発想力で遊びは無限に。ブームブロックスレビュー

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みんぽす

 ブームブロックスについては、以前2時間余りのプレイの後に、ファーストインプレッションという形で概況及び触感等について多少触れました。その際のレビューはこちらになります。


 http://d.hatena.ne.jp/torinity0/20080718/p1


 そして今回は、もう少しプレイを深めたところで、前回では触れられなかった部分を中心にレビューを進めていきたいと思っています。やはり長くプレイを続けてみないと、見えてこない部分もありますしね。


 さて、全体を俯瞰して、ブームブロックスの長所と短所を簡潔に纏めれば以下のようになります。全体的には自由度が高く、触感も良好で、非常に良く纏まっているゲームではありますが、反面細かい部分でやや練り込みが足りない箇所が幾つか見受けられました。


◎ パズル性、アクション性に優れたゲームデザイン。様々なルールを盛り込んだ多様性に圧倒される。
◎ Wiiリモコンを活用したWiiならではのゲーム。操作は直感的で爽快感がある。
◎ テンポ良好でリトライも敏速。ゲーム中のロード時間もほぼ皆無。
○ 難易度の幅広さ。銅メダルを取るのは容易でも、金メダルが実に手強い。


× キャラクターが濃すぎる。
△ ステージクリアが次のステージのアンロック条件なので、一度詰まるとお手上げに。
△ エディットが難しい。Wi-Fiが十分に機能していない。


 それでは、各項目について補足をします。


◎ パズル性、アクション性に優れたゲームデザイン。様々なルールを盛り込んだ多様性に圧倒される。


 このゲームはリモコンを利用しての「ボールを投げる」「ブロックを掴む・引っ張る」「狙いを定めて銃を撃つ」といった3つの操作が基本になるんですが、ここでは前回触れられなかった「ブロックを掴む・引っ張る」操作に関して、詳説していきます。


 ブロックをぎゅっと掴んで引っ張るハンドツール。このツールはジェンガのようなパズルゲームで使える操作なんですが、Wiiリモコンを真っ直ぐに動かすのは結構難しくて、最初は思った方向に動かせなかったり、他のブロックにぶつけたりといったことがよくあります。
 とは言えそれも最初のうちだけで、操作や物理法則が理解できるようになると、複雑に積み重ねられたブロックの建物の中から、抜いても大丈夫そうなブロックを見極められるようになります。「このブロックは大丈夫なハズ!」と目星をつけたブロックが見事に引き抜けた瞬間は、黒ヒゲ危機一髪でタルに剣を差し込んだ時のような、なんとも言えない安堵感と爽快感があります。さらに熟練してブロックをポイポイと投げ捨てていくと、なんだか解体職人になったような気がして実に楽しいです。
 ハンドツールを使うステージのブロックは、それぞれが複雑に組み合っているので、適当にブロックを引き抜くと、あっという間にバランスが崩れて建物が倒壊してしまいます。この崩れる様もなかなかハデで、うっかり失敗してしまったときには「あーあ、やっちゃったなぁ」なんて、苦笑しながら顛末を見守ることもしばしばです。
 ですが、視点移動を使って、よーく建物を観察してみると、重みのかかってないブロックが幾つかあることに気づくんですね。で、これを引き抜く分には、建物は多少揺れはするんですが崩れはしないと。
 そして、四本足の建物の場合、向かい合う二本の足さえ直立してれば崩れないってことまで分かると、後はもう手当たり次第にスッスッスッスッと、まるでテーブルクロス引きの達人のようにブロックを引き抜いていけるんです。慣れるとブロックをポイポイ捨てるように引き抜けるんですが、こうなるとWiiリモコンとの一体感が凄い感じられて楽しいです。
 ブロックをあらかた引き抜くと最後には骨組みだけしか残らないシュールな建物になっているのがまた笑えます。風が吹いたら一瞬で崩れちゃうだろうなぁ、みたいな。


◎ Wiiリモコンを活用したWiiならではのゲーム。操作は直感的で爽快感がある。


 Wiiリモコンを使うゲームというと、とかく真っ先に「思いっきり振る」という「豪快さ」を生かした利用法を考えがちなんですが、このゲームに関して言えば、むしろ重要なのは「狙いを定める」「正確にリモコンを扱う」といった「精緻さ」に力点が置かれているように思います。
 それでいて、リモコンを振る動作を最後に持ってくることで、細かい作業で内に内に篭るエネルギーを爆発させてプレイヤーに爽快感を与えてくれるのがまた憎いんですけどね。この辺はファーストインプレッションでも述べましたが、ブームブロックスは「静と動」の対比が鮮やかなゲームです。じっくり考えるパズルゲームが好きな人も、反射神経が重要なアクションゲームが好きな人も、どちらも楽しめる幅広いゲームです。


 ところで、Wiiリモコンを完璧に動かすのって実は凄く難しいです。従来のコントローラーとはそこが画期的に違います。マリオカートにしたって、GCコントローラーの方が正確な操作は容易いですしね。
 Wiiリモコンは、どうしてもアナログな揺らぎがあります。クシャミをしたら、それだけで手がブレてゲームオーバーになってしまうような、根本的な扱い難さを孕んでいます。でも、そのアナログさを乗り越えて、自由自在にリモコンを操作できるようになると、それだけゲームに習熟したという実感を強く覚えられるんですね。
 「正確な操作が難しいWiiリモコンを正確な操作する」というのは、ある種矛盾を感じるような気もしますが、Aボタンを押したならAボタンなりの結果、Bボタンを押したならBボタンを押したなりの結果、といった決まりきった反応ではなく、入力に揺らぎが介在することで、より広範で意外な結果を出力できる、豊かなインタラクティブ性を提供できるのがWiiリモコンの特徴です。
 そして、ブームブロックスに内在する緊張感や幅広さは、まさにWiiリモコンの「揺らぎ」から生まれたものなんですね。だからこそ、このゲームはWiiにマッチしたゲームなんです。


◎ テンポ良好でリトライも敏速。ゲーム中のロード時間もほぼ皆無。


 さて、この手のステージクリア型のアクションゲームやパズルゲームで極めて重要なのは、手早くリトライができることです。
 初代スーマリなんかは、マリオが死んでからの復帰が非常に素早くて、すぐに次のプレイに気持ちを切り替えてリトライに臨めますよね。あの軽快なテンポって凄く大切なんですが、ブームブロックスも「あ、こりゃダメだ」と思った時にはすぐさま現在のプレイをリセットしてリトライに挑むことができます。メニューを開くのにややもたつく感はあるんですが、リトライ開始までのロードは皆無でトライアンドエラーに没頭できるのが嬉しい作りです。
 ロードに関しては、(EAのゲームらしく)ゲーム開始前に長めのロードがあるだけで、プレイ中は殆ど待ち時間を感じませんね。メニュー間移動も快適で凄く手触りが良いです。


○ 難易度の幅広さ。銅メダルを取るのは容易でも、金メダルが実に手強い。


 最初のステージは、それこそ最初のプレイで金メダルを獲得できるほどなんですが、ゲームが進むにつれて用意されるステージは複雑さを増し、同時に徐々に手強くなってきます。金メダルが楽勝だったのが、いつの間にかリトライしないと取れないようになり、最後には銅メダルを取ることさえ難しくなってくるレベルデザインは秀逸の一言です。
 最初は金メダルをラクに取れるので、「なんだこのゲーム、余裕余裕」なんて思っていても、次第に難しくなるゲームについついムキになってのめり込んでしまうんですね。


 また、最初からプレイできるエクスプロアーモードやアドベンチャーモードをクリアすると、今度は上級者向けのチャレンジモードがプレイできるようになります。こちらは難易度も急上昇して、手応えも格段にアップ。さらに高度なチャレンジを楽しめます。


△ ステージクリアが次のステージのアンロック条件なので、一度詰まるとお手上げに。


 一方で、解法が閃かないと手詰まりになるのがこの手のゲームにはありがちで。用意されているヒントは最小限なので、閃きが降りてこないと二進も三進もいかないことがままあります。
 プレイヤーの母数が多ければ、コミュニティで情報交換することでこうした問題も解決できるんでしょうけど、何分マイナーなゲームはこういう部分で救済措置に欠ける面はありますね。


× キャラクターが濃すぎる。


 キャラクターの欧米的な「濃さ」に関しては、正直微妙な部分はあると思います。単純に可愛いキャラを使えばいいかと言うと、ボールや爆弾を投げつける対象としてそぐわない面もあるので、実は舵取りが難しいところです。ゲーム性を取るか。それともキャラクター性を取るか。
 とは言え、過去にはピクミンレミングスと言った、キャラクター性とゲーム性を両立させた作品もあるので、そうした先例を手本にして、より洗練されたデザインを目指すこともできたんじゃないかなと自分は思います。ここは両立させてこそ評価される部分かなと。
 あと、ファーストインプレッションで自分は、「キャラクターは背景だから気にならないよ!」的なことを言ったんですが、実は続くアドベンチャーモードでは、このキャラクター達がキーマンになります。


◎ パズル性、アクション性に優れたゲームデザイン。様々なルールを盛り込んだ多様性に圧倒される。


 アドベンチャーモードは、ストーリーの進行と共に各種クリア条件が設定されたステージを攻略していくモードです。順次ステージを攻略していくエクスプロアーモードと構成的には同一なんですが、エクスプロアーモードが各種ルールを把握するためのチュートリアル的な側面が強かったのに対して、アドベンチャーモードは今までの操作を行うのと同時に、自分の陣営のキャラクターを目的達成のために誘導する必要があるRTS的要素を組み込んだモードです。
 具体的には、エクスプロアーモードでプレイヤーに課される条件は「全てのブロックを破壊しろ!」と言った内容なのに対して、アドベンチャーモードでは「仲間を守りつつ、全てのブロックを破壊しろ!」というような、より応用的な条件を課されることになります。
 仲間と敵という新しい要素が加わることで、アドベンチャーモードはより高いアクション性を備えることになります。なにせ味方のキャラは放っておくとすぐに全滅してしまうので、速攻で敵のキャラを倒し、主目的も達成しなければなりません。
 しかしまぁ、こうして制限が課されると人間覿面に焦るもので、今までは完璧に決まっていたボールコントロールも途端に不安定になります。弱点を見極めて少ない手数でクリアするのが、ブームブロックスの基本であり、奥義でもあるんですが、慌てているともうボール投げまくりの適当に狙いまくり。いつの間にか仲間も一緒に吹っ飛ばしてて、ゲームオーバーになることも少なくありません。
 任務は遂行する』『部下も守る』、「両方」やらなくっちゃあならないのがプレイヤーの辛いところでもあり、面白いところでもありますね。


△ エディットが難しい。Wi-Fiが十分に機能していない。


 エディット機能は、既存のステージを流用して新たにブロックや仕掛けやキャラを追加・変更したオリジナルステージが作れる機能です。このエディットモードで作成したステージはフレンドコードを交換したプレイヤーとWi-Fi機能を介してステージの交換を行うことが出来ます。
 ただ、エディットモードは既存のステージを流用する形なので、ステージ固有のヤクモノを組み合わることができず、ルールの変更に制限があったりと、やや自由度に欠ける作りではあります。
 エディット自体は、発想次第で思いもよらないステージが作れる奥深さを備えているので、いざ思いついた発想を形にできない制限があるのはやや残念なところです。


 Wi-Fi機能を活用したステージ交換にしても、プレイヤーの母数が少ないことで、ステージ交換が活発に行われるブレークポイントに達していないように思います。 どちらかと言えばエディットステージは、大合奏バンドブラザーズDXのように、サーバに投稿したものを、各自ユーザがダウンロードして楽しむという形式にした方が適切だったのではないかなと。ついでに言えば、ワールドワイドでステージの募集と交換を行えたら、これは非常に広い遊び方が提供できたのではないかなと思います。言語の問題は確かにあるかもしれませんが、そこはブームブロックスの直感性が突破してくれるのではないかなと思います。




 とまぁ、ここまでブームブロックスについて長々と書き連ねてきましたが、一貫して言えるのは、このゲームは、発想力次第でどんな遊び方もできる非常に自由度の高いゲームだということです。
 ご存知マリオの生みの親、宮本茂さんは「究極の遊びは粘土」との言葉を発していますが、このゲームはまさに粘土のようなゲームなのです。