オレスゲーよりもオレカッケー! ギターヒーロー3

このレビューはWillVii株式会社が運営する国内最大級家電・ゲームレビューサイト「みんぽす」から商品を無償でお借りして掲載しています。本レビュー掲載によるブロガーへの報酬の支払いは一切ありません。レビューの内容につきましてはみんぽすやメーカーからの関与なく完全に中立な立場で書いています。(唯一事実誤認があった場合のみ修正を行います) 商品無償貸し出しサービス「モノフェローズ」に関する詳細はこちら

概要


 ギターヒーロー3は、Activisionから発売のギタープレイをモチーフに取った音楽ゲーム。同梱の専用ギターコントローラーを操作することで、ロックスター気分を手軽に楽しめるのが大きなウリです。
 収録曲数は70曲以上で、有名ミュージシャンの名曲がズラリ。全てオリジナルバージョンで途中のカット等は一切なし。なので一曲辺りのプレイ時間はかなり長いです。
 曲目については全てを羅列すると長くなるので、詳細は下記を参照してください。


 http://www.gamer-seven.com/gh/song_CAREER.html
 http://www.gamer-seven.com/gh/song_coop.html
 http://www.gamer-seven.com/gh/song_bonus.html


 このゲーム最大の特徴でもあるギターコントローラーは、ネックの部分に5つのフレットボタンが並列的に配置された、言わば「弦が一本のギター」です。リアルなギターを簡略化して雰囲気だけを上手く再現した形なので、ギターに触ったことのない人でも手軽に楽しめます。
 その他、音を歪ませるワーミーバー(トレモロ・アーム)も装着されていて、このワーミーバーを使ってウインウインウインとロングノートを歪ませるのが、実にロックスターっぽくてカッコイイです。その他、ゲーム的にはワーミーバーを多用することで、後述のスターパワーゲージを溜めることができます。


 選べるモードは、簡易ストーリーモードのCAREERモード、2人でのCo-op(協力)プレイが楽しめるCO-OP CAREERモード、2人での対戦が楽しめるFACE-OFFモードなど多彩。さらにはWi-Fi通信にも対応していて、スコアサーバにハイスコアを送信できる他、ネットを介して協力プレイや対戦プレイが楽しめるという充実の作り。
 他機種版のような有料での新曲配信がないので、比較するとやや充実度に欠ける面があるかもしれませんが、普通にプレイする分には初期収録曲だけでおなか一杯になれます。


 他機種絡みでもう少し紹介すると、このギターヒーロー3。プラットフォームはWiiだけでなく、PS3XBOX360PS2と、主要なコンソールの全てを網羅しています。
 その中でもWiiギターヒーローの特色は、なんと言ってもWiiリモコンギターコントローラーのアタッチメントとして使える点にあります。そのおかげでWiiギターヒーローは、他機種よりも2000円弱おトクな価格で提供されていて、しかも他の機種にはないリモコンならではの機能が付加されています。
 具体的には「振動機能の追加」「ミスの際にリモコンスピーカーからノイズ音が発生する」「ギターを立ててスターパワー(得点2倍のボーナスタイム)を発動させることができる」と言った点でしょうか。
 特にユニークなのがスターパワーの発動方法で、単純に特定のボタンを押すのではなく、わざわざギターを立てて演奏するという、一見するとバカバカしい操作が実に熱くてカッコイイです。スターパワー発動時は、画面の演出も相俟ってムチャクチャにテンションが上がります。
 勿論、ギターを立てるということは、それだけ不安定な姿勢での操作を強いられるので、ミスを招きやすくもなります。スターパワーを発動させたはいいけれど、直後に演奏をミスってしまって、折角のチャンスを不意にしてしまうことも少なくありません。そのリスクとリターンを天秤に掛けて、どのタイミングでスターパワーの発動を狙っていくかは、ユーザの腕の見せ所ですね。


 難易度はEasyから始まって、Medium、Hard、Expartと続き、具体的には難易度の変化と共に使うフラットボタンの数が増えます。Easyでは3ボタンでプレイできた譜面が、Mediumでは4ボタン、Hardでは5ボタンを使用する譜面になり、Expartでは実際の譜面に近い高難易度のプレイが楽しめます。
 
 難易度は一つ上がると急激に難しくなるので、慣れないうちはEasyでの操作をオススメします。このゲームは譜面ごとに難易度が決まっているワケではないので、Easyでも収録曲を漏れなく楽しむことができるのがいいところですね。

進行


 ゲームのプレイは、ストーリーモードのCAREERモードがメインとなります。このCAREERモードでは、先のステージに進むことで新しい曲が選べるようになるのですが、演奏で高評価を得るとお金が貰えるのがポイントです。この獲得したお金で、新しいアバターをアンロックしたり、コスチュームやギター、新曲、ビデオなどのアイテムを購入することができます。
 ちょっとした収集要素も備えているのが、この手のゲームとしては珍しいところですね。と言っても、自分はあんまり音ゲーってやったことないんですけども。


 ということで、一流スターを目指してお金もガッポリ、アイテムも沢山ゲットしたいところなのですが、まずは逸る心を抑えてチュートリアルモードを開始します。何事も基本が肝心です。


 ストラップを肩にかけてギターを正面に構えます。背筋はちょっと反り気味に、膝をちょっと曲げて天井を仰ぐように姿勢を取ると、それだけでなんかロックスターな気分になってきます。自分はプレイ中は自然と立ち上がって、ゆらゆらとリズムを取りながらプレイしてしまいますね。そういう雰囲気が自然と醸造されるんです。


 さて、チュートリアルモードでは、神様と悪魔(?)がスキット形式でギターヒーローのプレイ方法について解説してくれます。が、字幕嫌いな欧米のユーザ向けに作られたゲームらしく、ここでのチュートリアルは音声での解説がメインで、微妙に分かりづらくもあります。
 そもそもチュートリアルモード自体がメニューの奥まった場所に配置されていて、なおかつ説明書での記載も最低限の記述しかないため、導入に関しては欧米ならではのアバウトさというか、やや不親切さを感じる部分ではありますね。チュートリアルモードがあるのかないのか。それさえもパッと見ではわからないという。


 さて、チュートリアルで操作の基本を学習したら、いよいよCAREERモードを始めます。プレイヤー達のバンドは最初は村祭りの会場での演奏を行うことに。提灯とかがり火を照明にして、演奏を開始します。
 曲目の選択からプレイに移るまでには若干のロード時間があるんですが、これは気になるほどではありません。演奏画面は3Dでグリグリ動いてるので、結構処理にかかりそうなんですけどねー。驚きです。
 ゲームの具体的な操作は、流れてくるノート(音符のようなもの)に合わせてタイミングよく該当のボタンを押すと言う、ごくごく標準的な音ゲーのスタイルです。特殊な操作として「ハンマーオン」「プルオフ」と言ったギターならではの奏法もありますが、難度が低いうちはとにかく反射的にボタンを押していくだけでなんとかなる雰囲気ですね。
 普通にプレイしててもギターを演奏している気持ちは味わえるんですが、ワーミーバーで音を歪ませてる時なんか、もう無性に自分がカッコよく思えますね。他の9割の音を外していても、ロングノートだけミョンミョン言わせていたら、それだけで十分カッコイイんですよ。この感覚を味わえるのは、リアルっぽさとオモチャっぽさを両立させたギターコントローラーの秀逸なデザインのおかげでしょうね。


 そんな感じで指定された曲数をクリアすると次のステージへ。アニメ調のスキットが入ってプレイヤー達バンド一行が次の舞台に向かう理由が提示されます。
 このゲームの本分はギターアクションにあるので、幕間のスキットは比重の軽い要素ではあります。ですが、このスキット、見せ方に拘りがあって、テンポも良好。なおかつ無声なのにストーリーがわかりやすいと、非常にいい仕事をしているなと感じました。
 展開も意外性があって面白いですしね。細かいところまで手が行き届いてる完成度の高さを感じます。


 さて、ゲームを進めていくと、演奏終了後に突如人ごみを掻き分けてカマっぽいオッサンが現れます。ん、情熱的なファンか何かでしょうか?
 ……と思ったのですが、どうやらこの人、トム・モレロという超有名なミュージシャンだそうで。すいません、「カマっぽいオッサン」はどうか撤回させてください!
 さて、このトム・モレロさん、ライブを成功させてちょっと調子に乗ってるプレイヤーに対してギター勝負を挑んできます。おおおおお、ギターバトル! どちらがより優れたギタリストか、この場で弾き比べで確かめてみようじゃあないかというワケです。
 このギターバトル、ゲームを進める際に何度か機会がありまして、言わばボス戦的な位置を占めています。課題となる曲は、現在の難易度から一段階上ぐらいの難度の高い曲が用意されているのですが、もしここでどうしても勝てなかった場合、スルーして後で再戦を挑むこともできます。
 この辺り、ゲームとしての柔軟性が非常に高く、思い切った作りだなぁと感心しました。一つの場所で四苦八苦するよりも、色々な曲を演奏して慣れた時に再戦してね、という心遣いが窺えます。


 さて、それはともかくとしてギターバトルです。具体的なギターバトルの内容はと言えば、課題となる超絶な譜面を両者が同時に演奏して得点を競い合う……と言ったものを想像しがちなんですが、なんと実際にはアイテムを使って相手の演奏を妨害し、ミスを誘って観客の支持を失わせるという、「スポーツマンシップとか知ったこっちゃねぇ!」な、カオス過ぎる内容です。
 なんと言うか、F-ZEROの対戦レースが始まるかと思ったらマリオカートの風船割りレースが始まった、みたいな。最初説明を受けたとき、マジでビックリしました。
 ということで、ギターバトルでは妨害用のアイテムを集めて攻撃しまくりです。フラットボタンを壊したり、弦をぶった切ったり、譜面を揺らしたり、ノートを倍にしたり、逆さにしたり、通常のストイックな演奏とはまるで異なる、メチャクチャカオスな光景が繰り広げられます。
 でもこの対戦が物凄い熱いんですよ。「あ、アイテム取れそう!」と思ったタイミングで操作を中断させられると、もう怒り心頭ですし、ならば「これでも食らえ!」とギターを立てて妨害アイテムを立て続けにぶちかますと、相手のプレイがあからさまにグダグダになって愉快です。
 最終的には観客の熱狂度を示す「ロックメーター」を真っ赤にしてしまえば勝ちなんですが、そのためには自分の演奏はなるべくパーフェクトに達成してアイテムの回収に努め、相手の譜面が山場に差し掛かったところで攻撃に転ずる必要があります。攻撃が散発になって息をつく暇を与えてしまうと、向こうは凄腕のギタリストですから、難しい譜面もあっさりこなしてすぐにロックメーターを回復してしまうんですよね。
 なので攻撃は集中が基本。「一定時間操作不能!」「ノート2倍!」「おまけに難易度上昇!」と、畳み掛けるようにしてアイテムをぶつけるのがコツっぽいですね。


 とまぁ、そんな感じで全7つのステージをクリアすれば、プレイヤー率いるバンドは晴れてLEGENDS of ROCKの称号を勝ち取ることができます。しかし、スタッフロールが流れ始めるとともに、驚愕の展開がプレイヤーを待ち構えています。
 具体的な内容は敢えて伏せますが、LEGENDSへの道のりが果てしなく険しいことを、プレイヤーはそこで初めて知ることになるでしょう。これは本当に人間がプレイするゲームなのか……!?

評価点


◎ 溢れ出るカッコよさ。難度の高い譜面を弾き切った時の「オレ、カッコイイ!」感が堪らない。
◎ レスポンス、ロードともに軽快でテンポがいい。
◎ アニメやアイテム収集など、細かい部分まで丁寧な作り。全体的に洗練された作りで、洋ゲーにありがちな悪い意味での大雑把さは皆無。
○ プレイヤーの習熟度に合わせた難易度選択が可能。誰でも弾けるEasyから、プロの領域Expertまで幅広い。

欠点


× ローカライズ不足。マニュアルも不親切で、せっかく間口の広い題材にも関わらず、無意味に敷居を高くしている。
△ やはりキャラクターが濃い。せめて日本人くらい日本人ぽくして欲しい。
△ 1曲が長い。原曲を知らないと、繰り返しが多くてダレる。ただ、ファンにとっては大きなセールスポイントか。

総評と要望


 何度も繰り返すけようですが、ギターヒーロー3は、プレイしててカッコよさを感じられるゲームです。他の音ゲー、例えば、バンブラDXなんかは、難しい譜面をプレイしてると「オレ、カッケー!」よりも「オレ、スゲー!」が先に来るんですが、ギターヒーローの場合は、プレイしている自分がまるで凄腕のギタリストなんじゃないかと錯覚させてくれる力があって、それがこの上ない快感に繋がっているんですね。
 両者の差はどこにあるかと言えば、それは第一にはギターコントローラーという小道具の存在がありますが、更に言えば、ファンの熱狂的な声援や、スターパワー発動時の演出など、ゲーム内の演出や空気感が巧みで、プレイヤーのテンションをグッと押し上げてくれる働きをしているからだと思います。
 そういう意味で、このゲームは一つ一つの挙動からインターフェースまで、トータルでプレイヤーにロックスターのカッコよさを味わわせるべく計算し尽くされたゲームなんだな、ということがわかります。全世界でバカ売れしたのもなるほど納得のクオリティです。


 しかし、一方で、主戦場である欧米では広く受け入れられたであろう独特の空気感をそのまま持ち込んだために、そうした雰囲気に慣れていないユーザにとってはやや敷居の高い作りになっていることは否めない事実だと思います。ゲーム中の文章の多くは原文のままで、特に報酬を貰う場面でなぜ報酬が減額されるのか、最初は意味が理解できずに苛立ちを覚えました。
 ゲーム本来の雰囲気を失わせないために、英語表記を多用したというのはわからなくもないのですが、マニュアルなどでそのフォローがなされていないと、これは単純な手抜きのように見えてしまいます。マニュアルもギターバトルの項目については非常に丁寧に記述されていたのですが、モード選択やその他の部分についてはとかくわかりにくさが先立ちましたね。
 ゲーム自体は題材もわかりやすく、非常にイイ出来なのですが、触るまでに拒否感を持たれやすいゲームでもあると思います。市場的に日本の重要度が薄いというのはわかるんですが、そこで労力を惜しんでしまうと、内容で勝っていても国産の音ゲーに苦戦を強いられることになるのではないかなと思います。


 あとまぁ、キャラが濃いのはゲーム的にも仕方がないんですが、どうか日本人だけでも、もうちょっと柔らかくして貰えると嬉しいです。正直な話、「1人日本人がいるよ」と教えて貰った時、真面目に探しましたからね。見つけても、「え、これが日本人!?」みたいな。衝撃的でした。


 まぁ、自分は、ギターの経験まるでなし、洋楽なんてサッパリ、収録曲の名前を見てもチンプンカンプン、プレイして初めて「あ、なんかこのフレーズ聞いたことがあるわ!」レベルの酷いプレイヤーなんですが、それでも終始ノリまくりでギタープレイにのめり込めたこのゲームは、言語だとか文化だとかを乗り越えた、根源的な楽しさに満ち満ちたゲームであると思っています。
 逆に確かな面白さを内に秘めているからこそ、その面白さがパッと見で伝わりづらいのが残念に思えるワケで、予定されている次回作では、商品の魅力を伝える努力をより押し出して欲しいなと思います。