世界樹の迷宮2・その4(2F)

 カースメーカー♂ ノワイトの記憶


 俗に『古跡ノ樹海』と呼ばれる世界樹の第1層は、樹幹と石柱とが交互に立ち並ぶ神秘的な空間だ。それは樹海が遺跡に抱かれているようでもあり、同時に遺跡が樹海に抱かれているようでもある。
 では、この遺跡と世界樹は、いずれが主でいずれが従なのか。先に産声を上げたのは果たしてどちらなのか。それだけを取り上げてみても、実に興味深い思考実験が得られることがわかる。
 樹海の只中に石造りの建築物を埋め込むなど、常識的にはありえないだろう。ならばこの遺跡は、世界樹が未だ若葉を芽吹かせるよりも昔、数千年の時を跨いだ古の民人が残した生活痕なのだろうか。
 しかし、それではこの遺跡は、我々公国の祖が残した神話とも歴史ともつかない古めかしい記録より、なお時を遡った神代の御世の置き土産となる。仮にそのような遠けき古き時代に、これほどまでに精緻で堅牢な構造物を築き上げた文明の徒が実在していたのであれば、なぜその記録は一片として世に残されていないのだろうか。
 そうした不合理に対して明確な論拠を与えるのは甚だ難しい。牽強付会な推論を拵えるのであれば、どんな酔狂な仮定も同様に成り立ってしまう。世界樹の中で文明を形作った民族がいた、という御伽噺でさえ、現実味のあるなしで言えば大差はないのだ。


 明らかな人工物であるこの石造りの古址と、自然の猛威の体現である樹海とが、なぜ生家を同じくして、この不思議な共棲状態を作り上げたのか。結局のところ、その理由を知るものはいない。
 しかし、樹海に挑む者全てが目の当たりにするこの根源的な疑問こそ、多くの歴戦の冒険者が、その生涯を賭すに相応しいと認めた世界樹の最たる魅力なのだと私には思える。樹海とは、地上で最も多くの謎を有した空間だ。世界樹の頂上に『天空の城』があったとしても、何も不思議な話ではない。




 「ご存知ですか、兄上?」


 私に介添えするユーディットが、悪戯っぽい笑みを浮かべて私に声をかける。


 「私たち冒険者は、人と樹海とを繋ぐ『御神木の巡礼者』なのだそうですよ。」
 「按察大臣も同様のことを仰っていたな。」
 「ならば、この遺跡は、神殿? それとも寺院なのでしょうか?」
 「修験者の篭る大伽藍やも知れぬな。」


 数多の鉄靴に踏みつけにされて表面を著しく磨り減らした石階は、滑り止めのための溝の多くを失い、まるで森奥の湖面のように滑らかな平面を呈している。多くの冒険者が力を込めてこの石段を踏みしめ、時には転げるようにして駆け下りてきたのだろう。そして中には登ったまま二度と降りてこない者もいる。
 幅広く、角度も緩やかなスロープ状のこの階段は、螺旋状に連なり階上へと続いている。まるで我々の来訪を歓迎するかのように誂えられたこの石段の向こうには、一体どのような世界が広がっているのだろうか。
 しかし、自ら戒めを施した両足では、この僅かな階梯を登りきることさえ覚束ない。よって私は、ベオ君やナガヤ、時には妹の手を借りて、このささやかな難所を乗り越えて行かざるを得なかった。


 「その足枷を解けば済む話なのよ。……すっぱ!」


 ふくれっ面でそう言い放つのは、一足先に踊り場に飛び上がって退屈を持て余している野伏の少女だ。彼女は手にした小振りのナイフで果樹の枝を切り落としては、親指の先ほどの小さな実を口に含んで顔を顰めている。
 呪い師が自ら課する戒めの多くは、呪言をより鮮明に情感に訴えかけるための仕掛けである。呪い師の装束を見た瞬間に訪れる反射的な動揺を足掛かりとして、呪い師は対象の心理の解れに呪言を流し込む。道化師が衣装と化粧とを以って語るまでもなく自らを喜劇俳優に仕立て上げるように、呪い師は自らを奇異に装飾することで、自ら発する呪言に偽りの真実を吹き込むのだ。


 「人間相手ならともかく、樹海相手にそんな虚仮威しが通じるとでも思ってるの?」
 「……元気だな、ミレッタ。暇なら手を貸してくれないか?」
 「イーヤーでーすっ!」


 種を唾と共に地面に吐き捨てながら、野伏の少女は即答する。剣士の少年は苦笑しながら彼女の代わりに非礼を詫びた。




 石段を上り終え、新たな階に到達した私たちは、注意深く探索を開始した。広がる風景こそ、以前の階とさほど変化はなかったものの、生息する魔物はより生存に適した強靭さと凶暴性を身につけており、私たちの冒険はさらに危難の色を濃くしつつあった。


 特に、この階で私たちの心胆を大いに震え上がらせたのが、『敵対者』と呼ばれる迷宮の守護者たちだ。規則正しい律動で徘徊する雄大な鹿の王は、その頭部に王冠の如き壮美な一対の枝角を備え持ち、樹海の闇に潜む魔物とは一線を画する圧倒的な威厳を放っている。
 生物学的な見地から言えば、一般的に森林を拠とするシカ科の生体が、このような大仰な枝角を有するのは理に適していない。なぜならば、外敵に襲われた際、張り出した枝や茂みに角が引っかかって逃走を邪魔するからだ。
 なればこそ『狂乱の角鹿』と呼ばれるこの固体が頭頂に頂く桂冠とは、まさしく王の王たるを証明するための飾装なのだろう。彼は樹海にあって王であり、尾を縮ませて逃げだすことなど決してありえないのだ。
 だからこそ彼は、矮小な額冠に満足することなく、自らの思う侭に枝角を伸ばし、その威容を誇示してみせるのだろう。そして我々もまた、彼の警告を軽視してはならない。忠言に従い、彼との接触を努めて避けるべきなのだ。




 「そろそろ引き返すべきではござらぬか?」
 「うーん……」


 魔物の遺体から素材を剥ぎ終えたところで、武士道の男が提言する。判断を問われた剣士の少年は天井を仰いで小さく唸った。
 『敵対者』の脅威に気を配しつつ、群がる魔物を退ける作業は、肉体的にも精神的にも大きな損耗を私たちに強いた。
 『敵対者』の挙動を観察するのにまず時間を要し、そして彼らの動きを見抜いたとしても、その懐を潜り抜けるためには刹那の機会を待たなければならない。さらに折角の好機を得たとしても、魔物の襲撃が重なれば、また改めて機会を見出すために時間の消耗を余儀なくされる。
 樹海の魔物は、執拗に牙を剥いてこちらに襲い掛かってくる。『敵対者』と挟み撃ちにすれば労せず獲物を仕留められると踏んでいるのだろうか、彼らの積極性は地階のそれを遥かに凌駕する。
 私たちは自然と慎重な行動を強いられ、それが精神の更なる疲弊を招いた。気力の枯渇が肉体の反応を阻害し、私たちは出発時に有していたはずの瞬発力の悉くを既に失っていた。


 「いや、まだ猶予はある。適うことならば、今回の探索でこの小道の全容を究明したい。」


 しかし、私は探索の継続を訴えかける。私自身はと言えば、魔物を昏睡させる呪言を紡ぐだけの余力は十分に残している。最後の一手を懐帯していなければ、このような発言はできない。
 そして、間髪入れずに反駁を繰り出してきたのは、やはりと言うべきか、しばし私に反目する野伏の少女だった。


 「はん、アンタは棒切れみたいに突っ立ってるだけだもんね。そりゃ元気もあるでしょうよ。」
 「ミレッタ、口が過ぎるぞ。」


 いつも通りの少年の制止の声も、今はどこか張りを欠いて抑揚に乏しい。それは何も疲労のためだけではなく、彼自身もまた、撤退すべき時節を探っているためなのかもしれない。


 「なればこそ、身を粉に働く機会が欲しいのだ。察してはくれないものかな。」
 「肉体労働がお好きなら、いくらでも前列を譲ったげるわよ。妹さんと労苦を分かち合うなんて、吐き気がするほどステキじゃない。」
 「私にはナガヤの真似も、ベオ君の真似もできぬよ。私にできるのは呪言を紡ぐことだけだ。」


 結局、それから幾ばくかの問答を繰り返して、探索の継続が決定した。小道の突き当たりを探るだけ、という条件を少女は何度も念押しして、それでようやく彼女は首を横に振るのをやめた。最後まで縦には振らなかった。
 まぁ、いざとなれば、『アリアドネの糸』を使えばいい。それだけで私たちは、即座にこの樹海と言う名の檻から抜け出すことができる。何も危険なことはない。
 そう、危険な手を打つつもりなど毛頭ないのだ。これからの探索は、二度手間を控えるために、もう少しだけ樹海の奥に踏み入るだけの話に過ぎない。冒険の名を関することさえ躊躇うほどに、些細で軽易な行旅に過ぎないのだ。




 ちょっとした茂みを分け入った通路の突き当たりに、大きな洞を覗かせる古びた倒木があった。苔むし、接地面を茸に覆われたその巨木は、もはや固体の生命としての役割を終えてしまったようだ。
 しかし、天へ天へと躍動を続けたかつての巨木は、今では多くの新たな生命を生み出すための苗床として機能している。やがて、その用を果たしたその巨躯は、緩やかに命を継ぐものに分解され、土へと還っていくのだろう。
 おもむろに洞の中から栗鼠が顔を覗かせた。樹海に根付く生体ということもあってか、その体躯は子犬ほどにまで巨大化を果たしていたが、この種が持つ生来的な敏捷性や、愛らしさは少しも欠け損じてはいない。


 「ハイマダラシンリンリスでゴザルな。拙者も見るのは久しぶりでゴザル。」
 「なんだ、魔物じゃないのね。」


 反射的に矢筒に手を伸ばしていたミレッタ嬢は、安堵の吐息と共にその手を下ろすと、腰紐に結わえた皮袋から胡桃を砕いたものを取り出して、掌を差し出す。


 「おいで、おいで。」


 シンリンリスは、黒く大きな瞳をミレッタ嬢に向けてはいたが、警戒心が逸るようでなかなか彼女に近づこうとはしない。痺れを切らした彼女が胡桃の欠片を一つ宙に放り投げると、シンリンリスは素早く巨木を駆け下りて、地面に転がった胡桃の欠片をその短い手で掴み取る。
 両手で掲げ持った胡桃を一口で頬張ったシンリンリスは、あっという間に食事を終え、好奇心に満ちたつぶらな瞳を再びこちらに向けた。


 「だーから、こっちに来なさいっての。」


 右手に乗せた胡桃を彼女は示してみせるが、シンリンリスはまるで興味がないと言った風情でその場を動こうともしない。ミレッタ嬢の手の内で胡桃の欠片は所在無く右往左往していたが、次の瞬間、脇から伸びた手にそれはひょいと摘み上げられた。


 「あなたは余りにも雑念が勝ちすぎています。それでは彼を怖がらせるだけです。」
 「なんですってーっ!」


 手を伸ばしたのはユーディットだった。彼女は、ミレッタ嬢から取り上げた胡桃の欠片を手の内で転がすと、膝をついて拳を固めたまま手を差し出す。シンリンリスの注意を誘っているのだ。


 「あんな偏屈女になにができるってのよ。アレは人間全部を警戒してんだから。懐くワケがないわ。」
 「しっ、ミレッタ殿、お静かに。」


 そうしてしばらく拳を静止させた後、蕾が花弁を開くように、ゆっくりと彼女は五指を開いていく。手の内から姿を見せるのは、先ほどと同じ胡桃の欠片だが、なぜか立ち上る香気は先ほどよりも鮮明に感じられるような気がする。
 すると、先ほどまでは全く靡こうともしなかったシンリンリスが、その四肢を使って小走りにユーディットの元へ駆け寄り、鼻を細かくひくつかせた後、ユーディットの掌に乗せられた胡桃の欠片を啄ばむように食べ始めたのだ。ユーディットの表情が僅かに緩み、対照的にミレッタ嬢の顔が驚愕に染まる。


 「ちょ! そんなのって!」
 「ミレッタ殿、お静かに! シンリンリスが怖がるでゴザル!」


 ユーディットは、懐から乾燥した棗を取り出すと、それをシンリンリスに分け与える。しばらくの間、シンリンリスは食事に熱中していたので、ユーディットは空いた左手でその艶やかな体毛を撫で擦ることさえできた。


 「ちょっと、なんでアンタにばっか懐くのよ! おかしいじゃない!」
 「樹海の生気を外気で侵そうとすれば、森の住人は須らく怯えます。森の呼吸を得なければ、いつまでもあなたは外敵のままですよ。」


 本来的に野伏という職役は、樹海に自ら溶け込み、一体化を目指すところに本義があるのだから、それを呪術医に咎めたてられるなど、極めて異質な光景なのだ。それほどまでに彼女は感情を尖らせ過ぎている、野伏の適性を欠いているということなのだろう。


 「そうやって煙に巻こうとしてっ! きっと棗の匂いに釣られたんだ! そうでしょ!」
 「シンリンリスは基本的に雑食でゴザルがなぁ。……あ、しかし、一つ面白い習性があるでゴザルよ。」
 「なにそれ?」
 「シンリンリスは綿の実を集める習性があるでゴザル。巣に綿の実を集めて寝床を作るのでゴザルな。」
 「綿の実ねぇ。持ってないわ。……あ、でも、これならどう?」


 ミレッタ嬢が左手に掲げたのは、荷物袋の奥で登場を待っていたハズの銀糸の糸玉だった。すると、視界の中に糸玉を捉えたシンリンリスは、驚くべき素早さでミレッタ嬢の体を駆け上り、その小さな腕で軽々と糸玉を持ち上げてしまう。


 「拙い!」


 慌てて私は呪言を紡ごうとしたが、時既に遅かった。糸玉を両手で抱え上げたシンリンリスは、器用にも後肢だけで地面を軽快に走り出し、木々の鬱蒼と茂る樹海の奥へ、あっという間に姿を消してしまったのだ。
 私たちはしばし呆然とし、次いで自らの身を襲った厄災の大きさに気づく。私たちは街に帰るための最良の手段を一瞬にして失ってしまったのだ。
 そして、ようやくにして自らの犯した過ちに気づいたミレッタ嬢とナガヤは、お互いに視線を交錯させ、次の瞬間、私たちに向かって大きな弁明の声を発した。


 「せ、せせせせ拙者のせいじゃないでゴザルよっ!」
 「あ、ああああアタシ、ゴメンナサイっ!」


 事件の主犯格である両者の態度は全く以って正反対だった。そして、不幸にもその選択が、2人の立場を大きく違えてしまうことになる。


 「先生、そりゃないだろ…… そんだけ詳しけりゃ、あいつが糸玉を狙うってことぐらい、わかってたハズじゃないか。」
 「そ、そんなことは滅相も! ほ、ほら、拙者、本物のシンリンリスを見たのは今日が初めてでゴザルゆえ!」
 「さっき、久しぶりだ、って言ってた。」
 「ううう!」


 ミレッタ嬢とナガヤと、双方に同情すべきはずのベオ君が、ナガヤの追求に動いたことで体勢はほぼ決した。ナガヤは初手を誤った上に、要らぬ嘘をついたことで、ますます自らを追い詰める羽目になった。もはや泥沼だ。


 しかし、それにしても、このような事態を招くことになるとは、私もついぞ予想していなかった。想像の範疇外だった。
 樹海の全ての事象を推し量れるとは、まさか私も思ってはいない。私はただの呪言使いに過ぎない。
 だが、それにしても安全と危険の分水嶺を私は周知している確信があった。限定された未来を私は透視しているのだと思い続けてきたのだ。
 しかし、それは大きな間違いだった。ここは未だ人の手の及ばない未踏の大地なのだ。
 樹海を泳ぐ冒険者が巡礼者と呼ばれるならば、この世界樹は神の管轄する領域だ。ならば、神の管掌する事象の全てを人智で計ろうとするなど、全く以って傲慢以外のなにものでもない。


 「ノワイトさん、急ごう。うかうかしていられる暇はなくなったんだ。余力のあるうちに樹海を抜け出なきゃいけない。」


 荷物を取り纏め始めたのは、剣士の少年だった。彼は素早く用意を整えると、背嚢を担ぎなおしてこちらを見据える。


 「……ナガヤのことはいいのかね。」
 「責任なんて、後から幾らでも押し付けあえるでしょう。オレ達は生きて帰るんだから。」
 「ベオ君、君は……」
 「階段まで辿り着けば、そうすれば後は『敵対者』もいやしない。生き延びられますよ。」
 「君のその言は、根拠薄弱な希望的観測に過ぎないな。」
 「そうですよ。でも、だからこそ力を尽くすんです。何も難しい話じゃない。」


 私は彼に、冒険者にとって必要な危機に対する理性と判断と胆力を求めた。そして彼は未だに未熟だ。
 しかし、彼の言葉を聞いて、冒険を成功に導くための稀有な資質を、私は彼に見出したように思えたのだ。
 諦めの悪さ? 生への執着? いや、それらを当然のものと捉え、遂行することを躊躇わない意志の強さだ。それは同行者に生存への希望と意志を伝播させる。
 私が計れなかったのは何も樹海だけではない。冒険者一人とて私は計ること能わなかったのだ。


 だから。許されるならば、私は自省しなければならない。命を永らえられるのならば、私は思い改めなければならない。
 遥けき上天を衝く世界樹のほんの入り口で、今こうして私たちは苦難に喘いでいる。その現実を認め、自らの無力さを噛み締め、そして樹海を歩み続ける意志を抱き直さなければならない。
 私の求むべきものは世界樹の天頂にこそある。両の眼を天に向けて、そして歩むより他に道はないのだ。


 「ベオ君。」
 「はい?」
 「……生き抜こう。」


 私たちは生還するのだ。決して諦めることなしに。






 リスです。小さな悪魔です。
 初めてあのイベントに遭遇したとき、真面目に悶絶しました。HPを完璧に回復させて準備は万端……と思ったらこれが意外な方向から。世界樹2全体を通してみても、非常に印象深いイベントの一つです。
 複雑怪奇に入り組む迷宮から一瞬で安全に脱出することのできる『アリアドネの糸』は、樹海を旅する冒険者最後の切り札とも呼べるアイテムでしょう。その糸を無慈悲にも奪い去ってしまうこの生物は、全く樹海の性格を端的に現した可愛い鬼畜生と呼ぶより他にありません。第5層のヤツなんてもうね。
 しかしながら、これだけシンプルでインパクトのあるイベントってのは、本当に素晴らしいなと思うんですよね。……いや、悔し紛れで言ってるんじゃないですよ。
 被害に換算してみれば、たったの100en程度の損失に過ぎない(と言っても序盤では巨額の出費ではありますが)糸一つで、これだけ心を揺さぶられるってのは、物凄いコストパフォーマンスに優れていると思うんですよね。プレイヤーはアリアドネの糸に頼った冒険をすることが多くて、自然に冒険の計画に糸の存在を組み込んでいると。で、その計画を思いっきり引っくり返されるとアタフタしてしまうという、この感情操作は素晴らしいなと自分は思っています。
 まぁ、世界樹はその手のドッキリをとかく詰め込んだゲームではあるんですが、前作では主にモンスターの行動やらに依存してたそれらのサプライズが、今回はイベント面でも発揮された、というのが非常に優れた進化のあり方だなと思っています。


 まぁ、事あるごとに糸を貢いできた自分が言うのもなんですが、おかげで自分は常に糸を3つ携帯する癖がつきました。こんなこと前作じゃ絶対なかったのに。
 糸を忘れずに準備するためには「糸持った?」のメモ書きではなく、糸を盗んでいく相手を用意した方が有用なのかもしれませんね。いや、今回は磁軸の柱のおかげでメモ書きの効力が薄いってのもあるんですけど。


 ゲームを進めてると、糸持ってないことに気づいても、あ、やべーやべー、みたいなライトな感覚でテクテク歩いて帰ることも多いんですが、この時期だと1戦1戦のウェイトが非常にデカいので、糸忘れは凄く緊張しますよ。……というのを最近の2週目プレイで思い知りました。この感覚はリソース管理の厳しい序盤じゃないと存分に味わえないかもしれないですね。


 ちなみにハイマダラシンリンリスという名称(学名?)は、まぁ、適当です。ハイマダラ→ハイラダ→ハイ・ラガード的な何か。
 あとはなんでも取り合えずシンリンってつけとけばいいじゃん、みたいな感じです。