▼ゴーストトリック 体験試遊レポ

 ゴーストトリックを体験して来ました。1時間半ほどのプレイでしたが、その感想を述べたいと思います。
 そもそも、「ゴーストトリックとはなんぞや?」というところから触れますと、本作は、何者かに殺されて幽霊になってしまった主人公シセルを操り、「トリツク」「アヤツル」などの特殊能力を活用して、様々な人々に降りかかる死の運命を改変していくパズル風味豊かなアドベンチャーゲームです。
 主人公シセルは無機物に「トリツク」ことで、いわゆるポルターガイスト現象のように、それら品々を「アヤツル」ことができます。と言っても、冷蔵庫の扉を開けたり、傘を開いたり、自転車のベルを鳴らしたり、「アヤツル」力はささやかなものではありますが。
 ステージ上に配置されている様々なモノをアヤツルことで、新たな局面が開かれていきます。中には複数の品物を連続してアヤツルことで予想外の結果が得られることもあったりして。
 そしてこの力を使って凶悪な殺し屋に命を狙われる人々を窮地から救うことがゲームの目的となります。……当面のところは。
 と言うのは、シセルには生前の記憶がないんですね。自分が誰かわからない。自分がなぜ死んだかわからない。自分が誰に殺されたかもわからない。
 謎を解く鍵になるのは、シセルの今際の際に立ち会わせた赤髪の女性だけ。彼女を救い、そして様々な謎を明らかにするのが大きな目的となります。


 さて、簡単な紹介はこの辺に留めておきましょう。詳細は公式サイトをご覧頂ければより理解が深まることと思います。


 http://www.capcom.co.jp/ghosttrick/


 ゲームの内容についても触れたいところではあるんですが、困ったことにこのゲームはアドベンチャーなのでネタバレが致命的なんですね。キャラのネタバレもよくなければ、ギミックの解法を書くのもマズい……
 色々と書きたい! 伝えたい! と思うことはあるんですが、それもままならず。そんなワケで何分、抽象的、感情的な表現が多くなるかと思いますが、ご了承くださいませ。


 とりあえず、このゲーム、とにかく謎解きに没頭してしまいます。熱中度が抜群に高いです。今回の体験会は1時間半のプレイ時間を頂けたんですが、「残りあと10分でーす」とアナウンスが入るまで、延々謎解きとストーリーにのめり込んでしまいました。アナウンスを聞いて「もうそんな時間なの!?」とビックリしたくらいです。
 基本的に自分はあまり落ち着きのない性格なので、体験会の緊張感溢れる独特な空気の中ではソワソワしてしまうんですね。だって開発者の人がこっちの反応を探ろうとガン見してるんですよ! なので途中で疲れて集中が途切れてしまうことって少なくないんです。
 でも、今回のゴーストトリックはとにかく謎を解きたい、先の展開を見たい、という気持ちが途切れずに非常に集中した1時間半が過ごせたと思っています。その割には要領良く進められたワケではないんですけどね……


 それでも、逆転裁判でも御馴染み、巧節が冴え渡るテキスト。
 「これリアルレンダでしょ!?」と何度も突っ込まざるを得ない緻密なキャラモーション。
 解法を見つけた瞬間の電気が走るような興奮。


 次々に新たな楽しさが押し寄せてくる濃密なエンターテイメントの大波にどっぷりと浸かった1時間半でした。
 テキストはもはや説明の必要はないと思うんですが、モーションで自分が一番好きなのは、実は人間じゃなくて、えーと……家具? 家具なんですかね、あれは…… まぁ、家具なんです。
 ネタバレになってしまうので詳しくは書けないんですが、最初のゴミ捨て場をクリアしてからの次の場所です。とにかく家具……まぁ、家具です……の動き一つ一つに圧倒されましたね。
 なんでしょうね、ロボットアニメの発進シーンとかが好きな人には堪らないんじゃないでしょうか。そんな感じです。


 そして、このゲーム、骨太です! 難しいです。
 自分は体験版2種については、それなりに試行錯誤はありましたが、クリアはできました。
 が、製品版では頭から湯気が出てしまうほどに詰まってしまいました。


 基本的にロジックには自信のない方なんですが、今回もそれを痛感することに。トリツクための品物が見当たらず雪隠詰めにあってしまいました。
 やはり自力でクリアするのが一番望ましくはあるんですが、「詰まって終わりました!」じゃ持ち帰れるモノが少なすぎるということで、無念ではありましたがヘルプを頼むことに決めました。会場を歩きながらプレイを見守っている巧さんに向かって手を上げて助けを求めます。


 「すいません、詰まってしまったんですけども……」
 「あ、ここですかー。右に行きたいんですよね?」
 「……右? 右なんですか?」


 右に行くのか、左に行くのかさえも分からなかった自分。レベル低すぎです。


 「ここはですね、アヤツってからすぐにトリツクんですよ」
 「えー、そんなこと言ってもアヤツりながらトリツクなん…… できるしー!?」


 そんなワケであっさりと問題は解決したのでした。「こんな簡単なことだったのかー!」と驚きながらも、それに気づけなかった自分が悔しい!
 シセルからは「何度もアヤツってても仕方ない。タイミングを見て先に行こう」と促されるんですが、自分にとっては「タイミングってなんのこっちゃ」って話でしてね。待っていれば何かしら舞台に変化が訪れるのかもと思って、「たけしの挑戦状」よろしくじっと待機してはみましたが、全く状況は動きません。当たり前の話なんですけど。
 これ、悔しかったんですよねー。本当に簡単なことを見落としていただけなので、注意力のある人は鼻歌交じりでクリアできるんでしょうけど。
 万感の意をこめて「悔しいです!」と叫んだら、巧さんは笑っていました。「そこ、引っ掛かりやすいんだよねー」ってフォローしてくれましたけど。


 ひとつ言い訳をするとですね、アヤツルことができるモノって、ダイナミックに動くモノも多いんですけど、自分が乗り込まないタイプのモノって動いている最中もこっちはこっちで次の操作ができるんですよ。なので、アヤツルの動きに見とれているとうっかりハマってしまうという…… モーションの細やかさがここでは逆に罠になっているワケですね!
 まぁ、一度骨身に染みればあとはアヤツりながらもトリツクボタンが表示されているか、注意するようになりますけども。話が進むとアヤツルとトリツクを複合的に使わないと突破できない局面も生まれるので、詰まった時にはトリツクボタンを注視すると道が開けるかもしれませんね。


 さてまぁ、その後しばらくは過度の知恵熱にクラクラすることもなく、試行錯誤しながらもお話をすすめていたのですが、とある登場人物の死の運命を書き変えて、「やったー、できたー!」と一息ついたところでまたしても壁にぶつかってしまいました。
 どうも、次のステージに進むにはどうやら2つの条件を満たす必要があるようなのです。1つは目星がつきましたが、2つ目が皆目検討がつきません。
 何かあったっけなー、と部屋を探っていると司会の人の「残り時間5分でーす」の声が。うわーっ、せめてここはクリアしないとスッキリできないーっ!
 そして気づけば背後には巧さんの姿が。なんか「わからないなら教えてあげますよ」的な雰囲気を纏って立っていらっしゃるっ!


 「あー、ここはですねー……」


 いえ、大丈夫です! 頑張ります!
 やはり謎は自力で解きたいものですし。先程は自らの(主にオツムの)弱さに屈してしまいましたが、今回ばかりは独力で答えを見つけたい。
 どこだ!? 答えはどこにあるんだ!? 絶対に答えはこの部屋のどこかにあるハズなんだーっ!
 画面を睨みつけたまま、視線を左右に何度も走らせること十数秒……


 「あ、わかった!」


 探り当てた閃きを確かめるべく、あたふたとトリツクを繰り返して目的のモノにまで移動します。そして、祈りを篭めての「アヤツル」。すると……


 画面には騒々しくも賑やかな光景が広がり、新たなステージそこに現れたのです。シセルの気取った「道は開かれた」という台詞が妙に耳に残りました。


 この瞬間、自分は半ば放心しつつ、このゲームの面白さの核心に触れられた気がしたんですね。逆転裁判で何度も味わった、謎を解いた瞬間の感動。あれと同種の感情の昂ぶりを自分は覚えたんです。
 それはやっぱり自力で答えを見つけたからこそ、なんでしょうね。
 人によって引っかかる部分ってやっぱり異なるとは思います。迷わずにスラスラと解ける人もいれば、なんてことのないギミックで困り果ててしまう人もいるかもしれません。


 でも、一つ確かなことは、「全ての答えは今見える場所にある」ということです。


 例えば逆転裁判の探偵パートで詰まったとき、先に進むためのフラグがどこにあるのかはすぐにはわかりません。現在位置にあるのかもしれないし、違う場所にあるのかもしれない。フラグを立てる重要人物が目の前にいても、突きつける証拠に思いが及ばないこともあります。
 手段が多すぎて結局総当りに挑まざるを得ない。これって凄く悔しいですし、疲れますよね。
 ゴーストトリックは、答えが自分の手の中に納まる範囲に存在しています。タッチペンをぐーっとスライドして見渡せる舞台の中に必ず隠れているんです。


 選択肢がシンプルだから謎の在処に迷わない。でも、選ぶ順序が間違っていると真実には辿り着けない。
 簡潔ながら歯応えがある。贅肉を削ぎ落とした純粋なロジックの楽しさこそが、思わず没頭してしまったゴーストトリックの魅力の真髄なのではないかなと自分は思います。


 そして、謎を解くための原動力になるのが、テキストであったり、グラフィックであったり、音楽であったり、ゲームを彩る様々な演出の数々です。目の前にとても難しいパズルがあったとして、目的意識がないと諦めちゃうことってあると思うんです。「別に解けないからって困るもんじゃないしー」みたいな。
 でも、ゴーストトリックは「もっとお話を見たい!」という気持ちパズルに挑む原動力に繋がるんですね。そこが巧さんの言う「パズルとストーリーの融合」の一つの利点なのかなと思ったりもします。
 WEB体験版だけを遊ぶと、インクレディブルマシーンのような物質的なパズルに終始するのかな、とも思えますが、実際には予測のつかない人間心理が歯車としてゲームには組み込まれています。多分、もっとお話を進めないとわからないとは思いますが、巧さんの言うストーリーとパズルの融合が果たされるとすれば、恐らくはそこなんでしょうね。


 あと、このゲームってミステリなのかな、って最初は正直首を傾げていたんですが、触ってみると逆転裁判と同じような、真相に思い至ってからピースを当てはめていく興奮は十分に味わえました。
 まぁ、改変された結果を「真相」と呼んでいいのかどうかちょっとモヤモヤしますけど、逆転裁判で事件全体の概要が掴めないままに審理に突入すると右往左往してしまうように、ゴーストトリックも悲劇を回避する着地点を見つけられずに死の4分間に突入すると途端に舞台はポルターガイスト現象渦巻く呪いのスポットと化してしまいます。
 ゴールを見つけることが解決への一番の近道で、ゴールさえ見つけてしまえばあとはピースを嵌め込んで行くだけ…… という流れはかなり逆転裁判に近いものがあります。そこに辿り着く閃きが自分には足りないんですけどね!
 そうなると手探り手探りでトリツけるもの全部をアヤツってみる…… 逆転裁判で言うところの「フル待った」をかけることになるんですが、わからないならわからないなりに一手一手指していけばなんとかなるのも逆転裁判と同じですね。


 ゴーストトリックは面白いゲームではあるんですが、遊んでいて気になった点もあります。
 「死の4分間」って、良くも悪くも結果が出るまで時間が必要なんですよね。単純に自分が素早く行動すればいいというだけではなく、状況の変化を待たなきゃいけない箇所が度々あるんです。
 自分は短気なので、そこで待たされるのが結構モヤモヤします。体験版で言えば、ダウンロード版でカノンがへッドフォンを取りに行くまで若干の待ち時間がありましたが、あんな感じですね。
 このゲーム、トライアンドエラーで先に進むゲームなので試行回数が結構多いんですね。1回しかアヤツルことのできないギミック(例えばドーナツ)も多くて、これを1つでも失敗したらまた最初からやり直しってことも珍しくありません。
 その都度、カノンが歩き出すのを待たないといけない…… 試したいモノは山ほどあるのに進行を足止めされてしまうのはちょっと困り者でした。早送り機能みたいなものはないので、本当にジッと待つしかないんですね。
 謎解きに没頭できるゲームなだけに、没入感を削がれてしまうのはちょっと勿体無いなぁと思いました。気軽にリトライできるのって大切だと思うんですよね。
 あ、その場セーブロードを使えば若干リトライしやすくなるのかなぁ。試してないんですが、セーブ周りは逆転裁判と同じ感じだと思います。



 ……とまぁ、試遊の感想は以上です。後は体験会後の出来事をちょこちょこと。
 体験会の後には即席のサイン会が開催されました。時間が押しまくっていたのでカプコンの人怒ってないかなーと思いつつも、自分もサインを頂いたんですが、その際に開発のお二方から色々な話を伺いました。



 そもそもゴーストトリックは当初、ゴーストスパイというタイトルだったそうです。当時の主人公はその名の通り、スパイだったとか。
 ゲームの食卓でも似たような話がありましたけど、今は丸っきり設定が変わってるのでバレにはならないそうです。人の生活を覗き見る、という当初のコンセプトを考えると確かにスパイってのは仕事柄マッチしていたのかもしれませんね。


 竹下さんからは今回プロモーションに纏わる話、特に体験版の話をお聞きしたんですが、「ちょっとオフレコで」とお願いされたのでここでは伏せます。
 「え、まさかそんな経緯が!」とビックリしたんですが、個人的には凄くいい話だと思うので、どこかで明らかにされるといいなぁと思うんですけどね。
 そう言えば、当日は肌が焦げるほどの快晴だったんですが、「今日は天気がよくてよかったですね!」と竹下さんに振ったら、「あっちはオレが雨男だって言ってるけど違うから!」と巧さんに押し付けてました。自分も雨男の気があるので当日は正直不安だったんですが、天気がよくてホントよかったです。


 巧さんはTwitterでも触れていたんですが、この日風邪を引いていたようで、写真を頼まれた時以外はマスクをしてました。神谷さんの呟きだともうピンピンしてるようで安心しましたけど。
 神谷さん絡みでは「大神の続編を頼まれてましたよねー」と振られてからの巧さんの神谷さん評はなかなか興味深かったです。


 「まぁ、その辺はねー、結構信頼してくれてるみたいで。ヤツはなかなか信義に厚い、情に厚い男ですよ。オリジナルの世界を作れるっていうスキルを持った人間はそう多くないですから。そういう人に認められるってのは嬉しいですよ、ホントにね。」


 そんな話を聞きつつ自分の番に。ただ待っているだけなのもアレなのでちょっとお話をしてみることに。


 「自分が初めて触ったのって逆転裁判2なんですよ。」
 「あ、そうなんですか。」
 「最初、なるほどくんが記憶喪失から始まるじゃないですか。」
 「あ、そうですねぇ。」
 「だから自分がどういう存在かわからない。僕は一体なんなんだって言う彼に凄く感情移入したんですね。」
 「あー、もう、こっちの思って欲しい通りに進めてくれて。」
 「そうですねぇ(笑) で、1話をクリアして、『これだけ面白いソフトは1から遊ばないと損だ!』って店に速攻で買いに行ったんですよ。」
 「マジですか! ありがとうございます。」
 「今回シセルが記憶喪失なのも、そうしたプレイヤーを惹きつける狙いがあったんですか?」
 「そうですね、やっぱいつも考えていますけども、特に第一作ですからね、今回ね。」
 「謎としてはもう最強のヤツをぶつけてしまったんじゃないですか?」
 「あはは、確かにそうですね。」
 「自分がなぜ死んだかわからないし、誰が殺したかわからないし……」
 「ええ。……ただ、それだけではないんですけどね。
 「えっ……!?」


 最後の巧さんの一言は物凄い意味ありげな呟きだったので自分は気になっています。うーん、シセルの死には一体どんな謎が隠されているのか、これは確かめずにはいられませんね。


 「今回は巧さんの満足度が凄く高いように見受けられるんですけども。」
 「あはは、そうですねー。逆転1の頃と同じくらいの…… 同じというか、やっぱりオリジナル作品を作ったというのが大きくて。」
 「あ、それはそうですよね。」
 「それだけじゃなくて、勿論デキがよくなくちゃいけないんですけどね。1の頃はTwitterがなかったんであんまり言う場がなかったんですけど、僕にとっては凄い……(満足度があった) 今回は名前も出てますし(あの巧舟の新作!というキャッチ)ね、余計にプレッシャーを感じたりね。」


 モノ作りって次に求めるハードルがどんどん高くなるものだと思います。そういう意味では、巧さんは逆転裁判1と同じ満足度と言ってはいますけども、必要な労力は段違いに多くなっていると思うんですよね。
 そんな巧さんが逆転裁判1以来の満足度、というからにはやはり高い完成度を期待してしまいます。発売はもう目前ですが、体験会で触れた物語の先を早く見たくて仕方がないです。楽しみです。


 最後に会場で取った写真をちょこちょこと。


 サントラ2枚組はその場で視聴もできました。時間がなかったので自分は視聴できなかったんですけども。






 会場エントランスはカプコンの製品に関係した品物で一杯。ずっと眺めてても飽きないです。
 逆転裁判関係では賞状に紛れて丸山弁護士の写真つきキャッチがあって吹きました。あー、そう言えば4のイメージキャラクターでしたね。


 あと、最後に定形文を。




この記事はカプコンが開催したイベントに参加して書いて
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