世界樹の迷宮2・その0の3

 ブシドー♂ ナガヤの記憶


 「こぉの、ドサンピンがぁっ!」


 頭を打ち付けぬよう最低限の受身は取れたものの、落着の衝撃に肺腑が悲鳴を上げた。青畳の柔らかな抱擁とは異なって、踏み固められた乾いた砂土との邂逅は、巨漢の体当たりにも似て総身に鈍痛がほどばしる。一瞬の意識の混濁の後、拙者はようやくにして自分が殴られ、その勢いで地に伏したのだと悟った。


 「なんとか言えやぁ、コラァ! ボケェ! カスゥ!」


 ゴロツキどもは手を緩めることなく、怒気の篭った足蹴りを何度も繰り返す。拙者は頭を覆い、体を丸め、叶う限りの致命傷を避けようと努めるが、それが却って連中の被虐心に火をつけたのか、蛮行は収まるどころかより一層の激しさを増し、身体を伝う痛みの新旧など既に判別が覚束ない。
 一方的な暴力の行使に飽いたのか、それとも息が切れたのか、連中の追撃の手が途切れたところで拙者は毛虫のように地面を這いずり回り、路傍の大樽を頼りに身を引き起こす。振り返ると下卑た笑みを浮かべた男達が、恐怖を煽るようにぺたぁりぺたぁりと間を詰めてきて、拙者は思わず顔を背けたくなる衝動に駆られる。


 「ま、待つでゴザル!」


 制止の声にゴロツキどもの歩みが止まる。とは言え、それは当然ながら慈悲の精神の発露などではなく、ネズミ捕りに掛かった獲物がどのような抵抗を見せてくれるのかを見物しようとする好奇に根差した反応だ。彼らの目は依然として狩猟者のそれと同じ、凶暴な愉悦の光を宿している。


 「せ、拙者は決してサンピン侍などではない!」
 「何をほざきやがるぅ、この木っ端侍がぁっ!」
 「ま、待つでゴザル! そ、そもそもサンピンというのは……」


 拙者は唾を飲み込んで、眼前の連中を凝視する。


 「サ、サンピンというのは、僅かな扶持で奉公する小者をそう称してゴザル……!」
 「ああん!? だからなんだってんだよぉ!」
 「拙者、扶持などないでゴザル。従ってサンピンなど分に過ぎるでゴザル。」


 ゴロツキどもの堪忍袋の緒が切れた確かな音が聞こえた気がした。
 拙者は再び、殴られ、蹴られ、締め上げられ、髻を掴まれては顔を何度も地面に叩きつけられた。最早抗する声も上げられず、意識を繋ぎ止めることさえ苦痛を伴う段に至ってから、やっと連中は懐中に手を収め、そして何事かを相談し始める。


 「チッ、こんな青侍、痛めつけたところで金にもならねぇ。」
 「おい、お腰の物を取り上げちまえ。」
 「おうよ。金目の物といやぁ、精々がそれぐらいか。」


 脳を掻き揺らす酷い耳鳴りの中でも、怖気を震うその濁声だけは明瞭に聞こえた。
 男の手が腰に差した刀に伸びる。拙者は、不用意に腰を屈めた男の顎に最後の力を振り絞って後ろ蹴りを見舞い、反動を利して前転すると向き直って膝立ちになる。


 「こ、この刀だけは譲れんでゴザル! 名も誉れも失った拙者の最後の魂にゴザルゆえ!」
 「なぁにが魂だぁ! ゴチャゴチャうるせー!」


 ゴロツキどもは鼠に尻尾を齧られたのがよほど堪えたのだろう、顔を茹で蛸のように赤く染め上げて猛進してくる。拙者はなんとか反撃を試みようと土壁を支えに立ち上がるが、身体を蝕む数多の負傷に意識は薄れ、総身に力は篭らず、息は絶え絶え、視界は赤く染まって像さえ結ばない。
 万事休すと思われたしかしその瞬間、横から飛び込んできた黒い影がゴロツキどもを殴り飛ばし、蹴り飛ばし、弾き飛ばし、そして振り向き様に手を差し出す。


 「先生、逃げるよ!」


 拙者は構えた手を掴まれ、次の瞬間、転がるように引き摺られていた。




 ほうほうの体で逃げ出した拙者達は、橋のたもとに逃げ込んで、川原に身を投げ出した。重い疲労が指先にまで染み渡り、体はまるで地面に縛り付けられたようだ。もはや毫も動けそうにない。


 「先生、生きてる?」


 心臓は早鐘を打つように激しく収縮を繰り返していたし、熱病を患ったかのような熱い痛みが全身を駆け巡っている今、いっそ死んでしまった方がマシなのではないかと思えるほどの苦悶を拙者は抱えている。
 しかし、痛みを感じることは未だに生きている証でもあり、何より腰に感じる刀の重みはある種の喜びであり、慰めでもあった。拙者はまだ生きている。


 「かたじけない。全く無様なところを見せたものでゴザル。」


 しばし息を整えてから拙者は身を起こすと、窮地から我が身を救ってくれた少年を見やる。彼は鍛冶屋の徒弟で、名前をベオという。
 1年程前に高名な冒険者である父親を亡くした彼は、それから仕事の合間を縫って拙宅で開かれている私塾に参加し、子供達に混ざって文武の道を極めようと邁進している。一回り年の離れた子供達に囲まれながら修学に努めるのは、普通ならば気恥ずかしさを先に覚えるものだろうが、彼はそんな素振りを一切見せず、むしろ子供達の良き年長者として慕われている。父上の薫陶が行き届いているのだろう、優れた武士道になる資質を彼は内から窺わせている。
 そして拙者が、ベオ殿から『先生』などと面映い呼称を受けるのもそうした事由あってのことだ。その関係さえなければ、彼にとって拙者は路傍の食い詰め浪人に過ぎない。


 ベオ殿は太陽のような笑みを浮かべると、次いで懐から塗り薬を取り出し、封を切ろうとする。


 「いやいや! 拙者、薬代も払えぬ身ゆえ、そのような処置は過分にゴザル!」
 「いいからジッとしてて。」


 全く情けないことこの上ないのだが、拙者は年端も行かぬ少年にピシャリと言い聞かせられ、その上彼の厚情にまで縋ってしまった。
 ……ああ、拙者に詰腹を切るだけの甲斐があれば、今すぐにでも自刃したい気分にゴザル。




 「で、先生。なんであんな連中に追い掛け回されてたんだ?」
 「あー、その…… それはでゴザルな……」
 「バカね、あいつら貸元の手下でしょ。お金を借りたはいいけれど、利息が見る間に膨らんで、気づいてみればチェックメイト。そんなところでしょ。」


 なんと答えたものかと思案しているうちに割り込んできたその声は、ベオ殿に帯同していた少女のものだ。彼女が舌鋒鋭く評するのを聞いて、拙者はほとほと赤面するばかりだった。全く以って彼女の推測が正しかったからだ。


 彼女の名はミレッタ。野伏として樹海に立ち入り、森から日々の糧を得ている少女だ。彼女はベオ殿と違って学問への興味は薄いようで、読本を貸し与えようとしても趣味ではないと一言のうちに切り捨てるような性格の持ち主だ。
 とは言え、彼女は決して迂愚ではない。むしろ彼女は、感覚的に物事の道理を見抜く勘の良さを備えている。或いはそれは、木々のざわめきから危険を察知する必要のある樹海での生活から、彼女が体得した技術なのかもしれないが。


 ベオ殿にせよ、ミレッタ殿にせよ、彼らは身代を立てるための十分な資質と器量を併せ持っている。彼らは前途ある青年だ。しかし、そんな彼らに比べて我が身の情けなさと言ったらどうだ。
 親切心を装った古狸の腹を見抜けなかったのは、判断力を欠き損じるまで逼窮したせいだ。そして、その原因となったのは、目的も持たず、糧も得られず、日々をただ茫洋と過ごしている自らの愚かさゆえである。況してや子供に身の窮地を救ってもらったとあっては、全く年長者として立つ瀬がない。


 「で、でもさ! その大事にしてた刀? それだけは無事だったんだから! よかったじゃない、ナガヤ!」


 無自覚のうちに酷く湿った表情を露わにしていたのだろうか。それとも彼女も過言に過ぎたと思ったのか。彼女は拙者の腰元に未だ健在な漆塗りの鞘を指差してそう言った。


 「……そうでゴザルな。それだけは幸いでござった。」
 「先生、それって家宝か何か? 大事なものなんだろ?」


 目を輝かせて問うベオ殿の姿が微笑ましい。拙者は腰帯から鞘ごと刀を引き抜くと、目の前に水平に掲げ、柄を握り締めてするりと引き抜く。冬の冷たい陽の光を浴びた刀身は艶々とした竹光りを見せた。


 「中身は竹光でゴザル。」


 2人は口を開いたまま、呆けたように竹光を見つめていた。やがて俯いたミレッタ殿は肩を震わせ、そして顔を上げるなり怒号を発した。


 「どこが『最後の魂』なのよ、バカァッ!」
 「お、落ちつくでゴザルよ、ミレッタ殿! 『武士道は食わねど高楊枝』。気勢を張ることこそ武士道に残された最後の信条。これで帯刀してたのが竹光と彼奴らにまで知られていたら、拙者は恥ずかしさの余り自刃してしまうでゴザル。」
 「勝手に切腹でもなんでもすればいいじゃない! 助けてあげて損したわっ!」


 そもそもゴロツキ連中を殴り飛ばしたのはミレッタ殿ではなく、ベオ殿だったような気がするのだが、敢えて指摘は避け(タマには拙者も空気を読むでゴザル)、拙者はミレッタ殿を宥めようと懸命に手を尽くした。ゴロツキどもも怖気を震うような悪罵の数々を投げかける彼女を、拙者はベオ殿の手も借りてなんとか静めたのである。まるで狂馬の如き荒くれ振りだった。




 「先生に頼みがあるんだ。」
 「はて、なんでござろう?」


 なんとかミレッタ殿の癇癪を抑えたものの、当の彼女は旋毛を曲げ、こちらに目を合わせようともせず、河流をただ眺めている。そんな折のベオ殿の言葉であった。
 彼は長らく務めていた鍛治師の職を辞したこと、そして亡父の後を継いで冒険者を目指すことを拙者に告げた。


 「お父上の志を継ぐとはベオ殿は孝行息子でゴザル。お父上が存命であれば、さぞやお喜びになったことであろうな。」


 ベオ殿はなぜか苦笑を浮かべ、次に表情を正して口を開いた。


 「実は先生の力を借りたいんだ。先生にオレ達のギルドに参加して欲しい。」
 「ちょっと!」


 拙者が答えるより先に口を挟んで来たのは、やはりミレッタ殿だった。


 「あんなザコ連中に手も足も出ないようなヤツ、冒険の役になんか立たないわよ!」
 「それは違うよ。先生はさ、大義なく剣を振るう人じゃないんだよ。だから先生は敢えて真剣を帯びなかったんだ。先生の大海のような広い心が、ミレッタ、お前にはわからないのか?」
 「大海のような心って……! アンタ、それは勘違いにもほどがあるわ!」


 ……拙者的にはそんな意図など全然なかったのだが。どうもベオ殿は拙者を過大に評価する癖があるようだ。


 「先生は東方に伝わる一子相伝の秘剣を伝承した凄腕の剣客なんだ。オレにはわかる!」
 「アタシにはわからないわよ!」


 いつの間にやら拙者は竹林すら一薙ぎにする豪剣の使い手ということになってしまったらしい。稽古用の藁人形の腕さえ切り落とした試しのない拙者にそんな芸当は到底無理なのだが。


 「庵を結んで俗世と縁を切った先生のご決断もわかるんです! それが余りに多くの人々の命を断ってしまったがゆえの贖罪だってことも!」


 ないない。そんな過去は全くない。
 或いは子供達があることないことベオ殿に吹き込んだのだろうか。個人の思いつきにしては少々度が過ぎる。


 「先生、お願いします! どうかオレ達のギルドに入ってください!」


 なおも止まないベオ殿の懇願に、全てを告げるしかないのだと拙者は判断した。
 正直に言えば、昔の話など余り口外はしたくない。と言うのは、ベオ殿の言うような凄絶な過去があったせいではなく、むしろ自らの至らなさを自覚して自刃したくなるためなのだ。とは言え、事実を知ればさすがのベオ殿も拙者に落胆することだろう。
 結果的に彼のような純朴な少年を失望させるのは胸が痛むが、輝かしい虚像を背負って生きてゆけるほど拙者も芸達者ではない。真実を伝えることが肝要なのだ。彼にとっても。拙者にとっても。


 「拙者はベオ殿の思うような剣客などではござらんよ。拙者は、主君を捨て、乱を逃れ、このハイ・ラガードの地にまで落ち延びてきたのだ。拙者は武士道の風上にも置けぬ腐った不忠者に他ならぬ。」


 拙者は命欲しさにただ逃げ出したのだ。轡を並べた戦友も、忠を誓った主君も、守るべき民人も、何もかもを投げ出して。
 拙者がこのハイ・ラガードの地を訪れたのは、偏にこの地が冒険者に対して公国臣民としての国籍を与えていたためだ。どんな形とは言え、権力者の庇護の対象に置かれれば追っ手も手を出しづらくなる。保身のために最短の策を選んだまでであって、そこには崇高な武士道精神など一欠片も存在しない。


 「でも、それは昔の先生だろ。今の先生をオレは知っている。オレの見た先生を信じている。だからオレは先生に頼みたい。先生と冒険に出たいんだ。」
 「ベオ殿……」
 「オレ、ベッカー家のノワイトさんと約束したんだ。仲間を揃えてみせるって。じゃなきゃオレは冒険を始めることができない。樹海に立ち入ることすらできないんだ。」
 「飴を見せてから断り書きを出してくるのよ。連中らしいやり方だわ。」


 ベオ殿の話では、彼らはベッカー家から支援を受ける代わりに以下の約束を交わしたという。
 まず、冒険の監視と進捗管理を目的としたベッカー家の使者を2名同行させること。そして、ギルドを構成するための残り3名以上を揃えること。この2点が要旨だ。


 「オレと、ミレッタと、あと一人。頼りになる仲間が必要なんだ。」
 「ちょっと、アタシまで勝手に数に入れないでよ!」


 ベオ殿の事情は理解できたが、その期待は拙者の肩には荷が重すぎる。
 この国に来た当初は、冒険者の二つ名に希望を見出し、新たな道を志したこともある。しかし、樹海は余りにも広大で、余りにも残虐なのだ。拙者と共に陣を組んだ仲間の悉くは樹海の土に還り、かくいう拙者も一度は大きな怪我を負った。
 冒険者であるからこそ公国に身を置ける拙者は、しかし冒険者であることを拒もうとする勇なき落人なのだ。そんな拙者と共に樹海に挑めば、今度はベオ殿の身まで危険に晒すことになる。やはりこの申し出は受けるべきではない。


 「……ベオ殿、済まぬ。」


 視線を逸らすしかなかった。懇願に満ちた彼の顔を拙者は直視できなかった。
 しかしその瞬間、突如としてベオ殿は砂土に膝をつき、地面に両手をついて平伏したのだ。


 「ベ、ベオ殿!?」
 「先生! 今のオレは先生しか頼りにできる人がいないんです! オレ、父さんの無念を晴らしたいんです! 世界樹の迷宮を踏破して、父さんの探していた『諸王の聖杯』が本当にあるんだってことを証明したいんです! だから先生、お願いします! 先生の力を貸してください!」
 「ベオ殿! やめるでゴザル! 男子がみだりに土下座などするものではござらぬ!」


 拙者は慌ててベオ殿に駆け寄り、その両肩を支えて上体を起こさせる。
 全く今日は自らの至らなさを呪うばかりだ。武士道を奉じるいい大人が自らの怯懦に甘んじるばかり、前途有望な男子にかような屈辱を強いて、そしてへらへらと間抜け面を晒している。
 先程、拙者はこの少年から多大な恩義を受けたのだ。それにも関わらず滅私報恩の精神を疎かにするなど、まったく武士道が聞いて呆れる。
 いつまでこんな無体な姿を晒し続けるのだ。いつまで恥知らずでいるつもりなのだ。繋ぎ止めた命を無意味に風に任せて、それで風来人を気取ってどうする。
 それが拙者の望んだ生き方なのか。それが拙者が守り通した意地なのか。


 違う。それは違うのだ。
 ならば? ならばどうする?


 「……わかり、申した。」
 「先生……?」


 彼は、拙者の力を求めている。そして、拙者にはその意気に応える力がない。
 されど。この少年の父への忠孝を蔑ろにしてはならない。それは、彼の父への侮辱と同義だ。それは、拙者が奉じた武士道の否定だ。それは、拙者の生き方の否定だ。だから……


 「拙者の身命、お役立てくだされ……! 拙者は、かように無力にゴザル。しかし、ベオ殿が望むならば、この細腕、餓虎に食わせてでも役立ててみせる所存にゴザル!」
 「先生……! ナガヤ先生!」


 ベオ殿が破顔した。その表情は先程の鬼気迫る表情とは違って、年相応の幼さを帯びていたが、こちらの表情こそが彼本来の姿なのだろう。
 拙者は過去に固執する余り、彼に無慈悲な背伸びを強いた。それは、拙者の過ちだった。武士道ならざる者の行いだった。
 ゆえに、この失態は必ずや樹海で雪いでみせよう。我が手に力を取り戻して、そして彼らと共に世界樹の迷宮を踏破するのだ。
 拙者は、それを天に誓った。この身が死地に陥ろうとも貫き通すことを誓ったのだ。




 「……ったく、男連中って、どうしてあんなに暑苦しいのかしらね。」


 一人離れ、呆れ顔で呟く彼女。しかし、その口元は緩やかに綻んでいたのだ。






 TRPGにおける冒険者と言うのは、大抵がどこから流れてきたのかわからない風来者で、現代風に言い表せば住所不定無職という括りになります。これは前作でも同様で、ゲーム内の冒険者は冒険の舞台となる街エトリアに帰属する存在ではありませんでした。勿論、プレイヤーが望むならば地元出身というバックボーンを設定することも可能でしたが。


 さて、世界樹の迷宮2で新しく舞台は北方のハイ・ラガード公国に移るワケですが、どうも漏れ出た話を聞くようでは、2の冒険者はギルドを結成するに辺り、同時にハイ・ラガード公国の国民としても正式に認定されるようです。なんかちょっとオヤッと思わせる設定ですね。
 まぁ、これは単純に雰囲気作りの一環なのかもしれませんし、或いは冒険者にある種の権利を付加させるためか、いやいや逆に冒険者の行動を制限するためか、色々と理由は想像できるのですが、特定の国家に帰属する冒険者ってのは、ちょっと変わっていて落ち着かない気もしますね。


 中世ヨーロッパ的には国家への帰属意識というのは現代ほどには明確ではなく、それが意識されるようになるのは英仏戦争を経てからと言われています。ということは、前作に比べてあからさまに国家としての性格を色濃く見せる今回の舞台では、国家間の事情やお家的な事情があるいはストーリーに絡んでくるのかも、なんて先読みをちょっとしていたりもして。
 まぁ、この手のゲームにとって街はあくまで添え物であって、迷宮の攻略を支援する施設の集合体でしかないですし、世界樹の迷宮もその例に倣って物語性の希薄なRPGですから、あんまりそういう仕掛けを望むのも筋違いかなぁとは思っています。ポッドキャストによると街の設定自体はやっぱり薄いようですしね。
 ただ、小森さんの「システム面での関わりは変わりません」という断りは、逆に言えば「シナリオ面での関わりは変わるかも」という風にも捉えられてちょっと気にかかる部分ではあるんですよね。

 そういう意味で、前作でテキストを担当した小森さんが鉈を振るえる部分が増えて、どう動くのかなってのは個人的には注目している点です。公女グラドリエルとか要所に好きに動かせるキャラを持ってきてたりしますしね。