▼スポア クリーチャーズレビュー

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 今回紹介するのは、「シムシティ」の生みの親ウィル・ライトの新作、スポア クリーチャーズです。


 http://www.japan.ea.com/spore/ds/


 EAの解説によると、『スポア クリーチャーズは、自らが作成したクリーチャーを進化させながら、各ステージの謎を解き、惑星「タプティ」を救うことを目指すシミュレーション/アクションゲーム。』……ということになっています。一見して「シミュレーション/アクションゲームってなに?」と首を傾げたくなる表記ではありますが、メインとなるのは3Dの箱庭空間を歩き回ってミッションを攻略していく「ゼルダの伝説」のようなアクションアドベンチャーで、そこにパーツの追加や交換を行う「クリーチャークリエイター(コンストラクションモード)」をくっつけたゲームです。パーツの交換は、簡単に言えばロボットの部品交換みたいな感じですね。
 他のゲームで言えば、SFCの「46億年物語」とか、GCの「動物番長」に似たコンセプトのゲームと言えるでしょうか。それらに比べてこのゲームの特異な点は、クリーチャーという全く空想上の生物を題材にとった点にあります。
 同名のPC版からは、クリーチャーステージのみを抜き出してDS用にファニーにアレンジした、という感じ。EAではよくある変則マルチのパターンですね。


 さて、プレイしてみての評点は以下のような感じです。それぞれについて詳細を述べていきたいと思います。

欠点

× カメラワークの悪さ。行きたい場所になかなか行けず、酔いやすい。
△ ミッションクリア型のゲームデザインと、自由度の不協和音。
△ クリーチャー自体の魅力に欠ける。進化の方向性が定まらず、漠然としたパーツ交換になりがち。




◎ クリーチャー作成の自由度が凄い。好きなパーツを好きな場所に好きな数だけつけられる。


 このゲームは、一番最初は手も足も口も持たないスライムのようなクリーチャーから始まります。当然ながら、この状態では何もできないので、どんどんとパーツを手に入れては進化を繰り返すのですが、最初は可愛かったクリーチャーがあっという間にヘンテコな生き物に…… 可愛いだけじゃ生きていけない野性の厳しさを痛感します。
 ということで、このゲームで最も重要なのが、パーツを交換してクリーチャーを進化させる『クリーチャークリエイター』です。クリーチャーはパーツ次第で、どんな姿にでも変貌します。
 パーツには胴体、目、口、手、足、尻尾、ヒレ(飾り)の種類があって、胴体以外の各パーツは自由に付け替え可能です。
 そして、このゲームの凄いところは、クリーチャーデザインの圧倒的な自由度の追求にあります。とにかく胴体にくっついてさえいればなんでもオッケーというムチャっぷり。プラモのパーツ取替えのように予めパーツを取り付けるためのハードポイントが設定されているワケじゃなくて、目を背中にくっつけてもいいし、足と腕の位置を逆にしても構いません。粘土をこねくり回すように自由自在にクリーチャーをデザインできるゲームなんです。
 手やら足やら何本生やしても構わないですし、ポイントの制限内で好きなデザインができるってのは、まさにこのゲームならではの特徴ですね。仮想のクリーチャーだからこそできる、不思議で異様な世界がそこにはあります。
 ちなみに自分は、ダチョウの首みたいなのを股間から生やして「白鳥の湖!」とか遊んでました。なんというか発想が子供ですな。
 でも、見た目はまずキモいです。原色過多な色彩も相俟って深海魚を凌駕することもしばしば。なので、このゲームを楽しめるかどうかは、できあがったクリーチャーを見て「キモいよ、キモすぎるよこれー!」と笑えるかどうかにかかっていると思います。
 もう少し言えば、完成形がキモくなるところをなんとか可愛く仕上げようとすると、これは意外と歯応えのあるゲームです。ついついどこぞのクトゥルフの落し子のようなグッチャグチャなデザインのクリーチャーを産み落としてしまいがちですが、そこをグッと堪えて鑑賞に足りるキュートなクリーチャーを作り出せたら、「ちょっと自分凄くないか?」と思えてしまう面白いゲームでもあります。
 ちなみにそれぞれのパーツには能力値が設定されていて、例えば「口」は、パーツ次第でクリーチャーの好みが肉食、草食、雑食に変化する仕組みになっています。肉食は高性能ながらクリーチャーを倒して食料を得なければならないので回復が難しい。草食は性能は控えめながらそこらの果物を食べられるので持久力がある。雑食はその中間ながら回復力が低い、という感じ。
 胴体以外の全てのパーツは、攻撃力や防御力、魔法のようなスキル(バイオパワー)を覚える等、それぞれにパラメータが設定されていて、ゲームを攻略する上では、最適と思われるパーツを選択してミッションに挑戦する必要があります。


○ Wi-Fiを活用した通信機能の登載。


 このゲームは、確かにクリーチャー作成の自由度は高いんですが、ゲームを追うだけだと性能重視の無味乾燥な構成になりがちなゲームでもあります。
 なので、作ったものを人に見せることに楽しさを感じる人向けのゲームかなと。自分ひとりで消化しようとすると、途端に味気ないゲームになってしまう部分は拭えないように思います。
 そういう意味で、Wi-Fiでクリーチャーの交換が可能という点は、ゲームの本題に沿った上手いシステムだと思います。これはポケモンの交換というよりは、設計図やレシピの交換と言った感じで、見た目に拘れるこのゲームに適した内容だと思います。
 惜しむらくは、さほどコミュニティが盛り上がっていない、ということでしょうかね。通信を楽しさの根源に求めるゲームは、ユーザ数の確保が第一の条件となるのですが、このゲームはその点、販売数も好調とは言いがたく、出だしから躓いてしまっているような点は窺えます。


○ 3Dマップと2Dキャラを組み合わせた技アリの構成。技術的には高度。


 面白いのはこのゲーム、キャラクターがみんなペーパーマリオのようなペラペラキャラなんですよね。マップは3Dなんですが、キャラはトゥーンシェイドな2Dキャラという組み合わせは、技術的にはかなり高度なことをやっているなぁという感じで驚きます。
 かと言って操作が重いかと言えば、そんなことは全然なくて、処理落ちを感じたことはまったくないです。背景がやや寂しいかな、という点は気になりますが、まぁ、それもハードの特性を考えれば納得の行く範囲ではあります。
 パーツ次第で外観が幾らでも変わってしまうクリーチャーを3Dの世界で生かすには、それこそPCのような高スペックのマシンが必要になると思うのですが、DSでそれを実現するにあたり、2Dキャラを選択した辺り上手い落とし込み方だなと感心します。「DSってこんなゲームも作れるのか!」と思えた久々のゲームですね。


○ DSのタッチ機能を活かしたアクション、ミニゲーム。


 基本的な操作はタッチペンと十字キーの併用。LRでカメラの回転。タッチペン保持でRは押しづらいので、カメラはLボタン基本ですかね。カメラに関しては後の項目で詳しく触れたいと思います。
 さて、クリーチャーが進化するためにはパーツが必要なんですが、パーツは他のクリーチャーを倒すか友達になることで入手することができます。君は戦ってもいいし、友達になってもいい。2つの手段をプレイヤーは選択することができます。


 戦う場合は3Dアクション戦闘に突入します。距離を計りつつ、相手を素早く擦るとひっかくようなエフェクトが出てダメージが与えられます。
 戦闘は斜め上視点からの3Dアクション。これは「動物番長」に似てますね。操作感は「すばらしきこのせかい」に近いかな。
 敵のクリーチャーは強め。1対1だと負けることもしばしばです。
 エフェクトで画面が隠れがちなので、とにかくタッチパネルを擦っていたら、勝ってたor負けてた、みたいなことが多くて、どうもこの辺りスマートに戦うのはなかなか難しいです。
 一方で仲間を集めて3対1で戦うと途端に戦術的になって面白いです。自分が敵を引き付けている間に仲間が後ろから攻撃、みたいな。相手のターゲッティングにあわせて逃げるか攻めるかを即時に判断して、被害を最小限に勝ちを収めるみたいな。狼の狩猟っぽいのが雰囲気があっていいです。


 一方で、クリーチャーと友達になる場合は、クリーチャーに話し掛け、タッチペンでクリーチャーを撫でるか、「応援団」風のリズムアクションに挑戦することになります。
 クリーチャーを撫でるのは、まぁ、文字通りです。特別に難しくもないですが、友好度の上昇は低めです。何度も撫でなければいけないので、割と面倒ではあるのですが、どちらかと言えば、これは後述のリズムアクションの救済策と言った位置付けなのだと思います。
 リズムアクションは、四方に飛び散るマーカーをタイミングよくタッチするというもので、短いフレーズでの中で機敏な動作を要求されることが多いです。ゲームが進むと、「これは無理だろ……」と思わされるような難度の高いフレーズも頻出してきて、なかなかに歯応えがあります。
 操作自体は、レスポンスも軽快で楽しいですね。「難しすぎる!」と思っていても何度かプレイするとこなれてくるのも、この手のリズムアクションの魅力を踏襲しているなという感じです。


× 箱庭の触感の貧弱さ。カメラワークも悪く、酔いやすい。


 一方で、戦闘やリズムアクション以外の、箱庭を移動するシーンでは所々に触感の悪さが感じられます。
 バナナを木から落とすときも妙にテンポが悪かったり、落ちたバナナを拾おうとタッチしても、近くの仲間を認識してしまったり、「○○したかったのに、××してしまった」という場面がしばしば見受けられます。
 ミッション達成のために石を投げるアクションを要求される場面が多いのですが、せっかく遠くの木や機械に石を投げ当てたとしても「コツン」みたいな、ちっちゃなSEしか出なくて、全然達成感が感じられません。これらのシーンはプレイしてて気持ちよさが沸いてこないです。


 また、カメラワークの悪さも苛々させられる点の一つです。基本的にこのゲームは、俯瞰気味の視点で遠景が見えづらく、目的地を見つけにくい作りになっています。
 上画面で地図が表示されるので、そちらを見れば目的地は一目瞭然なんですが、上画面と下画面と頻繁に視線を行き来させると、なんだか妙に酔ってきます。これは、移動の方向が8方向固定じゃなくて、カメラの方向に好きなように動き回れるのが理由としてはあると思うんですが、なんでもかんでも自由に動き回れるのが逆にプレイヤーには制御しづらくて、その食い違いが3D酔いを引き起こす仕組みになっているんだと思います。
 自分は、あまり3D酔いとか経験したことはないんですけどね。ただ、このゲームは1時間プレイするとなんだか頭が痛くなってくるゲームでした。
 カメラの方向に好きなように移動できる、ってのは確かに技術的には凄いことをやっているのだと思います。でも、個人的にはもっと制限をかけてシンプルな動作に纏められた方が好みだなと。その辺は、日本と欧米の感覚の違いなのかな、という気もしますけどね。


△ ミッションクリア型のゲームデザインと、自由度の不協和音。


 このゲームは、惑星に生息している他のクリーチャーと戦うor友達になることでパーツを集めるゲームです。基本的に外交大好きな自分は、新しいクリーチャーを見つけるとまず声を掛けて友好を計ろうとするんですが、そんな姿勢はお構いなしに攻撃を仕掛けてくるクリーチャーがこの世界には多々います。
 で、それはなぜかと言うと、ゲームのシナリオ上、こっちのクリーチャーは友好的で、こっちのクリーチャーは敵対的、というのが予め決まっているからなんですね。敵対することが決まっているクリーチャーはどうやっても仲良くなれないんです。
 大体は、「弱いクリーチャーと仲良くなって、強いクリーチャーを追っ払う」というシナリオになってまして、「強いクリーチャーと仲良くなって、弱いクリーチャーを虐げる」みたいなルートを取ることはできないんですよね。ゲーム的には二種類の交渉手段を用意しても、それが有効に使えるのはシナリオがあらかた解決した後、というのは半端な裁量権を与えられているようで、どうにも納得いかない気分でした。


△ クリーチャー自体の魅力に欠ける。進化の方向性が定まらず、漠然としたパーツ交換になりがち。


 このゲームは、架空のクリーチャという生命体を好き勝手に弄繰り回すのが面白いゲームではあるんですが、一方でそれぞれのクリーチャーの特徴などが姿形から類推しづらく、この先どんなクリーチャーに進化させようか、と言った目標が見えにくいため、期待感が膨らみづらい点があるように思います。
 例えば似たようなコンセプトの「46億年物語」なら、「次は恐竜に進化したい!」「哺乳類に進化したい!」「鳥に進化したい!」「人間に進化したい!」といった目標が明確に見えてくるんですが、クリーチャーではそうした質的な変化を望みにくいんです。クリーチャーはどこまで行ってもクリーチャーですからね。
 進化を続けることで、攻撃力や防御力の上昇など、数値的な恩恵を受けることはできるのですが、あくまでそれは量的な変化でしかなく、質的な変化には乏しいため、達成感が得られません。もっと最終形が顕著に見えるような仕掛けが欲しかったと言うか、「○○みたいなクリーチャーを作りたい!」と思えるような、世界の広さを感じさせて欲しかったなと思います。


最後に

 高度な技術を活かしたゲームデザインと、自由度の高いクリーチャークリエイトを備え、独自性の高い要素が幾つも鏤められてはいるのですが、残念ながらそれらの要素が上手く噛み合っていない印象を自分は強く受けました。不親切なカメラや達成感の不足があるために、ゲームへの興味が長続きせず、没入感に乏しい部分があるように思います。
 しかしながら、タッチペンを上手く活用したリズムゲームやバトルモード、自由なクリーチャークリエイトなど、個々の要素は優れているので、ゲームを起動してみると、「あ、このゲームは凄い」と感じる箇所が幾つもあるんです。ただ、その「凄さ」が「楽しさ」になかなか結びつかないのが、このゲームの一番のウィークポイントのようにも思えます。
 とは言え、数多くのパーツをチョイスして、クリーチャーを捏ね繰り回すように作成できる自由度の高さは、他のゲームには真似できない独自の魅力があります。自由な創造に魅力を覚える方にはぜひ触れてもらいたいゲームですね。


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