですけど、Wi-Fiを使った取り組みとしてはかなり先鋭的なことをやっているようなイメージがありますね。
 しかしまぁ、これでいい曲ばっかりだったりすると、やっぱりそこで100曲制限ってのが圧し掛かってるような気もするんですが。そこは2本目を買えってことですか。


>久馬 バーバラというのは、あくまでゲーム上の話ですね(笑)。
>実際は、JASRACさんの楽曲を投稿する際には
>JASRAC登録番号を入力する必要があるのですが、
>その番号を間違えて入力したりとか、
>楽器数が少なかったり、曲が短かすぎたりすると、
>自動的にはじかれるような仕組みになっています。
>ですから、せっかく一生懸命に楽曲をつくっても
>はじかれてしまうこともありますので、
>投稿する前に、しっかり取扱説明書で
>「投稿の注意事項」を確認していただきたいですね。


 これはゲームとしてかなりカッチリしてるというか、気楽にアップロードはできない感じではありますね。まぁ、お金の問題なのでしょうがないって言えばそうなんでしょうけど。
 折角作ってもチェックに撥ねられるとサーバにアップロードされないし、そもそもJASRAC信託以外の楽曲は登録さえできないと。そうなるとゲームミュージック系はダメだなぁ。
 この辺はちょっと残念ではあるけども、まぁ、制度的にやむなしというところではあるね。


>久馬 あと、ダウンロードも自宅や店頭でできるようになっています。
>しかも、どの曲が何回ダウンロードされているか、といった情報も
>わかるようになっています。


 おお、家でゆっくりダウンロードできるのかー。さすがに店頭で、DSの画面とにらみ合いしながらどれを落とすか頭を悩ますってのは御免被りたいところだったしね。ゴロゴロ寝転がりながら色々好きな曲を探せそうなのは非常にラクでいいです。


>北村 「ラジオ」というモードもそうですね。
>ニンテンドーDSをラジオのように使っていただこうという試みなんですが、
>バーバラのDJとともに内蔵されている曲が流れてくるようになっています。
>しかも、Wi-Fiにつなぐことによって、
>何の操作もせず、ただ置いてるだけで、
>任天堂のサーバに蓄積されている楽曲が聴けるようになります。


 これはいいなぁ。「Wi-Fiで対戦!」とか「Wi-Fiで同時プレイ!」みたいな積極的な使い方も勿論アリだと自分は思いますけど、こういう受動的な使い方もなんか自分は好きです。Wii投票チャンネルとかメチャクチャ遊んでますよ。
 しかし実際の話、ダラダラとラジオを聞くのなんて、風邪をひいて寝込んでるときくらいしかないんですけどね、自分。ゲームミュージックがずっと流れるチャンネルとかあるなら作業用にずっと流しっぱなしになるかもしれませんが。


>岩田 それで気に入った曲があれば、ダウンロードもできると。


 でまぁ、こうやって「あ、これは商売なんだ」ってハッとさせてくれるのが、岩田社長の言い回しでよくあるパターンなんですよね。ゲームとしての理想、楽しさを語りながら、商品としての魅力を押し出すことも忘れない、というのが非常に優れた現実感覚を持っている人だなぁと思わずにはいられないですね。


>北村 曲名がDSの画面に表示されますので、
>気に入った曲があればダウンロードするときに便利だと思います。
>ただ聴いているだけでも、「こんな曲があったんだ」という発見が
>あればうれしいですね。
>さらに、テレビのスピーカーで合奏ができるようになったことも
>新しいことのひとつです。


 みんなのニンテンドーチャンネルとショッピングチャンネルがくっついているように、ラジオとダウンロードもくっつけちゃえばいいのになーと自分は思いました。名前を表示するだけじゃなくてね。まぁ、実際はそうなってるのかもしれませんが。
 テレビでの出力は面白いところですね。まぁ、DSで音源が強化されたと言ってもスピーカー自体は携帯機相応ですしね。イヤホンプレイで音楽が格段によくなるソフトが枚挙に暇がないことを思えば、DSのスピーカー自体の性能はそれほどでもないと。これは確かに携帯ゲームの抱える弱点ではあったワケです。
 でもまぁ、その解決法としてテレビを使っちゃおうってのが、凄い発想ですよね。この辺はGBAGCの頃から携帯機と据え置き機の連携に腐心していた任天堂ならではの着想ですし、WiiとDSだからこそ実現した機能ということで、やはりバンブラはDSならではのゲームなんでしょうね。
 しかしまぁ、これをやっちゃうと今開発中のWii Musicはどう差別化するんだろう、ってのを凄く疑問に思うんですけども、そっちもそっちで気に懸かりますね。


>北村 わたしは、特定のお客さんに遊んでほしいという気持ちはなくって、
>そのためにもいろんなモードを入れたつもりです。
>カラオケが好きな人は、歌うモードを楽しんでくださればいいですし、
>曲をつくるのが好きな人は作曲モードをどんどん活用していただきたいですし、
>そういうふうにいろんな嗜好を持った人たちが、
>『バンブラDX』のまわりに集まっていただければうれしいです。


 バンブラの楽しみ方は千差万別なんだと。この言葉は凄く自分は同感です。
 まぁ、自分も音ゲーなんか全然やったことなかったですしね。作曲できるワケでもなければ、一緒に遊べる友人もいないと。だから言ってみれば、バンブラ全体の50%しか自分は触ってないとは思うんですよ。
 でもまぁ、その中の要素の一つだけをとっても、バンブラは非常に完成度の高い作りになっていて、それだけでも十分に楽しめましたし、後になってエディット曲を遊べる環境が整ったら一度は燃え尽きたと思ったバンブラ熱が再燃しましたしね。まぁ、全部を味わい尽くそうとしなくても、一要素だけでも楽しめるゲームだと思うんです。
 今回登載された歌うモードがどれくらい作りこまれてるんだろう、ってのはちょっと危惧としてはあるんですが、それが大きな柱として確立していれば、今度は音ゲーが難しいって人でも楽しめますしね。まぁ、DTMが好きな人を狙い撃ちにするとか、音ゲーが好きな人の気持ちを煽るとか、そういうんじゃなくて、とにかく全対象のユーザに向けて発信されるゲームなんだなぁという気がします。ホントに発売が楽しみですよ。