世界はあたしでまわってる・ファーストインプレッション

 まぁ、買ったのは昨日なんですが。

 えーっと、「せかあた」と呼ぶべきか、「あたまわる」と呼ぶべきか、「はまってる」と呼ぶべきか、いっそのこと「S A M」ってのはどうだろうとか、発売に至ってなお略称に悩むゲームです。まぁ、ググってみた感じでは「せかあた」が主流っぽい感じだったので、とりあえずそれで。
 でも個人的にお祈り。あたまわる、あたまわる、あたまわる……


 今回も購入はカメクラで。ノトノ未入荷事件でやや自分の中で株を落とした感のあるカメクラですが、カメクラは前作のダンジョンメーカー仕入れてたので、まぁ、大丈夫だろうと楽観。入り口付近に貼り出された新作カレンダーにも入荷シールが貼られていて、つつがなくゲットに成功しました。
 なんか聞こえてくる話によると、各所で品切れが起きているらしいというこのゲーム。元々知名度が優先しているゲームではないので、単純に出荷が絞られているせいだとは思いますが、予想外に手応えはいいのかなという雰囲気があります。
 最近のニッチなゲームの売れ行きから見て初週2000本くらいかなーと自分は思っていたんですが、初週3000本、5000本くらいはあるのかもと思えてきたりして。まぁ、ちょっと今後の売れ行きが楽しみなゲームですね。
 売れ行きについてどうこう言うのはさすがに現状では早すぎるとは思うんですが、前作に比べてコンセプトを明確にしたこと、一般層でも手に取りやすいパッケにしたこと、前作の評判が良好かつファミ通で評価高、と周辺状況はなかなかよかったように思いますし、この例がモデルケースとなって、小粒な良作でもきちんと売れる流れが生まれるといいなぁと思います。そうなれば卸も増えて買いやすくなりますしね。


 そう言えば、自分がせかあたを買った時、前のレジのお客さんがPS3買ってました。あー、MGS4発売日かー。
 カメクラもこの前来た時は「MGS4発売まであと5日!」みたいに、なんかすげー力入れて販促してたんですがけどね。自分が着いた6時ごろはそういう熱気もなく、フツーのカメクラでしたね。


 さてまぁ、そんなところで。色々と進めなければならないゲームはあるんですが、発売日買いした新作をほっぽり出すような勿体無い真似は自分にはできないので、無限のフロンティアもクリアせにゃなーと思いつつ、2時間ほど触れてみました。


 でまぁ、なるほど、これはダンジョンメーカーの系譜ですね。SEやら敵キャラやら見事に前作のまんまというか。でもまぁ、その辺は安っぽいなぁと思うよりは、無限のフロンティアスパロボのSEが使われてて、おっ、と思うような、そういう感覚に近いです。
 オープニングは、どことなくおとぎ話チックで、でもなんか少し間が抜けていて。前作ダンジョンメーカーでも味わえたユルい感覚が初っ端から物凄い満喫できます。
 立ち絵とメッセージウィンドウを上下画面に分けるのは、あんまりセンスがいいとは思わないんですけどねー。でもまぁ、それもオープニングだけで、ゲーム内の会話部分は普通の作りですね。
 会話はやっぱりユルいですねー。ともすると手抜きというか、やっつけに近いグダグダさが窺えるんですが、そこを空気を読まないキャラが絶妙なレシーブで拾い上げるのが、前作から続くテキストの味だと思います。
 個人的には主人公のボディーガードをしているネロの役回りがすげー面白いです。ボディーガードとか言いながらやってることは木の陰から主人公の奮闘を見守る星明子的な役回りなんですが、この人が妙に苦労人気質で、主人公の目的地に先回りしてクエストを用意したり、ボスを用意したり、ダンジョンを用意したり、グチを吐きながらも超働き者ぶりを発揮してるんです。
 まぁ、実際に世界を動かしているのは彼のような気もしつつ、無意識にネロを働かせまくってる主人公こそがやはり世界をまわしてるのかな、と思いつつ。前作の主人公とヒロインの関係もそうだったんですが、なんか一方的に世話を焼く係と、全然それに気づいてない主人公、って関係が面白いですね。
 この辺は、実際にテキストを書き出さないと雰囲気が伝わらないような気もするんですが、妙に肩から力が抜けるこのテキストは、子供から大人まで楽しめるという意味である意味万人向けなのかなーという気はしました。改ページとか適当なので、あんまり読みやすくはないんですけど。


 さてまぁ、雰囲気についてはこの辺にして、ここからはゲームの概要について触れていこうかなと。このゲームはわがままなお嬢様が意中の冒険者のハートをゲットするためにわがまま一杯に世界を旅する、というものなんですが、そのわがまま加減をゲーム的に取り込んだのが、このゲームの最大の特徴でもある「わがままコマンド」です。
 わがままコマンドは、普通のRPGで言うところのスキルや魔法なんかの亜種なんですが、使える範囲が物凄く広いのがポイントですね。戦闘で使えるわがまま、例えば、先制攻撃が可能だったり、敵を追っ払うことができたり、敵の魔法を封じたり、というのは従来のRPGでもよくあるオプションなんですが、アイテムのドロップ率を100%にしたり、全滅したときに経験値とお金を失わずに復活できたり、果てには街の人からの依頼を達成したことにしちゃったりとか、まぁ、これはバランス崩壊スレスレのわがままなんじゃないの、的な内容のモノも幾つかあったりします。
 とは言っても公式チートツールが内臓されている、というよりは、やっぱりゲームの進行を円滑に進めるための各種オプションが用意されている、と言う感じで、うまくわがままを使ってゲームを進めましょう、というのがこのゲームの本題なのかなと言う気がします。前作でメインに取り上げられたダンジョン作成も、今回は地形変更という形で継承されていて、わがままコマンドで好きなように地形を変更することができます。


 地形の変更についてちょっと詳述すると、地形を変更するメリットは何かと言えば、それはエンカウントするモンスターを任意に変更できる、と言う点にあります。つまり、現在の地形を自分の戦いやすい敵が出現する地形に変更して、経験値やお金を効率的に稼ぐためのコマンドなんです。
 その意味ではこの地形変更は、前作ダンジョンメーカーの流れを汲んだわがままなんですが、前作に比べて洗練された点が特に光っているように自分には思えます。
 前作では「自分が掘ったダンジョンに魔物が住み着く」というシステム上の都合から、「ダンジョンを掘る」→「魔物が住み着くのを待つ」→「魔物を倒してリソースを稼ぐ」→「必要ならダンジョンを改築する」という流れをこなす必要があったんですが、ダンジョンを掘れる回数に制限があったので、回復するために町とダンジョンを行ったり来たりする必要があって、それが結構面倒だったんですよね。
 今回は、最初から魔物が棲息している舞台が用意されているので、流れが「魔物を倒してリソースを稼ぐ」→「必要なら地形を変更する(ダンジョンを改築する)」に集約されてテンポが非常に向上しています。ハック&スラッシュ(敵を倒して経験値とお金を稼ぐ)なコンセプトを押し出すために周辺の様々なシステムをスッパリと斬り捨てて、非常にシンプルで、かつ世界観さえも窺わせる「わがままコマンド」に纏め上げた手腕は、実に上手いやり方だなぁと自分は感服しています。
 まぁ、発売第一報の時からコンセプトの徹底が図られた感は窺えたんですが、実際にプレイしてみたところ、思い切った割り切りが図られていた点にビックリすると共に好感が持てた次第で。これは上手いアイディアだなぁと思っています。


 と言う感じで、せかあたは前作ダンジョンメーカーの後継でありながらも、各所にブラッシュアップが図られている点が非常に多いゲームなんですね。
 テンポの向上は特に気を使われている点で、前作ではモンスターがいちいち動いてダラダラと続いた戦闘も、今回は攻撃時のアニメをAボタンでカットすることができるようになったのが実にいい感じです。ただ、アニメをカットするために度々Aボタンを連打する羽目になるので、この辺はオプションでアニメのON/OFFを切り替え可能にした方がよりスマートではないかなと自分は思いました。同じくボタン連打ゲーのノトノをプレイしてたので、余計そう思う部分もあるんですが。


 それとこのゲーム、宿屋で食事をすることで各ステータスを伸ばすことができます。ドラクエで言えば「力の種」とか「素早さの種」が店売りされているようなものです。初代サガでもいいかな。
 前作では食事をするためには魔物の落とす食材が必要だったんですが、この食材を集めるのが結構な手間でした。ドロップがランダムなことと、1回の食事で複数の食材が必要なのと、毎日食事をしないとなんだか損な気分になるのとで、強迫的に食材を集める必要があったんですね。
 今回はレベル制があるので、食事は不可欠ではありませんし、何より食材を集めなくてもお金を払うだけで食事が可能になったので、とりあえずお金さえ稼げればキャラを強化できるというのが、非常にシンプルに纏められていていい感じです。最近のゲームはMMOの影響と世界設定的な都合で、素材を集めるのが流行りな雰囲気がありますが、お金という一本化されたリソースの分かりやすさ、シンプルさにも利点があることを忘れてはいけないなと。どちらを選ぶかはゲームの性質に依ると思うんですが、このゲームに関してはこちらが正解なように思います。


 あとまぁ、タッチペンでの操作にもしっかり対応しているのも意外と大切なところかもしれません。正直使いやすいUIかって言うと微妙なところですし、自分はボタン操作しかやりませんけども、カジュアルなユーザの中にはタッチペンでの操作にとにかく拘る人ってのがいるので、ターゲット層を幅広く設定したこのゲームとしては、タッチペン操作を取り入れたのも選択なんじゃないかと思います。


 一方で欠点を挙げるとすると、メッセージの表示が遅い、というのがちょっと自分としては気になりました。もういちどAボタンを押せば瞬間表示されるので致命的ではないんですが、メッセージスピードもオプションで変更できたらより簡便にプレイできたのになという気はします。
 それと立ち上がりの地味な戦闘も掴みが弱いというか。これはまぁ、単独パーティで戦闘オプションに乏しいタイプのRPGが抱える欠点だとは思いますが、非常に淡白で盛り上がりの薄い戦闘が続きます。
 まぁ、この辺は魔法が使えるようになり、仲間と戦えるようになり、わがままも色々できるようになり、と段階を踏んでユーザにプレイングを習熟させるために、敢えて不自由にしているのかなという感もあります。序盤はとにかく先に進んでわがままコマンドが使えるようにWPを確保していくのがいいやり方なのではないかなと思いますね。


 ゲームバランスは結構シビアです。敵がかなり素早くて、まずノーダメージで戦闘を終えられない、というのが結構響きますね。序盤はいざ知らず、魔法を使ってくる敵も厄介で。
 今いるエリアでほぼ敵なしの状態までキャラを育てても、次のエリアに行くと3,4発で死ぬぐらいの攻撃を平気で放ってくるという。割とインフレが効いてる感じがあります。
 でも、このシビアさはいい感じだと自分は思います。色々わがままを使って、魔法も使って、宿屋で食事をして、武器防具を揃えて、レベルも上げて、色々一生懸命にプレイして、それでかつての強敵を圧倒する力を得る、……というそれらの過程は、RPGの育てゲーとしての性質をきちんと踏まえていると思いますし、エリアが変わっても敵の強さにさほどの変化がなければ、どうしても緊張感が途切れてしまうと思うんですよね。
 敵は強くていいと思います。こちらに成長する余地があれば。
 バランスの悪いゲーム、というのは、敵が強いのにそれに対応する手段がないゲームのことであって、このゲームは「敵も強いけど、こちらもそれにあわせて成長できる」という作りなので、現状のところ強い敵の出現は目標設定として上手く機能しているように思えます。




 とまぁ、そんな感じで。派手さは全くないですけど、非常に丁寧に作られていてチクチクとプレイを続けてしまう見事なまでのスルメゲーですね。
 セーブ時間が物凄く短いのと、そこからすぐにダンジョンに潜れるってのがねー、止め時が見つからない理由なんだよなぁ。「じゃあ、もう1日だけ冒険するかー」みたいな感じでズルズルとプレイを続けてしまうという。
 この辺、気楽さというか気安さに長けたRPGだと思うので、最近RPGばっかりやってる自分にもスナック感覚で摘めるんですよね。ドラクエ2みたいな、単純だけどやり応えのあるゲームだと自分は思います。