DS西村京太郎サスペンス 新探偵シリーズ 京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠

 な、なんて長いタイトルだ…… しかも略称が難しいなぁ。西村だけだとアレだし。
 てなことで買ってきました西村京太郎サスペンス。GEOで買おうと思ったら売り切れになっててビックリしましたよ。ついでに「いずみ事件ファイル」も売り切れてました。いずみ事件はあんま売れ行きはよくないとか聞いてたんだけどなー。
 そんなワケで一路ヨーカドーに向かって無事ゲット。今回はカメクラまで行かないで済みました。任天堂流通なのが地味に効いてたりするんでしょうかね。


 しかしこれねぇ、パッケージデザインが秀逸なんですよ。波頭の寄せる断崖絶壁っていういかにも「火サス!」って感じの。
 パカッと蓋を開けてみると、便箋に西村京太郎先生のサインが描かれたシンプルなデザインの説明書が飛び込んできてこれまた意表を衝かれますしね。いい意味でゲームっぽくない簡素さで纏まってて、このセンスは自分好みですよ。




 ゲームは連作長編の『殺意の罠』と、短編推理問題集『West Village』の2つから構成されているのですが、まずは連作長編の『殺意の罠』から感想を述べて行きます。


 ゲームを始めてみるといかにもサスペンスって感じのジャッジャーンみたいな音楽からオープニングが始まるんですけど、これがまた雰囲気たっぷりでイイ仕事してますね。凄いベタではあるんですが、こういうのを求めていたので文句なしです。
 キャラはアニメ調なので雰囲気は意外と逆転裁判なんかに近いところもあります。まぁ、あそこまでマンガチックではないにしても、西村京太郎ってニュアンスからくる枯れたイメージはあんまりないです。40歳以上をターゲットにしているらしいんですが、もっと若い人向きの雰囲気じゃないかなぁと自分は思いました。
 主人公は35歳と言う設定ですが、えらい言動が若々しいと言うか幼くて情けないので、ヘタレキャラ好きな自分としてはいい感じ。でも人によってはイライラ来る性格かもしれません。
 文章も平易で読み易く、変に表現に引っかかりを覚えるようなところもなくて、水準以上じゃないかなと思います。読点の多さもごく普通ですし(笑)


 操作性もイライラ感を感じさせない良好な作りですね。やっぱりADVはタッチペンと相性がいいのでサクサクと進められます。
 台詞が出る際にイチイチウィンドウが開くのと、選択肢が出るときに全部がパッと出るんじゃなくて、一つ一つ間を置いて出てくるので、つい全部の選択肢が出る前に画面をタッチしてしまうことがあったりするのが、ちょっとした不満点ではありますが、まぁ、これも慣れでどうにかなるレベルですね。
 あとは場面を移動する場合に、例えば裏庭から部屋に戻るときにいちいちフロントを経由しなければいけない作りだったのが面倒だったかな。別に途中で何かイベントがあるワケでもないので、そこは直接的に目的地に行けるようにして欲しかったですね。


 個人的に優れてるなと思ったのは調査画面の使い方で、部屋の中を調査する場合、幾つかの怪しい箇所がマンガのコマ割りみたいな感じでズームアップされて表示されるのでテンポよく操作を進められるんですね。このコマ割り調査はオリジナル性もあって、かつ機能的でうまいシステムデザインだと思います。他のADVからもう一歩踏み込んだ感じと言うか、よく研究しているなぁと。
 あとはやっぱりサスペンスな部分が看板に偽りなく秀逸ですね。犯人と被害者の知られざる秘密が明かされることで、普段の表情からは窺い知ることのできない負の感情が見えてきて背筋が寒くなるっていう。怪談にも似たこの感覚がサスペンスの醍醐味ですね。
 動機やらトリックやらは割と簡単で読みやすいですし、逆転裁判のような凝ったロジックがあるワケでもないのでビックリすることは少ないんですが、人を恨むにしてもそこまで恨んでたのか、みたいな突き抜け加減に意外な迫力がありました。
 その反面、犯人が論破された時にリアクション足らなくね? みたいなアレもあったりして。これは逆転裁判の大袈裟なアクションに慣れてしまったせいなのか……




 次に短編推理問題集の『West Village』ですが、こちらはよくあるトリック全集みたいな感じで、事件の場面だけを抜き出して「さて刑事が犯人を特定できた理由は!?」みたいな問題を解いていくモードです。これは長編の進行度合いによって問題が増えていって最終的には全部で50問実装されているとのこと。
 自分もとりあえず1問やってみたんですが、最初の問題からいきなり躓いて自分のアホさ加減に呆れました。よく文章を読みなおしたら解けましたけど。
 『West Village』はWEB体験版があるので、そっちを見てもらった方が雰囲気がわかるかもしれないですね。


 http://www.tecmo.co.jp/product/nishimura/index.html




 てな感じでまだ2時間もプレイしてないんですが、なかなかいい触り心地で先に進めるのが勿体無いです。
 ボリューム自体はADVの宿命としてそれほど期待はできないとは思います。実際1話が1時間ちょいで終わってしまいましたし、クリアした人の話を聞く限りでは総プレイ時間は10時間程度とのことです。
 とは言え値段も3800円とお手ごろですし、内容もなかなかサスペンスしているので、ADV好きのユーザなら買ってみて損をすることはないように思います。




 総評としては一言で言えば「テクモやるな!」と。全般的に良作の雰囲気はあるので、ボリュームを強化してくれればなおよしって感じですね。新探偵シリーズと銘打っているので次回作の期待も持てますし、次回はぜひそこいらに注力した作品を待ち望みたいところです。




 それにしても西村京太郎先生をデフォルメして「京太郎くん」なるマスコットにして登場させるテクモのセンスには吹っ飛びました。
 マスコットって言っても、まぁ、どうしたって爺さんなので素直に言えば不気味なんですが、なんか味があって憎めないと言うか、これを一言で表現しようとするとカワイイに行き着いてしまうのか、うーん、とにかくこのゲームのセンスはなんか全般的にシュールで趣深いです。